富士通総研

ユニットレーバーコスト、GDPデフレータからみたデフレ脱却の条件

主任研究員 米山 秀隆

2007年7月

ユニットレーバーコストからみたデフレ脱却の条件

日本経済がデフレから脱却したかどうかについては、消費者物価指数(CPI)のほか、GDPデフレータ、ユニットレーバーコスト(ULC)などの動きをみて総合的に判断するとされている。CPIは、一時は前年比プラスに転じたものの、その後は弱含み、再びプラスになるのは夏場以降とみられている(昨年、原油価格が急騰した反動で、夏場までは石油製品がCPIの下押し要因となるため)。一方、ほかの二つは依然マイナスのままである。以下ではこの二つの動きを分析することで、デフレ脱却の条件を探ってみたい。

まず、90年代以降のULCの動きを振り返っておこう。ULCの前年比マイナス幅が大きくなったのは、デフレが顕著になった98年以降であるが、その後03年まで前年比マイナス幅は拡大した。04年以降マイナス幅が縮小するようになったが、直近はまだわずかなマイナスとなっている。

ULCは、(雇用者所得/生産)の式で算出され、生産1単位当たりの労働コストを示す。この式は、(雇用者所得/投入労働時間)/(生産/投入労働時間)=時間当たり賃金/時間当たり生産性、と変形できるから、ULCは賃金と生産性の比率を示すことになる。この関係から、ULCの動きは賃金の動きと生産性の動きに分解できる。

ULCの前年比の動きをこの二つの要素に分解すると、90年代以降、生産性要因は一貫してマイナスに寄与してきた。つまり、90年代も一貫して生産性の上昇は続き、これがULCを引き下げる役割を果たしてきた。一方、賃金要因については、97年まではプラスに寄与していたが、デフレが顕著になった98年以降はマイナスへの寄与に転じた。つまり、デフレの当初の段階では、賃金はULCの引き上げ要因になっていたが、その後は逆に引き下げ要因に転じたということである。

これを企業の側から解釈すれば、デフレを生産性の上昇だけでは対応できず、ついには賃金引き下げで対応せざるを得なくなったということを意味する。そして、最近まで、生産性上昇と賃金下落がともにULCを引き上げる方向に寄与してきた。

直近時点では、生産性上昇のULC引き下げ効果がやや減少する一方、賃金がわずかながらULCを引き上げる方向に動き始めており、結果としてULCの前年比マイナス幅が縮小する方向を示している。こうした賃金上昇の寄与が、より確実なものになっていけば、ULCはプラスに転じることになる。

以上をまとめると、ULCでみたときのデフレ脱却の条件は、賃金上昇が、生産性の上昇幅を上回るものになることである。企業は最近では、賃金引上げに取り組む余裕が出てきており、少しずつではあるが条件は満たされる方向に向かっている。

(以下、本文省略)

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