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ベトナムにおける日系企業のアウトソーシングの成功事例

上席主任研究員 金 堅敏

2007年10月

日系企業は、1990年代以降安価良質な労働力を生かすため、生産拠点のアジアへのシフトを加速させたが、近年では知的人材の活用を目的にソフト開発や技術開発などのアジアへのアウトソーシングを増やしてきている。特に、中国・インドに続きベトナム人人材の活用を検討している企業が少なくない。松下電器や東芝は、組込みソフトの開発拠点をベトナムハノイに開設した。日系企業は、ベトナムへの製造機能移転を加速させるとともに開発のアウトソーシング拡大も見込まれる。実際、日産テクノベトナムは、ベトナムにおける日系企業のアウトソーシング成功事例と評価されている。

会社概要

2001年6月に設立された日産テクノベトナム社(NTV)は、日産自動車の子会社である株式会社日産テクノ(JNT)の100%資本子会社である。日産テクノは、欧米の日産拠点へ技術者派遣などはあるが、海外で拠点を設立したのはベトナムが始めてである。

NTVの事業内容は、自動車関連部品のCADデザイン(自動車CADデータの作成)、CAD解析及び設計である。ベトナムにおける日系オフショアアウトソーシング事業としては草分け的な存在である。ベトナムの若くて優秀な技術者を活かすのが目的である。

2006年初の従業員は200名前後であったが、2007年1月現在は502名と急増した。従業員のうち大学卒が約200名で、高卒・短大卒が300名である。従業員構成から見て、ソフトアウトソーシング開発拠点と違って、NTVの業務はCADデータの作成などの労働集約的な部分に特化している。ITOよりもBPOに近いアウトソーシングと言える。

ビジネスの仕組み

現在、NTVの活動は、100%本社からのアウトソーシング受注作業である。先進技術の開発を行う日産自動車が頂点に、新製品開発を担当する日産テクノが中間に位置し、新製品開発を支える部品設計・CAD解析を行う日産テクノベトナムは底辺にある。3社はピラミッドのような関係を構成している。

業務受託する情報のほとんどは、ネットワークシステムを介してデジタル情報として受領。社内で設計図面、設計検討書、部品データ、解析モデルデータなど、様々な設計技術データを作り上げた後、再びデジタル情報として回送し、日産テクノでの最終品質チェックを経て、日産自動車へ納入。ソフト開発のオフショアと違い、同じグループ会社の人間とコミュニケーションしているので、仕様書の変更やコミュニケーションによるトラブルは少ない。

NTVが主に活用している通信インフラは、1)IP-VPN専用線(容量6Mbps)、2)TV会議用にADSL電話回線、3)普通のインターネット回線である。ベトナムでは、昨年までは基地局設置の遅れでIP-VPNサービスが利用できなくフレームリレー方式の通信回線を使っていた。通信コストが高いため、その通信容量は6分の1しかなかった。大容量のIP-VPN専用線の利用によりこれまでできなかった大規模な業務内容も受託できたし、受託規模も急速に拡大できた。例えば、自動車の構造組成に関する情報をデジタルデータ化する大規模なデータ解析業務の受注ができた。また、従来は単品作図業務を行っていたが、通信インフラの高性能化により、モジュール部品検討業務、レイアウト検討業務などが可能となった。

NTV社の公用語は日本語で採用条件に日本語、IT、CAD知識を要求する。事前教育はハノイ市内の技術専門学校と提携している。入社後も継続語学教育を行う。2007年1月現在の従業員は急増したが、それは、上述した大容量IP-VPN専用線の導入により大規模なCAD解析業務などの受託が可能になったことや、会社内外による人材育成の制度が確立されているなどからであろう。

日産テクノベトナム社の成功要因

筆者は日産テクノベトナム社への現地訪問を通じて、以下のような成功要因を挙げることができると考える。

1) 日産テクノ社長自身がベトナム拠点のトップを兼任した。現場の抵抗を突き破ってアウトソーシング推進の経営革新を遂行できたのは、このようなトップマネジャーの強い意思と積み上げた実績があったからである。また、日産のゴーンCEOが自らベトナム拠点を訪れ、日産テクノベトナムの仕事を高く評価したことで、アウトソーシング事業を肯定し、経営サイドからアウトソーシング事業の更なる展開が可能となった。

2) 現地拠点の経営者は、自社のアウトソーシング作業は高度教育よりもよくトレーニングされた、スキルを持つスタッフが必要であることを十分に認識し、産学連携による効果的な教育・トレーニング制度を確立するとともに、最適なヒューマンリソースポートフォリオを採用した。これは、経営コストの最小化を実現するとともに人材の安定性をも図れることとなった。

3) 他方、現地拠点のキャパシティーに合わせて通信インフラサービスを選択したことも評価されよう。本社におけるアウトソーシングの組織的な対応や現地拠点の受託能力が備わっていなければ優れた通信インフラが提供された状況にあったとしても成功することはない。したがって、組織対応を整えた上で受けられる通信インフラサービスにあわせてアウトソーシングのグレートをアップさせていくのが最適な選択といえる。日産テクノベトナムは、組織準備度と通信インフラの状況を最適に組み合わせてアウトソーシングビジネスを高度化させている先進例と評価できる。

4) これから、現地人材のグレードアップにつれてより高度な通信サービスと組み合わせ、グローバル拠点間のオンライン作業などのより高度なアウトソーシングビジネスが展開されることになるだろう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF ベトナムにおける日系企業のアウトソーシングの成功事例 [179 KB]