富士通総研

商品寿命と価格変動

上級研究員 齊藤 有希子

2008年1月

企業業績との関係について

商品寿命の長短は、企業業績に深く関係しており、企業戦略を考える上で非常に重要な問題である。例えば、PCの短寿命化は、富士通をはじめとするPCメーカの業績悪化につながる一方、自動車などの長寿命商品のメーカの業績は良いと言われている。また最近は、商品の短寿命化は多くの商品で共通して見られる性質であるとも言われている。では、商品寿命を決める要因は何なのであろうか。

一方で、価格変動が企業業績へ与えるインパクトも非常に大きい。そして、商品寿命と価格変動は密接な関係を持っていると考えられる。商品寿命と価格変動は、密接な関係を持ちながら、企業業績に影響を及ぼしていると考えられ、商品寿命と価格変動の統計的な性質を理解しておくことは非常に重要である。

ここでは、食料品・日用品の商品寿命と価格変動の分析結果を紹介する。マーケティング分野の研究では、個別の商品分類の性質に特化した分析を行うが、商品分類を横断的に扱うことが本研究の新しい視点であり、商品分類に共通の性質や異なる性質を読み取ることができる。用いるデータは、日本経済新聞デジタルメディア社の提供するスキャナデータ(スーパーのレジで記録される日次の価格データ、期間1988-2005年、店舗数273、商品数20万)であり、商品ごとに販売開始日と販売終了日が読み取れるデータである。

商品寿命の性質について

商品の新陳代謝の観点から、商品寿命を観測した。すなわち、販売開始する商品の割合(新規率)と販売終了する商品の割合(退出率)を算出した。まず、新規率と退出率は、年率で3-4割であり、米国での観測値(4年で3割程度)よりも新陳代謝が激しいことが確認された。また、商品の年齢(販売開始日からの経過日数)が高いほど、商品の退出率は低くなることが確認された。販売開始後1年以内の商品の退出率は6割程度であるのに対し、販売開始後5年以上の商品の退出率は1割程度であることが分かる。このように、長寿命商品は更に長生きして、商品寿命の2極化は作られる。

添付した図より、新規・退出率の推移をみると、新規率の年度による違いが大きいのに対して、退出率は安定的であることが確認される。1994-1995年頃、新規率は急激に上昇し、1994年以降、退出率は徐々に上昇していることから、新規率の急激な上昇が、退出率の緩やかな上昇を引き起こしたと考えられる。退出率の上昇は、商品寿命が短くなったことを意味している。このような緩やかな短寿命化は、商品分類によらず、共通して観測されており、普遍的な性質であると考えられる。

商品分類別に新陳代謝を観測すると、2割以下のものから、4割以上のものまで存在する。例えば、パン・もち、チルドデザート、菓子類の退出率が4割以上である。多くの商品分類では、新規率と退出率はほぼ同じであるが、新規率が退出率を大きく上回り、商品数が急激に増えている商品分類も存在し、酒類、ベビーフード、ステーショナリー、化粧品などが対応する。

また、新規率と退出率の商品分類による違いを年度ごとに観測すると、新規率の違いは、1990年と1994年に急激に大きくなるが、退出率の違いは安定しており、徐々に大きくなってきている。商品分類による商品数(多様性)の違いは、同時期に引き起こされていると考えられる。

商品寿命と価格変動の関係について

まず、商品寿命と価格変動の関係を価格の改定頻度の観点から分析する。短寿命の商品では、価格改定をせずに退出する割合が高いことが確認された。例えば、商品寿命が半年未満の短寿命商品では、8割は価格改定をせずに退出している。一方で、5年以上の長寿命商品では、2-3ヵ月に1回の頻度で改定する傾向が強くなることが観測されており、適正な改定頻度が存在しているように思われる。

商品寿命による価格変動の違いは、商品の初期段階(販売開始1ヵ月程度)においても観測されている。商品寿命が長い商品ほど、初期段階の価格改定の頻度が高く、価格改定時には、価格は上昇する傾向にあることが確認された。長寿命商品ほど、柔軟な価格改定が行われていると考えられる。

初期段階の価格変動の商品寿命による違いは、商品分類により異なっている。商品寿命による価格変動の違いが大きい商品分類は、医療関連品・雑貨、ステーショナリー、酒類である。また、商品寿命による価格変動の違いが大きい商品分類においても、価格変動の様子は異なっている。医療関連品・雑貨、酒類では、短寿命商品の価格の下落傾向が強いため、寿命による違いが大きくなるのに対して、ステーショナリーでは、長寿命の商品の価格の上昇傾向が強いため、寿命による違いが大きくなることが確認された。

このような商品寿命による初期段階の価格変動の違いは、企業の経営判断に生かすことができると考えられる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 商品寿命と価格変動 [133KB]