混合診療をめぐる東京地裁判決について
研究員 河野 敏鑑
2008年4月
これまで、厚生労働省は、「医療の平等の確保」、「安全性と有効性の確保」、「患者の負担を抑える」といった理由から、一部の例外を除き、混合診療を認めてこなかったが、そのような解釈には法的根拠がないとする判決が11月7日に東京地裁で下された。混合診療の容認を求める背景には、海外で認められた医療行為が、日本ではなかなか保険の適用とされず、患者によっては希望する医療が制限されることがある。
厚生労働省が公式に掲げている目的と混合診療の禁止との間に直接の関係はない。今回の判決を期に混合診療の是非や公的医療保険のカバレッジにとどまらず、医療の平等、安全性、有効性をどのように確保するべきなのかといったことについても議論が深められることを期待したい。
混合診療とは、公的医療保険制度の適用を受ける保険診療と受けない自由診療を併せた診療である。これまで、厚生労働省は、差額ベッド代などの一部の例外を除き、混合診療を認めておらず、もし行った場合は、保険診療分も含めて全額自己負担となると解釈してきた。
しかしながら、海外で認められた医療行為が、日本ではなかなか保険の適用とされないため、こうした混合診療の禁止は、自分が希望する最先端の医療が制限されることにつながりかねず、一部のガン患者などにとっては、深刻な問題となっている。こうした中で、神奈川県内のガン患者が、混合診療を認めるよう主張して行政訴訟を起こしていたが、11月7日、東京地裁は患者側の訴えを認め、国側敗訴の判決を言い渡した。
判決によれば、混合診療を禁止する法的根拠はない、としている。こうした主張は以前から、経済学者などを中心になされていたが、法律家からも同様の判断が下された意味は大きい。また、過去にこうした裁判がなかったために訴訟を引き受ける弁護士が見つからなかったため、いわゆる本人訴訟となったことは、弱者に対して必要な法的サービスを弁護士などが提供しているのか、という疑問も同時に社会に提起することになったと言えよう。
厚生労働省は今回の裁判の中で、混合診療を禁止している理由は、「医療の平等を保障すること」、「患者の負担が不当に増大するおそれのあること」、「医療の安全性・有効性を確保すること」をあげているとされる。
しかしながら、現在の公的医療保険制度では、歴史的経緯から、健保・国保・共済などの複数の制度が並存する状況になっており、そもそも混合診療の可否以前に不公平な状況が生まれている。特に、国保と生活保護の間に大きなギャップがあるため、国保の保険料が支払えず、かといって生活保護の対象にならないため、医療が受けられない人が最近急増している状況が問題になっている。こうした人々が医療を受けられるようにすることこそ、医療の平等を確保するために必要な政策であって、困っているガン患者の自己負担を増やすことは、かえって医療の平等を損ねているはずである。
もっとも、厚生労働省が主張する患者の負担が不当に増大すること、安全性や有効性の確保についての懸念は確かに存在する。実は、現在でも一部に、公的医療保険制度で認められた以外に不明瞭な費用を請求する病院が存在するとされている(川渕孝一氏の著書より)。また、安全性・有効性についても、患者が十分に説明を受けているのかは、やや疑問である。
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