このページの本文へ移動

富士通総研

Japan

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.12 No.4 2008年10月 >
  5. 自治体病院の経営統合を促す総務省

自治体病院の経営統合を促す総務省

客員研究員 松山 幸弘

2008年10月

存亡の危機にある自治体病院

わが国の病院数は1997年末の9,397から2007年末の8,844へと減少を続けている。(図表1)このうち昨今の医療費抑制政策、医師不足で最も影響を受けているのが自治体病院である。2006年度における全国の自治体病院の経常損益は2千億円の赤字であり(図表2)、2007年度も同レベルの赤字になった模様である。これは、2008年現在の自治体病院の累積欠損金が2兆円を超えており、地域住民がその処理コストを将来負担させられることを意味している。

【図表はPDF参照】

公立病院改革ガイドラインの目的は経営統合促進

2008年4月より地方財政健全化法の適用が開始され、各自治体は普通会計の収支でなく自治体病院等の公営事業会計も連結した形で評価されることとなった。具体的には、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率という4指標を毎年計算させ、「健全段階」、「財政の早期健全化(自主的な改善努力を促す)段階」、「財政の再生(国等の関与による確実な再生を強制する)段階」の3段階で評価、指導する仕組みである。

これに加えて、総務省は昨年12月に公立病院改革ガイドラインを作成し、自治体病院設置者である各自治体に対して、2008年度中に改革プランを作成し提出するように指示を出した。ガイドラインでは、2次医療圏等の広域医療圏単位で自治体病院を統廃合するパターンが4つ示され、それを運営する経営形態の候補についても列挙されている。しかし、改革プラン提出は義務ではなく各自治体の自主性に任せていることもあり、当事者である自治体側の認識が甘く、「隣の市の病院に経営統合されるくらいならわが病院が消滅してもかまわない」と発言する首長がいる有様である。また、リーダーシップを発揮すべき県庁が単なる調整役に止まっている。そこで、総務省は「経営統合する自治体病院のみを財政支援する」というメッセージを発している。

自治体病院の経営形態として有力視される社会医療法人

経営統合後の自治体病院の経営形態を選択する時の判断基準は、「自治体を病院経営リスクから解放することにつながるか?」である。そのための具体的要件としては次の2つがある。要件(1)は「仮に赤字になった場合でも自治体に追加的な財政負担が来ない」、要件(2)は「資金調達を自治体に依存せずに病院が自力で行う」である。

ガイドラインは、経営形態の見直しの例として地方独立行政法人(非公務員型)、指定管理者制度などをあげている。このうち、地方独立行政法人の場合、病院が経営破綻した時の債務返済責任者は自治体のままである。また、地方独立行政法人は法律により独自の資金調達を許されていない。したがって、要件(1)、(2)のいずれもクリアーできない。

そこで、社会医療法人を指定管理者とする公設民営方式により所有と経営を分離することが注目されている。社会医療法人とは、民間医療法人の中で特に公益機能が高いと認定された医療事業体に与えられる称号であり、平成19年の医療法改正により創設された制度である。社会医療法人になれば、自治体病院と同じように医業収入が非課税扱いとなることから、平成20年度に入り全国で約40の民間医療法人が社会医療法人となることを申請している。この社会医療法人が自治体病院の指定管理者になれば、将来における資金調達を社会医療法人自身が行い赤字に陥った時の債務返済リスクを社会医療法人側が負うようになるため、自治体を病院経営リスクから解放できる。

また、医療法改正時には想定されていなかった模様だが、自治体病院自身が現在の職員グループをベースに社会医療法人に直接転換することも考えられる。この場合にも民間的経営手法を追求、実践できるようにするため、所有と経営の分離を行う必要がある。そのような仕組みの参考事例としては、米国の公立病院が採用しているガバナンスと医療経営専門家への委任の仕組みが検討に値する。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 自治体病院の経営統合を促す総務省
[187 KB]