アジアにおける経営環境の変化と企業戦略
-第20回 富士通総研経済研究フォーラム-
富士通総研経済研究所では、2006年12月22日金曜日東京国際フォーラムにおいて第20回フォーラム「アジアにおける経営環境の変化と企業戦略」を開催した。今回のフォーラムは二部形式にて実施し、第一部では「石油価格動向と新たなアジア大ビジネスの萌芽」というテーマのもとに3つの研究発表が行われた。また第二部では「中国経済の新たな動きの中での市場経済の枠組み作りと課題」のテーマで、中国財政部財政科学研究所長 賈康氏による特別講演と、1つの研究発表が行われた。研究発表に対する会場からの質問、コメントも活発であり、極めて盛況のうちに幕を閉じた。
第一部:石油価格動向と新たなアジア大ビジネスの萌芽
第一部では、まず主席研究員 武石が「変動する石油価格のゆくえ」というテーマで発表した。原油価格の高騰の理由は、ファンダメンタルズの要因と投機の要因に分けることができ、ファンダメンタルズとしての需給関係は、在来型(Easy Oil)生産量のピーク到来がいよいよ意識されるため、今後も堅調な状況が続く。一方、投機要因に関しては緩和傾向となる。日本のようなエネルギー消費国の側としては、資源制約・環境制約の下での経済活動ルールを考える必要が生じる。しかも、今後、非在来型石油、それに石炭・ガス・バイオマス等の多様なエネルギー源を活用するエネルギーインフラの整備が必要となり、高度成長期に建設されたエネルギーインフラは更新期を迎える。このため、2050年、更には2100年のエネルギー需給状況を考察した上で、2030年におけるエネルギーシステムを計画する必要がある。日本のエネルギー政策に関しては、東アジア全体でのエネルギー供給安定の視点の下で打ち出されるべきであり、データを採り、交換し、いざというときに備え情報化で予測可能性を増大することが必要で、こうした予測可能性の増大は、防災対策、地域エネルギー安全保障にもつながる。エネルギー相互依存の深化、多国間供給インフラを整備しつつ相互参入を図ること、つまり、サービス経済化の促進を促すことで日本は大きな利益を受けることを述べた。
続いて、上席主任研究員 金は「アジアにおけるEコマースのビジネスモデル」と題し、主に中国の有力電子商取引企業のビジネスモデルについて発表した。急成長を見せる中国の電子商取引市場において、B2B型のビジネスは収益のあがるモデルとして確立されている。その代表格であるアリババのビジネスモデルは、集客力形成、収益力形成、技術力形成、Google手法の転用等による付加価値サービス提供といったビジネス戦略に特徴がある。同じくB2B型電子商取引を行う万国商業網の成果主義収益システムは、収益モデルへのイノベーションである。中国のC2C型電子商取引サービスのトップベンダーであるTaobaoの仕組みは、無料サービスが基本で、PR作戦による集客力の形成、取引信頼性確立のためのエスクローの提供、IM(Instant Messaging)ツールの導入による商慣習への配慮、「優良店主」育成システムの導入などの面でEbay(China)を含む他のC2Cサイトよりきめ細かな経営戦略を実施している。ただし、テナントの選択的有料化の試みは失敗で終わったが、収益モデルが確立されているB2Bモデルと集客力のあるC2Cモデルの融合により、新型のB2Cモデルの確立を試みている。中国の電子商取引市場を目指す日系企業への示唆として、(1)人気を集める効果的なマーケティング活動の展開、(2)ビジネスモデルや収益モデルにおける独自の技術・ノウハウの開拓の必要性、(3)信頼できる現地パートナーとの提携、(4)利益の上がる仕組みの革新、などを提示した。
