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サービスの系統的理解に向けて

上席主任研究員 長島 直樹

2008年1月

サービスは多種多様であると言われる。確かに、医療、教育、金融、娯楽関連など各種のサービスはお互いに異なる特徴を持っており、マーケティングの実務等においてお互いの接点を意識することはほとんどない。

しかし、サービス研究の系譜を辿ると、サービスを全体として系統的に理解したり、ある評価軸によって類型化したりする試みも行われている。また、サービスの利用者が利用に際してどのようなコストを感じているかなど、意外な共通点も見つかっている。サービスの系統的な理解を促進することは、研究上の意味もさることながら、企業実務にとっても、全体的な展望を可能とし、包括的な理解を促すという意味において有意義なことであると思われる。

サービスに関する従来の考え方

サービス分類の考え方で代表的なのは、C. Lovelockによるものである。「作用対象が人か人の所有物か」という軸と、「サービスの行為が有形か無形か」という軸によってサービスを4分割したものである。サービスの外見・形態的特徴に基づく分類で、評価軸としての概念は明確だが、理念的な分類であり、実証を伴ったものではない。また、会計、法務、コンサルティングなどのB to Bサービスが定義しづらいという問題もある。更に、行為が有形か無形かという評価軸も、例えば「葬祭サービスが有形で、教育サービスは無形」という区分にどれだけの意味を見出せるかは心もとない。評価軸の概念は明確だが、適用規準の曖昧さによって混乱や誤解を招く恐れもある。

モノとサービスを同時に分類した例としてH. Assaelのものがあり、関与と知覚差異を評価軸としている。これらは利用者の心的態度であるため、知覚コストなどを理解するために有用である。しかし、実際にAssaelの分類を確認するためにアンケート調査を実施してみると、それほど明確なサービス分類とならないことがわかる。関与は、いずれのサービスも「中立」を中心としたほぼ対称の分布となる。一方、知覚差異はいずれのサービスにおいても「差がある」と感じられていることがわかる。ただ、サービス間の違いは関与以上に小さい。

これらの評価軸は、サービスの類型化よりも、同一サービス内のセグメンテーションに有効であることが示唆される。サービスの系統的理解以上に、サービス内のセグメンテーションやターゲティングが重視される理由もこのようなところに見出せる。

「向対象性」と「利用頻度」による類型化

サービスには、ある程度の時間をかけて楽しみたいと思うサービスと、なるべく早く終わらせてしまいたいサービスが存在する。前者の例としてテーマパークや映画といった娯楽関連が挙げられ、後者の例としては歯科治療などが考えられる。

この評価軸を「向対象性」と命名し、前者のように向対象性の高いサービスを「内容享受型」、後者のように向対象性の低いサービスを「問題解決型」と分類することができる。向対象性は、利用者の心的態度を表すとともに、時間消費というサービス利用の性格を捉えたものであり、実際にこの分類は、知覚コスト、知覚リスクのウエートを語る上で有益な評価軸になる。

向対象性が低いと、時間コストと心的コストの比重が大きくなる。つまり、向対象性が低いサービスでは、利用者の時間コスト・心的コストを下げることによって、より高い価格が受容され得ることを示唆している。

サービスを特徴づける今1つ重要な評価軸は利用頻度である。利用頻度が大きいサービスは、顧客満足を通じてリピーター比率を高めることがマーケティング上、重要な戦略となる。一方、利用頻度の低いサービスは口コミなどにより評判を高め、利用者の裾野を拡大することが成功の要件となる。すなわち、前者は満足効果(Satisfaction Effect)、後者は評判効果(Reputation Effect)が戦略上のカギになる。

消費者へのアンケート調査の結果にしたがって、向対象性と利用頻度の平均値をサービスごとにプロットしてみると、下図のようになる。ここで、B to Bサービスは概ね問題解決型なので、左側の上下に分布すると予想される。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF サービスの系統的理解に向けて [182 KB]