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ファンドを活用した老朽分譲マンション再生の可能性

主任研究員 米山 秀隆

2008年7月

J-REITによる賃貸マンション取得が増加

J-REITによる賃貸マンションの取得は、最近はサブプライムローン問題の悪影響を受けてはいるものの、近年、都心部を中心に活発化してきた。新築物件、既存物件を取得するほか、J-REITが取得することを前提に、ディベロッパーが賃貸マンションの開発を行う開発型証券化と呼ばれる形態も多くなっている。今年1月末現在で、J-REITが東京都内で保有する賃貸マンションは600棟に達するが、賃貸住宅ストックに占めるJ-REIT物件の割合(戸数ベース)は、筆者の推計によれば、既に都心3区(中央区、千代田区、港区)では15~30%の比率に達している。

こうしたことに伴い、都心に住む場合には、分譲マンションを取得せず、賃貸マンションに住むという選択肢が広がりつつある。賃貸管理会社の中には、敢えて購入しないというライフスタイルを売り込むことで、賃貸マンションニーズを掘り起こそうという動きもある。

J-REIT保有物件の築年数をみると、新しい物件が圧倒的に多い。しかし中には、古い物件を取得するケースもあり(最も古い物件は1968年竣工のもの)、入居者が確保されており、収益性が期待できる状態の良い物件であれば、必ずしも新しさにこだわらずに取得していることがわかる。

都区部における賃貸マンション投資について、過去10年のリスク、リターンの構造をみると、中古の小型物件(ワンルームなど)はローリスク・ハイリターンの特性がはっきりと出ており、中型物件については新築、中古ともローリスク・ローリターンとなっている。また、大型物件(ファミリータイプなど)については、リスク・リターンのばらつきが大きくなっている。物件によってリスク・リターンの特性が異なっており、J-REITは、こうした特性を踏まえながら、その投資戦略に応じて組み入れ物件を決めていると考えられる。

老朽分譲マンションの賃貸マンションへの転換

このように、賃貸マンションの供給で、証券化を活用する手法は一定の存在感を発揮し始めているが、将来的には、今後深刻化していくと考えられている分譲マンションの老朽化問題を解決する一助になる可能性も秘めている。国土交通省は、今のところは、区分所有者の合意による建て替えが円滑に行われるような施策を中心に講じているが、すべての物件が建て替えできるわけではない。何より区分所有者の合意を得ることが難しいし、居住者が高齢化していく中では建て替え資金を調達することも困難になっていく。

他方、老朽化した分譲マンションの中には、建て替えなくても、リノベーションによって十分再生しえるという物件も増えていくと思われる。しかし、居住者が高齢化していく中では、やはり資金面でリノベーションが困難であり、本来はより長く使える物件でも、基本的なメンテナンスも十分に行われず、空室も増加していくことによって、スラム化する可能性が高まっていくという問題もある。このように、リノベーションによって再生し得る物件であるにもかかわらず、それができない状態になっている場合に考えられる一つの方法は、ファンドがすべての区分所有者から物件を買い取り、分譲マンション全体をリノベーションした上、賃貸住宅として再生するという道である。

ファンドにとっては、中古分譲マンションを買い取り、リノベーションによって魅力的な物件に再生できれば、それを賃貸することで収益を上げることが可能になる。前述のように、賃貸マンション投資では、新築物件を取得する場合に比較して、中古物件を取得する方が高利回りになる場合がある。中古物件を取得した上、更にリノベーションを行うことになれば費用がかさみ、利回りを低下させる要因にはなるが、物件の条件(立地や状態の良さ)によっては、相応の利回りを確保できる場合もあると考えられる。すべての物件は無理ではあるが、一定の条件を満たした物件については、こうしたやり方で賃貸マンションに再生できる可能性がある。

また、区分所有権を売却した居住者のメリットとしては、それを基に、高齢者向け住宅などに移ることも容易になるし、また、売却益から家賃を賄うことで、その物件に居住し続けることもできる。このような形の中古分譲マンションの再生は、ファンド、区分所有者にメリットをもたらすばかりではなく、いったん建築された物件を長く使うことで、建築廃棄物の排出を抑制することを通じ、環境問題にも貢献し得るし、スラム化による都市環境の悪化を防ぐことにもつながる。

更にこのような形で良質な賃貸マンションが供給されるようになれば、若年層は、そうした賃貸マンションをライフステージに応じて自由に住み替え、最終的には高齢者向け住宅に居住するなどの住まい方もより容易となろう。こうした住まい方は、既存のストックを循環させ、有効に活用することを通じ、これまでの住宅保有にこだわる「住宅保有モデル」から、ストックを有効に活用して自由に住み替える「住宅利用モデル」に変えていくことにもつながる可能性を持っている。

このように、ファンドを活用して再生するという手法は、今後急増する老朽分譲マンション問題に対処する、建て替え以外のもう一つの選択肢になる可能性があり、今後はこうした手法のフィージビリティについて、政策当局は研究を進めていくべきである。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF ファンドを活用した老朽分譲マンション再生の可能性 [189 KB]