富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.11 No.1 2007年1月 >
  5. 石油価格上昇の背景と今後の動向

石油価格上昇の背景と今後の動向

主席研究員 武石 礼司

2007年1月

原油価格は、2006年初めのWTI原油で75ドル/バレルという高値をつけた段階から、2006年11月初めにおいては、いったん60ドルを下回るまで低下してきている。現状では価格は一進一退を繰り返しており、原油価格が更に低下することがあるとしても、大幅に低下してかつての20ドル台あるいは30ドル台にまで低下することは困難と見られる。

原油価格の高騰は、世界の景気が順調に推移し、北米及びアジアを中心として世界的にエネルギー需要が増大したことを基本的な要因として、更に、投機資金の働きもあって上昇した。今後、世界経済は、米国を始めとして、いったん調整期を迎えると考えられており、世界的な紛争が生じたりしない限り、80ドルあるいは100ドルを目指すような高騰は当面は生じないと考えられる。短期的な原油供給は充分になされると予測される一方、石油製品需要は着実に増大すると予測できるためである。

石油価格の動向

原油価格は、2006年11月初めの段階において北米指標原油であるWTI(ウェストテキサス・インターミディエイト)原油の価格がバレル当たり60ドルを下回った水準にあり、2006年初めの75ドル/バレル程度という高値から比べると、価格は大きく低下してきている。今後、高騰した原油価格は更に低下するのか、それとも現状を維持するのか、あるいは、再度反騰するのかが大きな課題となる。

原油価格の近年の推移を見ると、2001年の9.11の同時多発テロの発生以降に、世界経済の停滞を反映して、WTI原油の価格はいったん20ドル/バレルを下回る水準となる。その後、およそ半年で原油価格は25ドル/バレルを上回り、9.11以前の水準に回復することになった。次いで、2003年3月には、米軍によるイラク侵攻が行われて、一時的に原油価格は高騰するが、バグダッド陥落が早かったことから、原油価格は30ドル/バレルを下回る水準に下がり、そのまま30ドルを下回る価格に止まるかと思われた。しかし、2003年半ば以降、若干の上下動はあるものの、ほぼ一本調子に原油価格は上昇し続けることになり、2006年初めにはWTI原油で75ドル/バレルという高値をつけるに至る。

原油価格高騰の原因

なぜ原油価格が急騰したのか、また、なぜ2003年以降2006年初めまでの期間に、次々と高値を更新するに至ったのかは大きな問題である。高値を更新し続けた理由としては、世界経済が順調に発展し、エネルギー需要が着実に増大を続け、その一方、石油供給に不安定要因が存在すると見なされたことをあげることができる。今回の原油価格高騰の基本的要因は、この需給関係にあると考えられる。

石油は最終消費者により消費されるまでの間に、原油の生産、輸送、精製、販売といういくつもの段階を経る必要があり、流通のいずれかの段階にネックがあると価格は高騰してしまうことになる。原油生産の部分については、将来的に供給量が充分に確保できるのかという点が大きな課題となっている。枯渇性の資源である石油は、年々生産を続けるとともに、既存生産量が累積し、一方、残存埋蔵量は次第に減少する。いずれは既存生産量が、残存埋蔵量を超える時点であるピークオイルの時点が到来することになる。

短期的な石油供給の課題としては、主要な石油生産地域である中東でのイラク、イラン、パレスチナ、イスラエルを始めとした相次ぐ紛争の発生が大きな不安要因となっている。石油精製に関しては、最大の石油消費国である米国の国内精製能力の増強が停滞する一方、石油需要は着実に米国で増大したために、石油製品の供給不足が懸念される事態が生じた。特に、環境規制の強化が米国内の地域別、州別に進められたことで、石油製品の転用ができず、米国全体としては石油製品の供給量が充分であっても、ある州では不足するという事態も出現して石油製品高が維持され、したがって北米の指標原油であるWTI原油の価格も高値が維持される状況が続くことになった。

しかも、投機資金が商品先物市場である北米のニューヨークの先物取引所(NYMEX)での高値維持に大きな役割を果たした。このように需給要因と投機要因が重なることで、原油高騰が生じたことになる。

原油価格の将来動向

原油の直近の需給の動向(2006年11月)を見ると、北米の夏季のガソリン需要期が終了したことで、原油供給量は充分足りており、世界の石油需要量は8,500万バレル/日程度で横ばいとなっている。このため北米をはじめとして世界の原油及び製品の在庫量が未だかつてないほど多くなっている。イラン、イラク情勢は依然として不安定ではあるものの、原油輸出の面では、中東、ロシア、アフリカ、南米等、主要な原油生産地域で突発的な事件が起きて原油生産量が大幅に減少する事態が生じない限り、供給面での不安は低下していると言える。したがって、2006年の冬季において北米、欧州が暖冬となれば、OPECにおいては年末までの間に原油生産量を削減する必要すら生じると予測できる。

したがって、中東を始めとして世界のどこかで突発的な重大事件が生じたり、イラク、イラン情勢が急変して、原油輸出が滞るといった重大局面が到来しない限りは、原油価格が再度急騰する情勢ではなくなっていると言える。ただし、日本国内の石油価格を見ると、2006年10月の全国平均で、ハイオクガソリンがリットル当たり152円、レギュラーガソリンが141円、軽油(店頭価格)が118円、灯油(店頭価格)が83.5円となっており、8月及び9月よりは低下しているものの、石油元売り企業が原油高騰部分を一部負担するとともに、運輸業者もガソリン及び軽油価格の上昇分を料金に転嫁しきれず、自ら被るという状態が続いている。原油価格が今後も大きく変動するとすれば、その影響は日本の産業に対して極めて大きく及ぶ。今後も石油価格動向を注視していく必要が続かざるを得ない情勢となっている。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 石油価格上昇の背景と今後の動向 [212KB]