富士通総研

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サービス機能のオフショアリングを成功させるために
~総務・人事・経理・研究開発機能等を対象に~
-特別企画コンファレンス-

概要

富士通総研は、2008年1月28日月曜日、経団連会館において、特別企画コンファレンス『サービス機能のオフショアリングを成功させるために ~総務・人事・経理・研究開発機能等を対象に~』を開催し、多くの方々にご参加いただいた。ご来場いただいた皆さまにはあらためて感謝する次第である。

要旨

コンファレンスの第一部は当社研究員による研究報告で、最初に浜屋主任研究員が、「サービス機能の国際展開の必要性と課題」と題してプレゼンテーションを行った。この報告では、まずサービス機能のオフショアリングを定義し、将来の国内の労働力不足に対応するためや、サービス機能の担い手であるホワイトカラー業務を改革するためにも、オフショアリングが必要であることを述べた。また、企業の成長のためには多くの企業は海外市場での売上を増やすことも必要で、オフショアリングが企業のグローバル化の有力な手段であることも指摘した。しかし、現実には、日本企業では、情報システムの分野で徐々にオフショアリングは進んでいるが、総務や経理・人事といったバックオフィス機能の海外へのアウトソーシングを実施している企業はまだ少ない。ただし、中国の大連など日本語人材の豊富な地域が日本企業のバックオフィス業務の基地として台頭しつつあり、コミュニケーション・コストなどの阻害要因も低下しつつある。オフショアリングは雇用を奪うという批判もあるが、米国の先行研究によれば、一時的に特定の職種の雇用が減ったとしても、長期的には他のより高度なスキルを必要とする業務の雇用が増加している。つまり、オフショアリングの影響は、雇用削減というよりも、付加価値の低い労働から高い労働への国内労働力の質の転換である、ということを指摘した。

つぎに、「オフショア展開を成功に導く戦略ポイント」と題した金上席主任研究員の報告では、オフショアリングを重要な企業戦略の一つと捉え、(1)キャパシティのビジネス化、(2)業務の深化、(3)対象業務の多様化、という3つの軸を提示した。この軸に沿って5社の具体的な事例を分析し、5つの共通点を指摘した。すなわち、成功している事例では、(1)オフショアリングが、現場主導で進められているのではなく、経営戦略に組み込まれていること、(2)ジョイントベンチャーなど多様な資本戦略をとっていること、(3)オフショア拠点の高付加価値化・収益化を指向していること、(4)米国→インド、日本→中国という単純な図式ではなく、特性に合わせてオフショア先を組み合わせていること、(5)成功事例には欧米企業が多いが、日本企業でも成功している例はあること、という5点である。そして、事例の分析から、(1)資本戦略の多様化、(2)経験・ノウハウの蓄積によるビジネス化、(3)オフショアリング対象となるIT業務・バックオフィス・研究開発業務の融合化、(4)「サービス機能」を現地の市場を対象にした「サービス事業」にするためのマネジメント体制、という4点を、日本企業への示唆として提言した。

研究報告の最後は、シュルツ主任研究員の報告「国際展開に必要なガバナンス体制」であった。シュルツ研究員は、直前の2人の研究員の報告を受け、グローバル・ガバナンスの視点から、サービス機能のオフショアリングとともに増加する経営の複雑性をいかにコントロールするかという課題について論じた。この報告は、「トランスナショナル化」というコンセプトに基づいて行われた。トランスナショナル化とは、1980年代に国際経営論の中で提唱されたもので、グローバル、インターナショナル、マルチナショナルの3つの要素を統合した概念である。トランスナショナル化はあくまで理念的な考え方で、現実的に完全に実現している企業は存在しない。しかし、最近は、ITを最大限に利用し、アウトソーシングなど社外の資源を活用しながら、トランスナショナル化を指向している企業が少なくない。シュルツ研究員は、3社の事例研究を通じてトランスナショナル化への道筋を整理し、その過程におけるサービス機能のオフショアリングの重要性を述べた。サービス機能のオフショアリングは、当初はコスト削減のための手段としてしか考えられない場合が多いが、オフショアリングを深化させるためには、世界規模でのガバナンスの問題として考えなければならないのである。

