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Web 3.0とインフォミディアリ

主任研究員 浜屋 敏

2008年10月

Web3.0をめぐる議論

2004年にオライリー氏がWeb 2.0という言葉を大きく取り上げてから、SNSやソーシャルブックマーク、wiki、AJAX、SOAPなど、さまざまなサービスや技術の普及が加速し、大きな注目を浴びるようになってきた。一方で、一昨年あたりから、Web 2.0の次のトレンドについて、“Beyond Web 2.0”や“Web 3.0”というキーワードが語られ始めた。昨年まではこれらのキーワードにはまだ冗談のようなところがあったが、Web 3.0のサービスやアプリケーションについて今年になってかなり真剣な議論も行われるようになった。

そのような議論のさきがけとなったのは、複数のブロガーがウェブ技術の新しい動向を伝えるネットメディアである「ReadWriteWeb」が2007年4月に行ったWeb 3.0の定義に関するコンテストと言えるかもしれない。そのコンテストで優勝したのは、ニュージーランド在住のフリーランス技術者オブライアン氏の以下のような定義であった。

  • Web 1.0:集中化した「彼ら」Centralised Them
  • Web 2.0:分散化した「私たち」Distributed Us
  • Web 3.0:非集中的な「私」Decentralised Me

この定義の解釈は一様ではないが、これを参考にすれば、Web 3.0は、Web 2.0的な技術やサービスによってフラット化されてつながりあったさまざまな「私たち」の情報を、Web 1.0のように特定少数の情報発信者(「彼ら」)によって集権的にコントロールして体系化するのではなく、私自身のために私自身によって体系化できるような技術やサービスである、と言うことができるかもしれない。

パーソナライゼーションとレコメンデーション

Web 1.0の時代には、一部のポータル企業や伝統的なメディア企業が発信する情報が、結局はインターネットの中で大きな位置を占めるようになった。これに対してWeb 2.0では、CGM(Consumer Generated Media)に代表されるように、それまでは情報の受け手でしかなかったユーザーたちが、自由につながりあい、情報を発信できるようになった。そのことによって、多数の普通の人の意見を集めれば一部の専門家よりも正しい判断ができるという「集合知」の実践が可能になり、ネット上におけるユーザーのクチコミは私たちの購買行動にも大きな影響を与えるようになった。

新聞社などの伝統的なメディアが発信する情報と普通の消費者が発信する情報が、インターネットという同じ空間の中にフラットに存在することは、まさに「革命」というほど大きな変化と言えるかもしれない。しかし、情報がフラットになったということは、個人が容易には整理できない大量の情報がインターネット上にあふれていることを意味している。個人にとって本当に必要な情報が、大量の情報の中に埋もれてしまう危険性も増えている。

そこで、Web 3.0をめぐる議論では、「私」を前面に出すことで、大量の情報を「私」専用に整理し、体系化することの必要性が主張されている。先進的なブロガーであれば、さまざまな技術を使って、自分専用の情報を自分自身で体系化することもできるだろう。しかし、大多数のユーザーにとっては、大量のフラットな情報を限られた時間の中で自分専用に体系化することは、容易ではない。誰かが自分に代わって必要な情報を体系化し、推薦(レコメンド)してくれるようなサービスも必要になるだろう。そこで、「Web 3.0はパーソナライゼーションとレコメンデーションのことである」という主張も行われているのだ。

インフォミディアリはこれからの時代の陰の主役

パーソナライゼーションやレコメンデーションは、B2Cの電子商取引の分野では、既に実用段階に入っている。Amazon.comの「おすすめ機能」が以前から有名だが、以前のレコメンド機能は、コストがかかり、効果も見えにくく、精度も低かった。しかし、最近ではエンジン部分がASP(Application Service Provider)形式で提供されるようになってコストも下がり、アルゴリズムの精緻化とデータの蓄積によって精度も上がり、導入事例が増えて効果も目に見えやすくなってきた。Amazon.com以外にも、さまざまなネット通販のサイトで推薦機能が導入されており、推薦エンジンの導入によってコンバージョン率(購入率)が3倍近く高まった例もあるという。

問題は、誰が自分に代わって必要な情報をパーソナライズしてレコメンドしてくれるか、ということだ。私たちは、現在「インフォミディアリ(情報仲介サービス)」を重要なテーマとして研究しており、インフォミディアリこそがパーソナライゼーションやレコメンデーションの中心になると考えている。なぜならば、正確なパーソナライゼーションやレコメンデーションを実現するためには、対象となる個人の特徴に関するデータや、その人にレコメンドする対象に関する情報を大量に蓄積し、分析する必要があるからだ。そして、情報の発信者と受信者を仲介するインフォミディアリこそが、そのような情報を蓄積できるのだ。Web 2.0以降の時代の真の主役はあくまで「私」だが、それを支える陰の主役がインフォミディアリであると言える。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF Web 3.0とインフォミディアリ [215 KB]