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中国を取り巻く政治経済動向と日本

客員研究員(大東文化大学 助教授)
内藤 二郎

2007年4月

中国経済の光と影

周知のとおり、中国経済は4年連続で10%を超える経済成長を達成し、高度成長をまっしぐらといった勢いである。しかも、高い経済成長率と比してインフレ率は2~3%と安定しており、失業率も4%台前半を維持するなど、個別経済指標からいえば極めて順調かつ健全な状態にあるといえるだろう。しかしながら、一方で構造的な課題も抱えている。それは、マクロ経済の中身の問題である。需要構造をみると、固定資産投資がその中心であり、依然として拡大している貿易とともに、経済成長の原動力となっている。他方、消費の伸びは緩慢であり、内需拡大が大きな課題である。発展途上の中国にとっては、インフラ整備は必要であるが、雇用の確保と地域の成長率を維持する目的で行われる過剰投資には問題があり、その結果として過大生産によるデフレ圧力が高まっている。しかし一方では銀行貸し出しの増加、膨大な貿易黒字と人民元レート維持のための不胎化の影響によって流動性が大きく高まっており、インフレ圧力となっている。つまり、一部で消費財デフレと資産インフレが共存する日本のバブル期と類似した状況に陥っている。ここ数年来、中国経済は調整局面を経ずして成長を続けているため、例えば、北京オリンピックまでは政府主導の投資拡大で経済を支えるであろうが、その後の調整局面で経済が減速すれば、金融機関や国有企業の業績が悪化して失業の増加や不良債権の顕在化につながり、経済危機に陥ることも考えられる。そのほかにもエネルギー・環境や食糧問題など、自然環境との調和を図るという困難な課題もある。更に少子高齢化に伴う医療・福祉制度の整備や教育問題といった社会問題、そして何よりも懸案の格差是正という大きな課題もあり、中国経済・社会の現状は、手放しで楽観できるものではない。

一方、拡大する貿易黒字と外国からの直接投資、更には人民元の切り上げ期待に伴う投機資金の流入などによって、中国の外貨準備は2006年末に1兆663億ドルに達し、世界第1位である。この潤沢な外貨準備利用の多様化が、中国政府によって相次いで打ち出されている。例えば、市中銀行、証券会社、保険会社等による海外での固定資産、証券、金融資産投資などを促進する人民銀行の政策や、中国工商銀行や中国建設銀行などに対する海外投資の代行業務の許可、更には、国内の企業が海外に投資する際などに規制されていた外貨購入制限枠を撤廃することにより、中国企業が外国で大規模投資を行ったり、会社設立が容易になるほか、中国企業による外国でのM&A(「走去出」)の動きも加速させている。こうした規制緩和の動きは、中国企業の競争力強化に対する政府の積極策という意味から大いに注目される。

中国企業による海外での企業買収が大きく増加していることに加え、昨今、中国は資源外交を活発化させている。著しい経済成長やモータリゼーションの進展、都市化などの影響による資源・エネルギー需要の急拡大に対し、オーストラリアの鉱山(鉄鉱石、石炭、ウランなど)との長期契約やロシアから天然ガスを移送するパイプライン建設、中東・南米などでの原油獲得など、世界中で資源獲得の勢いを強めている。また、昨年11月に北京で開催された「中国・アフリカ協力フォーラム」に象徴されるように、資源獲得と国際社会での中国支援を目的とした対アフリカ援助外交も非常に積極的に行っている。これらは「強い中国」を国際社会に示す積極的な対外経済戦略の一環でもある。中国の外貨準備の約4割が米国債であり、他国経由の国債や国債以外を含めれば、半分以上が米ドル建ての債権ということになる。この潤沢なドル建て債権を使った資源外交やM&Aが加速していけば、中国の手によって、世界各国にアメリカからドル資金が流入することになり、アメリカ経済に与える影響も少なくないと予想される。こうした動きは、単なる中国の積極外交政策にとどまらず、世界に大きく影響する課題であることを日本も明確に認識しておかなければならない。

(以下、本文省略)

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国を取り巻く政治経済動向と日本 [251 KB]