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中国で最低賃金が大幅上昇

主席研究員 朱 炎

2007年1月

高成長で労働者賃金が急上昇

中国経済は高成長が続いており、2005年の経済成長率は10.2%であり、2006年1~9月には10.7%にも達した。

中国経済の発展において、低賃金は優位性の1つであり、「世界の工場」を支えてきた。しかし、持続的な経済成長により、賃金水準の上昇が続いている。

従来、企業の職員、技術者、経営幹部などいわゆるホワイトカラーの賃金上昇は毎年1割前後で推移してきたが、労働者の賃金水準は比較的安定していた。しかし、2006年に入ってからは、労働者の賃金上昇が著しい。7月以降、各都市では最低賃金水準がほぼ一斉に引き上げられた(表:PDF参照)。

輸出産業が集中する広東省では、5段階に設定された主要都市の最低賃金はすべて引き上げられ、上昇幅は平均で17.8%、最高46%にもなる。そのうち、日系自動車産業が大きなプレゼンスを有する省都広州市では、最低賃金は従来の月684元(約9,900円、1元=14.5円で計算、以下同)から780元(約11,300円)になり、14%の上昇である。経済特区である深圳山市は、最低賃金は全国最高であり、今回は690(約1万円)元から810元(約12,000円)に、17.4%も引き上げた。

日系企業の生産基地となっている大連開発区では、昨年、労使紛争により従業員の月収は一律100元引き上げられた。この7月に、最低賃金は従来の500元(約7,250円)から650元(約9,400円)に、3割も引き上げられた。

北京市は、最低賃金を7月から従来の580元(約8,400円)から640元(約9,300円)に、10.3%引き上げた。ちなみに、北京市の労務管理当局は、賃上げ率の基準は10.5%、上限は15.5%という2006年の企業賃金ガイドラインも同時に発表した。統計によると、2005年の北京市の従業員年間賃金は前年比15.7%増加した。

上海市はこの8月に、最低賃金を従来の690元から750元(約11,000円)に引き上げると発表し、上げ幅は8.7%である。

このように、各地の最低賃金水準は大幅に引き上がった。これによって、労働者賃金の大幅上昇を誘発する可能性もある。

最低賃金上昇の背景と影響

中国は最低賃金制度を96年から導入したが、主な目的は労働者保護である。各都市の労務管理当局は、当該地域の事情を考慮して、都市ごとに最低賃金水準を決定し、1~2年に1回見直しする。最低賃金水準は、通常の平均賃金の数分の一に過ぎないが、主に工場で働く低所得層、特に農村から都市部への出稼ぎ労働者に適用される。

最近の最低賃金の大幅上昇の背景として、以下の要因が働いている。第一に、各地域の経済発展と生活レベルの向上である。第二に、都市部の失業率が高く、大卒者の就職難の状況が依然として存在する一方、労働力不足が深刻化しており、特に内陸部の農村から沿海部の都市への出稼ぎ労働者の供給不足は大きな影響を与えた。第三に、社会安定を維持するため、政府は労働者保護をより重視するようになっている。

最低賃金の引き上げは低賃金層のみならず、他の職種の賃金水準にも影響し、企業の給与水準全体に大きな影響を及ぼす。基本給のみならず、社会保障、残業手当などの企業負担を押し上げ、経営コストを圧迫する。また、大幅引き上げを機に、当局は企業への監督、違反に対する処罰も強化した。

日系企業経営への影響

賃金上昇は、中国経済の長期的なトレンドである。経済成長が今後も持続するため、賃金水準の上昇は長期にわたって激しくなる可能性が高い。こうなれば、「世界の工場」の魅力が低下することにつながる。対策を早急に講じなければならない。

中国で展開している日系企業、特に沿海地域に立地し、大量の出稼ぎ労働者を使っている労働集約的産業は、大きな負担増が避けられない。

日系企業にとって、以下の対応策をとることが望まれる。第一に、ビジネススタイルを変え、低コストよりも技術力とブランド力を重視する。第二に、労働集約的生産工程において自動化を推進する。第三に、賃金の安い地域に生産移転し、既存の工場を移転しなくても、拡張投資を周辺地域、あるいは内陸地域で行うなどである。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国で最低賃金が大幅上昇 [200 KB]