第二部のパネルディスカッションでは、まず、株式会社シェアード・ウィンの田中幸三社長、株式会社日産テクノの明石彰社長、T-Systemsジャパン株式会社のニコラ・ゾェルゲル社長という3人の経営者の方に、サービス機能のオフショアリング及び国際展開に関する実態を報告していただいた。まず、田中社長は、バックオフィス業務の大連へのオフショアリングについて紹介され、20~50%のコスト削減効果が出ているものの、オフショアリングの最終目的はコスト削減ではなく、本社スタッフの改革であることを強調された。明石社長からは、CAD/CAMに関連するエンジニアリング業務のベトナムへのオフショアリングの実態についてご紹介いただき、2001年に50人から始めた業務が2010年には1,400人にまで拡大する見込みであると説明された。ゾェルゲル社長は、まず、T-Systemsがドイツテレコムの法人顧客向け事業であり、急速に世界規模でITサービスに関する事業展開が行われていることを説明された。その急速な世界展開を支えるのが、データセンターなどITサービスの生産拠点のグローバルな統合と、営業拠点であるデリバリーポイントのマルチナショナルな展開である。その意味では、T-Systemsもトランスナショナルな経営を目指していると言える。

パネリストによるディスカッションでは、研究員の研究報告及びパネリストの事例紹介では詳しく紹介できなかった点、つまり、オフショアリングの本当の狙いや実務上の課題について議論した。

まず、課題については、現地拠点のマネジメントの難しさや本国に残された社員の処遇などが話題になった。現地のマネジメントについては、基本的には日本のマネジメントをそのまま押し付けても失敗することが多く、アウトソーシングや合弁などの資本形態も検討しながら、日常のオペレーションや人事などは現地のマネージャに任せるべきだという意見が多かった。しかし、自動車産業では日本のマネジメントが世界的にある程度通用しており、産業や技術特性による違いも考慮する必要があることも指摘された。

担当業務を海外に出された社員の処遇については、経営トップの理念が明確であれば、オフショアリングによって士気が下がることはなく、むしろ自分たちが本当に行うべき業務を自ら考えるようになり、自己変革や成長につながるという意見が大勢を占めた。ヨーロッパなど多様性に富む地域の企業とは違い、日本企業の本社スタッフは、比較的均一な企業文化・風土の中で仕事をしている場合が多い。しかし、業務を海外に出すことで、海外のスタッフとのコミュニケーションが増え、職場に多様性がもたらされる。日本人の社員が海外のスタッフに教育を行うことで、逆に日本の社員が夢を持つようになり、自己変革や成長につながることも少なくないという。そして、それこそがオフショアリングのもっとも重要な効果であり、国際展開を行うために必要な条件である、とパネリストの方々は異口同音に語られた。

オフショアリングといえば、どうしてもコスト削減効果が注目される。このコンファレンスでも当初はコストや合理化が話題の中心になるとも考えられたが、最終的には、サービス機能のオフショアリングの真の目的は企業の成長と社員の自己改革であり、それがなければ事業の世界展開も難しいということで、経営者及び研究員の意見が一致した。そして、そのためには、オフショアリングを担当者任せにせず、経営戦略の一環として、経営者が自ら進めていく必要があるという点も、本コンファレンスの重要なメッセージとなった。

13時00分~13時10分 開会挨拶
富士通総研 代表取締役会長 高島 章
第一部 研究報告
13時10分~13時40分 サービス機能の国際展開の必要性と課題
主任研究員 浜屋 敏
13時40分~14時10分 オフショア展開を成功に導く戦略ポイント
上席主任研究員 金 堅敏
14時10分~14時40分 国際展開に必要なガバナンス体制
主任研究員 Martin Schulz
14時40分~15時00分 休  憩
第二部 パネルディスカッション
15時00分~16時55分 企業サービス機能の国際展開の実際
【パネリスト】 株式会社シェアード・ウィン 代表取締役社長 田中 幸三 氏
株式会社日産テクノ 代表取締役社長 明石 彰 氏
T-Systemsジャパン株式会社 代表取締役社長 Nicolas Soergel氏
上席主任研究員 金 堅敏
主任研究員 Martin Schulz
【コーディネーター】 主任研究員 浜屋 敏
16時55分~17時00分 閉会挨拶
富士通総研 専務取締役 根津 利三郎

(役職などは当時のもの)

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF サービス機能のオフショアリングを成功させるために
~総務・人事・経理・研究開発機能等を対象に~
-特別企画コンファレンス-
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