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中国政府系投資ファンドCICの正体

上席主任研究員 金 堅敏

2008年4月

日本では、空港管理会社の外資規制について賛否両論が展開されている。特に活発になった政府系ファンドの投資活動がその議論に油を注いだ。中でも、中国の政府系ファンドの動静が大いに注目を集めた。中国は、増大化する外貨準備の「超過部分」の運用機関:中国投資公司を設立した。外貨準備資産の投資先や運用機関の集中リスクや為替リスクをヘッジする必要があるからである。しかし、100%政府出資の背景、政府高官による役員構成、投資政策やポートフォリオの不透明性などで海外からは「政府の戦略」に沿って行動するのではと大いに懸念されている。投資ファンド設立プロセスの不透明性で中国国内からも批判の声が高まっている。その政府ファンドの実態を検証する。

中国投資有限公司(The China Investment Corp. CIC)の設立

近年、拡大する貿易黒字や安定している高額な対内直接投資を背景に中国の国際収支は急速に拡大してきている。他方、輸出競争力の維持やリスクマネジメント能力の弱い金融機関の保護を目的に人民元の為替相場を安定化させるためや金融危機に備えるため、中央銀行は市場から大量の外貨を吸収している。その結果、中国の外貨準備は、2002年末の2,864億ドルから2007年末の15,283億ドルまでに膨らんだ。通常、為替市場安定或いは対外支払準備を備えるために中国は、流動性の高い外貨準備7,000億ドルを必要としているが、2005年半ばから中国の外貨準備は通常の額を超えて増え続けてきた。外貨準備の「超過」部分約8,000億ドルの運用が課題となった。

これまで中国の外貨準備資産は、安全性や流動性を前提に国家外貨管理局がその運用責任を持ち、主に米国債、外貨預金等に投資してきている。しかし、膨大な外貨資産を一つの運用部門や運用先に集中しすぎるリスクや為替リスクなどが高まり、高収益の長期運用をするためのポートフォリオの再構築や運用先の多様化が必要となってきた。2006年半ばごろから中国政府は、「超過」外貨資産の運用について研究調査を重ね、2007年9月に登録資本2,000億ドルの100%国有の政府投資ファンド:中国投資有限公司(CIC)を設立した。

歴史的に、CICを先取りに中国は、中央匯金投資有限責任公司(Central Huijin Investment Company Limited. CHICL。中央銀行が直接出資して設立された100%国有の投資会社、国有金融資産管理委員会の性格を有する)を設立して、外貨準備資産670億ドルを使って倒産寸前の国有金融機関への資本注入を行った。中国国内でCHICLの設立プロセスに批判が集中したため、CICの設立は全人代(国会)の批准を得て行われた。今回、CICは、中央銀行から670億ドルの出資分を買い取り、CHICLを子会社化した。

実際、CICの役割は、1)「超過」外貨準備の運用と 2)国有金融機関への出資・管理の2つであると設定されている。過日、CICの役員は、投資資金(資本金)2,000億ドルのうち3分の1ずつ(約670億ドル)を、CHICL買取の資金、中国農業銀行と国家開発銀行への資本注入(国家開発銀行への200億ドル資本注入は2007年末に完了)、海外ポートフォリオ投資に当てるとアナウンスしている。

アナウンスされるCICの運用方針

「政企分離」(政府と企業の分離)、「自主経営」、「商業目的」を目指すCICは会社法に基づき設立された有限会社であり、取締役会、監査役会、運営管理委員会などのガバナンス機関が設置される。しかし、構成メンバーはすべて政府高官である。

投資戦略は、1)資本市場のポートフォリオ投資、2)海外のエネルギー・原材料などの戦略投資、3)中国企業の海外M&A戦略への支援などであるべきと政府関係部門や各界から要求されている。しかし、CICの投資収益率は、資本金となっている特別国債への5%前後の金利支払い、年平均5%前後の人民元上昇による為替差損及び内部管理費を合わせた10%前後のコストを上回らないと、経営赤字になってしまうので、利益最大化の商業目的に徹すべきであると反論する意見も多い。実際、CICの投資政策がいまだに明確になっておらず、「商業目的」ではなく「政府の戦略」の実施ではないかと海外から警戒されているゆえんである。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国政府系投資ファンドCICの正体 [197 KB]