経済的規制でも依然推進が必要な規制緩和・撤廃
-理容師法、美容師法にみる必要性-
2007年10月
経済的規制から社会的規制、官製市場開放に重点が移る規制緩和・撤廃
わが国の規制緩和・撤廃は、93年以降に取組みが本格化し、既に15年近くが経過している。このなかで、企業活動に深い関係を持つ経済的規制では、緩和・撤廃への取組みが早くから行われてきた。
医療や福祉・保育など国民の安全や環境保全等が目的とされてきた社会的規制でも、2001年以降に緩和・撤廃への取組みが活発になった。そして規制緩和議論の重点は、経済的規制から、次第に社会的規制へと移行してきた。また近年では、国民年金保険料の徴収等の市場化テストにみられるように、官業の民間開放への取組みも活発になっている。
こうした状況のもと、経済的規制の緩和・撤廃は、あまり注目されなくなってきている。しかし依然として経済的規制にも、企業活動の大きな障害となっているものがある。その一つが、理・美容業の理容師法、美容師法による規制である。
ここでは、キュービーネット株式会社(以下キュービーネット、店舗名QBハウス)の事例をベースに、理容師法、美容師法による規制が、理・美容業における企業活動への障害となっている状況を述べる。
コアサービスのモジュールに特化したキュービーネットの事業展開
理髪店の従来のサービスは、洗髪、ヒゲ剃り、簡単なマッサージなどを含んでいる。キュービーネットは、顧客によっては、時間の浪費ともなるこうしたサービスを極限まで絞込み、カットのみ10分1,000円というサービスを提供している。これは従来常識とされていたサービス・プロセスを見直し、コアサービスのみをモジュールとして取り出したビジネスといえる。
96年の第1号店の出店以来、同社は順調な成長を遂げ、07年6月末には店舗数が355に達している。また06年度(06/6期)の来店者数は、952万人で初年度の167倍に達した。このような事業拡大の背景には、①駅ナカビジネスが一般でなかった98年における駅構内での出店の開始、②顧客の来店、待ち時間、カット時間、顧客の性別、年齢等の情報の本部への集約による各店舗の繁閑に合わせた理・美容師配置-などの創意工夫がある。
ただ独立心旺盛な人が多い理・美容師の確保が、業務運営上のボトルネックとなっている。理容師法、美容師法による規制は、この理・美容師の確保の問題を一層深刻にしている。また規制は、顧客ニーズへの対応も難しくし、事業展開上の大きな障害となっている。
弊害が多く緩和が望まれる理容師法、美容師法による規制
理容師法と美容師法の規制による最も大きな弊害は、理容師、美容師が同一店舗で働くことができないことである。この規制のためキュービーネットでは、店により理容室と美容室の届出を変え、届け出た方の資格者だけが各店舗でカットを行っている。
更に、理容師と美容師は得意とするカットが異なるため、理容師と美容師が同一店舗で共に働くことができないことが、顧客ニーズへの対応を難しくしている。理容師は真直ぐにハサミを入れ、美容師は頭から逃がすようにハサミを入れる。このため美容師には五分刈りに恐いという感覚を持ち、苦手な者が多い。したがってこの規制は、得意なカットが異なる理・美容師を組み合わせて各店舗に配置することを難しくしている。キュービーネットにおける理想の理・美容師の配置は、1店舗に理容師1名、美容師2名である。
キュービーネットは、顧客の需要に応えるため、苦肉の策として8つの理・美容併設店舗を出店している。これらの店では待合室は1つだが、店舗は2つに仕切られ、別々の入り口から理容師がいる店舗と美容師がいる店舗に入るようになっている。
こうした規制の弊害をなくすため、同社では構造改革特区として、理・美容師の区分をなくす申請や、カットのみを行う業務の資格を認める申請を行っているが07年6月時点では認められていない。この背景には、理・美容業界の抵抗があるとみられる。
また人通りが多い場所での狭いデッドスペースでの出店や、テスト出店を行いやすくするため、QBシェルという名のユニットタイプの店舗(2006年のグッドデザイン賞を受賞)を開発している。しかし理容師法・美容師法には、理容室・美容室に必要な待合室の面積が規定されており、待合室のないQBシェルの日本での出店はできない。ただ、シンガポールと香港では、QBシェルによる出店を行い、成功を収めている(日本ではアピールのため、銀座店の店内に設置している)。
理容師・美容師が国家資格である国・地域は少なく、また両者が分かれているのは日本と韓国、台湾のみである。近年の日本では理容師を目指す者が少なく、理容専門学校の閉校も多い。美容師はカリスマカッターの影響等から若干状況は良いが、専門学校に年150万程度の学費を払い、合格率40%程度の国家試験に合格しても、低賃金や少ない雇用機会のため、業界を去る人も多い。日本では国家資格を必要とする理容師、美容師のカット技術は世界最高水準で、この技術を生かしたカットに特化したビジネスモデルは国際展開可能とみられる。業界の国際的な競争力維持や更なる拡大のためにも、理容師法・美容師法のより一層の緩和が望まれる。
全文はPDFファイルをご参照ください。
PDF 経済的規制でも依然推進が必要な規制緩和・撤廃
-理容師法、美容師法にみる必要性- [152 KB]
