加速する“Web as a Platform”の世界
上級研究員 湯川 抗
2008年7月
昨年10月に開催された“Web 2.0 Summit”に登壇したMSのスティーブ・バルマーCEOは、今後4-5年は年間20社程度のペースで買収を行う意図を明らかにした。2006年にGoogle、Amazon、Yahoo!、MSの4社が買収した企業数の合計が26社であったことを考えると、バルマーの計画は壮大だ。
MS-Yahoo!は特別に話題になっているものの、インターネット企業の買収は毎日のようにメディアを賑わしている。こうした企業買収が、どのような意図の下に行われたのかは当事者しかわからない。しかし、マクロの視点で見ると、こうした買収の裏にはTim O’Reillyが「Web2.0の原則」の最初に挙げた“Web as a platform”の世界が加速の一途を辿っているという現実があるように思う。
進展するプラットフォームとしてのウェブ
“Web as a Platform”の進展を示す最もわかりやすい例は、FacebookとOpenSocialによるSNSプラットフォームの覇権争いだろう。この場合、どちらのWeb Applicationがより多くの開発者に支持されるかの争いになるが、結局のところ、アプリケーションの開発者が従わなければならないのは、それぞれのWeb Applicationが定める開発方式であり、今やWeb Application自体がPCのOSのように機能しはじめている。つまりプラットフォームとしての存在感を増している。
“Web as a Platform”という概念を更に大きく捉えると、インターネット自体がサービスの提供チャネルとして成熟し、それを様々なユーザーが活用し始めていることだといえるだろう。SaaSの発展は、その一番顕著な例だが、他にも、様々なものがインターネットを介して、「as a Service」として提供可能になりつつある。例えば、Iaas (Infrastructure as a Service)、HaaS(Hardware as a Service)、Daas(Database as a Service)などという言葉も生まれているし、他にもOSaaS(OS as a Service)、DMaaS(Data Mining as a Service)、VaaS(Visualization as a Service)など「as a Service」の世界は広がりをみせている。確かに、これらの多くはバズワードといえるだろう。しかし、こうした言葉が生まれていること自体、以前から言われていた「Utility computing」の世界、つまりインターネットを通じて、様々な資源が流通し始めていることを示している。
こうした権力(特に拒否権)をもつ者同士の対立は意思決定の遅れにつながりやすいとされ、財政政策の先送り(財政支出・財政赤字の拡大)が生じやすいことは、Alesina and Drazen(1991)によっても指摘されている。また、比例代表制の議会では連立政権になりがちで、小選挙区制の議会では単独政権が生まれやすいが、前者の方が与党同士の抗争がある分、財政赤字が拡大しやすいとの研究もある。他にも、アメリカでは、州議会の多数派と州知事の党派が異なると、財政赤字が発生しやすいとの実証研究もある。また、日本での事例として、1990年代の不良債権問題は、債権者間の利害対立に政治勢力の対立が相まって、処理が遅れたとの指摘もある。
既存の大企業によるインターネット企業の買収の増加
最近、GoogleやAmazonのような、大手のインターネット企業によるものだけでなく、既存の大手ICT企業が新興のインターネットベンチャーを買収したり、出資を行うケースが目に付く。
例えば、HPによる、Tabbolo(写真共有サイト)の買収、Nokiaによる、TrollTech(クロスプラットフォームのアプリケーション開発のためのフレームワークであるQtの開発元)や、Twango(メディア共有サイト)の買収、IBMによる、XIV(データストレージ技術)の買収、SUNによるMySQLの買収は、いずれもこの1年以内に行われたものであるが、こうした大企業による買収劇の裏側には、“Web as a platform”の世界に対応するために、既にその世界での技術や知名度、顧客ベースをもった企業を買収することで時間を買おうとする大企業の思惑がみえる。
エンタープライズビジネスに波及するコンシューマービジネスで生まれた技術革新
“Web as a Platform”の世界は、これまで主にB2Cの事業を行う企業の間で開拓されてきたが、コンシューマー向けの事業でサービス技術やノウハウを蓄積した企業が買収により、エンタープライズ向けのサービスへ事業展開を開始するケースも増加しつつある。
Yahoo!のZimbra(企業向けWebアプリケーション)買収もエンタープライズ向けサービスへの布石と考えられるし、Googleの買収戦略にも同様の意図が見える。Gmailのように、コンシューマービジネスでの技術革新を生かして、通常のB2B向けのサービスを展開する企業よりも高度で低価格の製品やサービスを提供するものもある。
また、Haasの代表例として挙げられる、AmazonのEC2やS3はAmazonがコンシューマー向けのサービスによって培った技術を企業向けに販売するものであり、既に多くの企業に活用されていることが、今年の1月に起こったS3の障害発生時に明らかになった。
裏にあるのは“Web as a Platform”
OpenID FoundationやData Prttability.orgといった団体の活動が支持を集めつつあることからも、Web上で個人が自由に活動するためのインフラが進展しつつあり、現在我々が活用している“Web as a platform”の世界は今後更に拡大していくことが推測できる。
MSのYahoo!に対する買収提案も、先に挙げた大手企業によるインターネット企業の買収も、その裏にはこのような状況に対する危惧があると考えられる。今後、IT関連サービスのプラットフォームはWeb上に移行する可能性が高く、このプラットフォームに積極的に関与していないと、サービスだけでなく、ハードウエアなど、他のプロダクトにも付加価値をつけることが困難になることを想定しての買収戦略ではないだろうか。そして、今後、このような買収戦略は国境を超えて展開されると思われる。
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