また、主任研究員 シュルツは「アジアにおけるEマネーのビジネスモデル」について発表した。日本は、成長著しいeマネーと携帯電話の決済システムで技術的に先行してきた。銀行法の緩和の下、携帯電話のi-mode、公共輸送機関のSuica、コンビニエンスストアなどで利用されるEdy等の高度なインフラ構築、激しい競争により、高度な新サービスが発展してきた。その結果、電子商取引の最大の問題、「実世界」で移動する顧客と「仮想のネットワーク世界」との接点不足は、ほぼ解消している。SuiPo等の広告、駅の改札、映画館、百貨店では携帯電話で支払いや情報取得が可能となってきている。企業には、この取引から「金鉱」の顧客情報を蓄積するチャンスがある。ただ事業の採算性は、技術的先進性だけでは十分でない。採算性向上のため日本企業は、信頼性が高いeマネーの統合基盤を構築し、単一企業群だけに通用しているeマネーを、小売、webサービス、輸送、通信、銀行取引の利害関係者に広く開放する必要がある。この基盤構築は、短距離無線通信規格NFCの新標準で可能となる。NFCはクレジット、デビット、プリペイドの決済システムを統合し、携帯電話のインターネット基盤に接続を可能とする。統合基盤構築により日本の決済システムは、付加価値を生むサービス基盤として成長するアジアを中心に強い関心を呼ぼう。
第二部:中国経済の新たな動きの中での市場経済の枠組み作りと課題
まず、特別講演「中国における更なる経済発展と問題点」のなかで、中国財政部財政科学研究所長 賈康氏は、従来の競争原理導入による効率重視の成長路線から、サステナブルな成長路線への転換への課題などについて述べた(詳細後述)。
また上席主任研究員 柯は、「中国における国家と市場の関係変化」と題し発表した。2001年12月、中国は念願の世界貿易機関(WTO)加盟を果たした。それをきっかけに、外国企業による直接投資が増加し、中国市場も更に開かれるようになっていくと予想される。江沢民・朱鎔基政権の強いカリスマ性とは対照的に、胡錦濤・温家宝政権のカリスマ性不足を背景として、調和の取れた社会作りなど「科学的発展観」が打ち出されている。中央政府と地方政府の対立と摩擦は単なる政策運営面において見られるだけでなく、財源を巡る争いも長年熾烈なものになっている。「改革・開放」政策以来の30年近い間、中国社会構造が大きく変貌した。かつての農民と都市部住民からなる二元化社会構造から、トップの富裕層、中間所得層、都市部低所得層と農民からなる多元化社会に変化している。長期的な観点からみれば、経済のシステムが市場経済化しているなかで、政治体制も徐々に民主主義的なものに変わっていくと思われる。しかし当面は、「社会主義中国の特徴のある」民主主義体制の構築を進め、社会が安定化し、種々の条件が整った段階で真の民主主義体制の構築が宣言されると予想される。
| 13時10分~13時20分 | 開会挨拶 |
| 経済研究所理事長 島田 晴雄 | |
| 第一部:石油価格動向と新たなアジア大ビジネスの萌芽 | |
| 13時20分~14時 | 「変動する石油価格のゆくえ」 |
| 主席研究員 武石 礼司 | |
| 14時~14時40分 | 「アジアにおけるEコマースのビジネスモデル」 |
| 上席主任研究員 金 堅敏 | |
| 14時40分~15時20分 | 「アジアにおけるEマネーのビジネスモデル」 |
| 主任研究員 Martin Schulz | |
| 15時20分~15時35分 | 休 憩 |
| 第二部:中国経済の新たな動きの中での市場経済の枠組み作りと課題 | |
| 15時35分~16時15分 | 特別講演「中国における更なる経済発展と問題点」 |
| 中国財政部 財政科学研究所所長 賈 康 | |
| 16時15分~16時55分 | 「中国における国家と市場の関係変化」 |
| 上席主任研究員 柯 隆 | |
| 16時55分~17時 | 閉会挨拶 |
| 富士通総研 専務取締役 根津 利三郎 |
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PDF アジアにおける経営環境の変化と企業戦略
-第20回 富士通総研経済研究フォーラム- [192KB]
