企業成長の条件*
研究員 齊藤 有希子
2007年1月
目次
1. はじめに
2. 既存研究の紹介
3. 履歴効果の測定
3.1. 複数期の履歴効果
3.2. 企業規模別の履歴効果
4. 変化率の履歴効果
4.1. 変化率の平均的な動き
4.2. 変化率の履歴効果
5. おわりに
補論A. 観測する時間スケールによる企業規模別変化率の違い
補論B. 規模変数として売上高を用いた履歴効果
補論C. 業種別に見る履歴効果
要旨
企業成長にはどのようなメカニズムが働いているのだろうか。また、成功企業は、どのような成長の過程を経てきているのであろうか。この点を明らかにするため、中小企業のデータベース(各年約50万社)を用い、企業規模(総資産)の変動に関する分析をした。本研究の特徴は、既存研究で見落とされがちな企業成長の「履歴効果」(過去にどのように成長してきたかという成長の履歴が、今後の成長にどのような影響を及ぼすかという過去依存性)に注目した点にある。分析の結果、以下のことが確認された。(1)企業成長には、履歴効果が存在する。(2)多くの企業では、前期に規模拡大したほど、更に規模拡大する確率が高くなり、また、過去に規模拡大を続けるほど、履歴効果が強く働いて、規模拡大する確率が高くなる。(3)一方、規模の小さな企業では、前期に規模拡大したほど、更に規模拡大しにくくなり、続けて規模拡大することが困難である。これらの結果から、企業成長の履歴効果は、企業内部の「調整コスト」により生じているのではなく、「レピュテーション」などの企業外部の要因により引き起こされている可能性が高い。履歴効果が「レピュテーション」により引き起こされていると仮定すると、企業成長には、企業外部との関係(金融機関との関係や企業間の取引関係など)が重要であるが、規模の閾値(総資産1億円程度)未満の企業では、このような外部との関係が確立されていないと考えられる。したがって、中小企業の公的支援として、総資産1億円以下の企業に対して、金融機関との関係や企業間の取引関係の構築のサポートを行うことは有効であると考えられる。
*この研究は、一橋大学経済研究所の渡辺努教授と早稲田大学大学院アジア太平洋研究科の岩村充教授との共同研究に基づくものである。
全文はPDFファイルをご参照ください。
PDF 企業成長の条件 [341KB]
