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設備投資拡大の持続性

主任研究員 米山 秀隆

2007年1月

キャッシュフローをなお下回る設備投資

02年2月から始まった今回の景気拡大は、06年11月で58ヵ月に達し、バブル景気(86年12月~91年2月、51ヵ月)、いざなぎ景気(65年11月~70年7月、57ヵ月)を抜き、戦後最長の長さに達した模様である。外需主導で始まった今回の景気拡大は、企業収益の増加、設備投資の増加、雇用者所得の増加という形で内需に波及し、成熟段階に入っている。今後も景気拡大を持続できるかどうかのポイントの一つは内需にあるが、以下では内需の重要なファクターである設備投資の持続性について考えてみたい。

設備投資は03年度以降増加を続けており、05年度には前年比7.5%の高い伸びとなった。過去の景気拡大期と比べた時の、現在の設備投資の特徴は、リストラなどが奏功して企業のキャッシュフローが90年代半ば以降ほぼ一貫して増加する一方、設備投資の水準は現在でもキャッシュフローの半分程度に留まっていることである。

バブル景気時には、設備投資がキャッシュフローを大きく上回って増加した(91年のピーク時には設備投資はキャッシュフローの約1.4倍の水準)。これは、バブル期には、企業が借り入れを大きく増やして、設備投資を拡大したことを意味している。しかし、バブル崩壊後はこれが一転して過剰設備となり、その後の景気回復の足かせとなった。

現在、企業は豊富な手持ち資金を設備投資に振り向けており、しかも設備投資の水準はキャッシュフローのなお半分程度のため、キャッシュフローの余力からみて、企業は設備投資を更に拡大できる余地がある。現在はかつてとは異なり、企業はキャッシュフローを手元に残したままでは、手元資金を有効に活用できない企業として、買収の標的とされかねないため、活用を迫られる状況にある。自社内に優良な投資案件がなければ、M&Aの資金として活用したり、そうした案件もなければ増配という形で株主に報いることを要求される傾向が強まっている。

こうした点からみると、企業は今後も様々な面で投資拡大を図っていく可能性が高い。しかも、現在、設備投資が拡大しているといっても、その金額の水準は、バブル崩壊後に一時景気拡大した97年の水準にも達していない。

設備投資の拡大スピードは適正か

このように、キャッシュフローや過去の設備投資の水準からみて、企業はなお設備投資を拡大できる余地がある。しかし、設備投資拡大のスピードが速すぎると、バブル期のように、後になって過剰設備となりかねない。設備投資の行き過ぎは、景気の振幅を必要以上に大きくし、景気を長期にわたって持続させる点で望ましくない。

そこで、現在の投資拡大のスピードが、経済全体の成長力からみて適切なものかどうかを検討してみた。資本ストックの伸びは、中長期的にみれば、経済の期待成長率の伸びと資本ストックの減耗率、資本係数のトレンドによって決まってくると考えられる。この関係から、資本ストックの減耗率と資本係数のトレンドを所与とすれば、今期の設備投資の伸びは、前期の設備投資・資本ストック比率と期待成長率によって決まってくるという関係を導くことができる。すなわち、前期の設備投資の資本ストックに対する比率に対し、今後経済全体がこの程度で成長するという期待成長率が決まれば、今期必要な設備投資が決まるという関係である。設備投資の資本ストックに対する比率が時間とともに上昇すれば、必要な資本ストックが充足される状況となるため、先行きの期待成長率が上昇しない限り、毎年の設備投資の伸びは次第に鈍化していく。

この関係に基づくと、03~05年度の設備投資の増加は、経済の期待成長率が0%から1%へと上昇していく過程で、設備投資の高い伸びが維持されてきたことがわかる。つまり、先行きの成長期待が高まる中で、必要とされる資本ストックがより多くなり、それを満たすために設備投資が増えてきたということになる。05年度の設備投資の伸び(7.5%)は、期待成長率を1%台半ば程度とした場合の伸びに相当する。

現在の期待成長率はおよそ2%と考えられる(企業の期待成長率は1.9%(内閣府「企業行動に関するアンケート調査」06年1月))が、この期待成長率を前提とすれば、06年度の設備投資の伸びは6%程度となり、05年度より鈍化することになる。しかし、実際はこれを上回るペースで増加しており、06年度設備投資の民間見通し平均は8.5%(経済企画協会「ESPフォーキャスト調査」06年11月)となっている。現在の設備投資の伸びは、2%の潜在成長率に見合ったものよりもやや上回った状態にあると判断できる。

2%の期待成長率を前提とした場合、07年度以降の設備投資の伸びは、更に鈍化していく計算になるが、逆に今後も設備投資の伸びが鈍化しないとすれば、期待成長率が3%、4%とより高い水準に移行していくということを意味する。しかしそれは現在の日本経済の実力からみて、必ずしも適正なものとは思われない。今後、伸びは次第に鈍化させつつも、設備投資を持続的に伸ばしていくことが、景気拡大を息の長いものとするための条件の一つになる。ゼロ金利解除後の金利適正化は、こうした観点からも十分な検討を要する。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 設備投資拡大の持続性 [186KB]