サービス研究の現状と今後の展望
明治大学大学院 グローバルビジネス研究科教授
近藤 隆雄
2007年4月
サービス研究は1950年代に米国で始まっており、それなりの歴史と広がりを持っている。サービス研究が量的に増えたのは、産業界で規制緩和の動きが加速した1980年代である。米国の産業界は競争激化を乗り切る知恵を主に大学に求めた。この時期に、サービス・マーケティングはマーケティングの一分野としての地位を確立し、ラブロックなどによる標準的な教科書も出版された。
1990年代になると、ICT(情報通信技術)が発達し、サービス研究もICTを用いたサービス効率化やデータベース化に重心を移すことになる。2000年以降は、ICT活用を所与とした上で、CRM、顧客資産、顧客ロイヤリティーに関するテーマが多くなってきている。
サービス研究は、サービスの特徴と密接に関連している。そもそも、サービスとは「人や組織に何らかの便益をもたらす活動のプロセスそのもので、市場取引の対象となるもの」である。したがって、無形性、生産と消費の同時性、結果と過程がともに重要になる-といった特徴を持つ。ただ、今のところ直接収益に結びつくような“ビッグ・セオリー”は非常に少ない。
次に、今後のサービス研究に関連して2点だけ述べる。まず、サービスの生産性と質の関係を明らかにする必要がある。「サービスの生産性を高めよ」という議論があるが、日本では伝統的に期待品質が高く、質を考慮せずに生産性を論じるのは好ましくない。しかし、品質と生産性は必ずしもトレードオフの関係にあるわけではない。顧客満足を重視する結果として一次的に効率が落ちても、長期的な生産性向上に結びつくことはあり得る。
第二に、サービス特有の変異性への対応に関する研究余地は大きい。つまり、対人サービスでは顧客の行動、要求、能力、嗜好などの違いや不確実性がサービスのパフォーマンスに影響する。この変異性に対応するには、「受け入れてサービスをカスタマイズする」、「排除して対応できる範囲を限定する」という2つの方向性がある。サービス・イノベーションとの関連で言えば、対人サービスではターゲット・マーケティングやセルフ・サービスの拡大が考えられるし、モノや情報を対象とするサービスについては、製造業のイノベーションが適用できるケースもあるだろう。
最後にサービス・サイエンスという考え方についてだが、科学的アプローチは確かに望ましい。しかし、その際に人間が主観的に行う認知・評価と科学的アプローチをいかに両立させるかという困難な課題が残る。組織の価値観とも密接に結びついており、サービス研究はケース・スタディーのような定性的アプローチが最も有効であると考えている。
(編集・文編:株式会社富士通総研)
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