富士通総研

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夢実現の為の5つの「キ」を考える!
東京ベイ・メディカルフロンティア構想実現に向けて!

国際医療福祉大学教授・順天堂大学客員教授
阿曽沼 元博

2006年10月

本文

我が人生の師の一人である早稲田大学の故林文彦教授は、物事を成すには「3つのキ」が必要であると筆者に教えてくれた。3つのキとは、すなわち「機」と「器」そして「気」の3つである。まず、第一に「機」とは、「機を見るに敏であるということ」で、常に好奇心と高感度のアンテナを持ち、チャンス(機会)を見逃さない感性を持ち続けることであると理解している。そのためには情報ソースを多く持ち、常に主体性を持ってアクセスし、経験と知識と知恵から育まれる第六感を持って、チャンスを見逃さないことである。情報ソースは多岐に渡るが、一番重要なものは何と言っても人脈であると考えている。五感を駆使して情報処理を行い、第六感で判断し、その判断が間違っていないかを客観的に検証していく。この検証にも信頼できる人のつながりが重要である。

次に「器」とは、「人・物・金の経済資源全ての器を大きく持つということ」で、自分自身の人間としての器を大きくする努力がまず先決であるが、それと共に、組織の器をきちんとする事が重要であると理解している。自分自身がリーダの器を持てれば良いが、謙虚にそして客観的に判断して、必要とあらば、リーダの器となる人材や人財を集め、シッカリとした組織基盤を創り、高質なサービスや商品を提供できる、そして永続可能な組織(器)を創造できなければならない。永続可能とするためには、時代や目標に即した器の改革、すなわち組織改革と新たな環境変革(建屋新築や改築・移転、インフラ整備など……)も恐れず断行することも重要である。

三つ目の「気」とは、「気配りを忘れず、気持ちを一つにして、強い気持ちを持って、気力を振り絞って目標に向かうということ」で、一人ひとりのモチベーションやモラルを常に向上させ、情熱を持ち続けられるチームや組織を形成することとが重要であると理解している。また気とは「夢の共有」と言い換える事もできるのではないかと考えている。夢を形にするために、目的と目標を持ち、その達成のために具体的なアクションプランを策定する。気持ちを一つにして目標達成のためにアクションプランを実行に移し邁進できなければ実効を上げられない。多少の回り道や失敗を恐れず、気落ちせずにやり抜く強い気概を持つことが重要である。

そして、筆者はもう二つ「貴」と「喜」を加えて、「5つのキ」にすることが重要なのでないかと最近感じている。

「貴」とは、「足を常に地に着け、志を高く持ち、崇高な目標を持つこと」で、特に筆者が関わっている医療の世界では、貴重な命を大切に思い、一人ひとりの生活の質を高めるためのきめ細かな支援が非常に重要である。病んでいる人々の支援は並大抵な事ではなく、体力・気力・包容力がなければ続かない。そして支援を高質に保って継続するには何よりも財力が必要であるが、それ以上に重要なのが高い志と感謝の気持ちであろう。また、ある先達の言葉に「愛は理解を深め、理解は愛を生む」という名言があったが、貴という言葉にはこれら全てが包含されているように思える。

更に「喜」とは、「人々に喜んでもらうこと、つまり関わりのある全ての人たちの満足度を高めること」で、企業はもちろんのこと病院や公的セクターなど全てに共通する組織行動の基本であろう。営利組織の活動の目標は「利益追求」で、病院などの非営利組織のそれは「理念追求」であると言われているが、それはあくまでも結果であって、どんな組織であっても活動を永続するための十分な利益は必要であり、利益を得るためには製品やサービスの購入する顧客の満足度を得られなければその目的は達成できない。また高質な製品やサービスを市場に出すためには職員の満足度を高めなければ困難である。

更に、医療の分野では最近「笑いを持つこと」「喜びを感じられること」が重要であると考えている。クライアント(依頼人)である患者さんや家族の方々に、生活全般を通じて、また医療者との関わりを通じて、五感を駆使してこの笑いと喜びを感じてもらい笑顔が出せることの重要性を感じている。この喜という言葉にはこれらのことが包含されている。

前置きが非常に長くなってしまったが、筆者が何故この「機」「器」「気」「貴」「喜」という5つのキを改めて肝に銘じているかというと、2002年3月に29年間お世話になった富士通を、「一生涯医療分野で仕事がしたい」との強い我が儘をお許し頂き、退社して以来、4年間取り組んできた「東京ベイ・メディカルフロンティアセンター設立構想」が実現に向け具体的に動いてきたからである。

「東京ベイ・メディカルフロンティアセンター設立構想」とは、個々の病院が人材確保の面や採算性の面で、単独に持ち得ない高度ながん治療施設を、共同利用型施設というコンセプトで設立しようというものである。CTやMRI、更には最近ではPETなどが多くの病院で次々に購入され、医療サービス競争が繰り広げられているが、これら診断機器であれば、病院も多少の努力で自前での装置購入が可能である。しかし、経験豊富な多くのがん医療に関わる医師たちが切望している革新的な放射線治療技術である「重粒子線治療施設」は、その規模や建設費・運営経費は莫大で少なくとも120億円が必要で、到底一医療機関で設置できるものではない。わが国には千葉県稲毛と兵庫県の2ヵ所に存在するが、それらは大量の公的資金を投入して建設されたが、研究施設の色合いが濃く、また患者さんの身近な医療にするための努力が不十分と言わざるを得ないため、まだ年間500人弱の患者さんにしか利用されていない。日本発の高度治療技術である重粒子線がん治療技術を世界へ発信するためにも東京地域での設置は必須であるといえる。医療関係者の熱い期待を背負っている。

我々は、この重粒子線治療施設(詳しくはhttp://www.nirs.go.jp/index.htmlを参照されたい)を、多くの医療機関の医師達に、そして多くのがん患者さんに身近な医療として活用してもらうために、東京湾岸のしかも羽田空港の近隣地に建設する計画を練ってきた。

本施設は、局所治療(がん組織をピンポイントに攻撃する治療)であるこの重粒子線治療と全身治療(がんは必ず転移するため、全身療法が重要)である免疫細胞療法(詳しくはhttp://www.j-immunother.com/index.htmlを参照されたい)等との集学的治療を目指した施設で、どこの病院でも診療所でも自分達の附属施設として活用可能な施設運営を考えている。また、医師達が患者さんをこの施設に連れて一緒に治療することも可能なオープンな施設としていきたいと考えている。

この計画には多くの賛同者がおり、医師や医療関連企業などが支援してくれていた。しかし、計画が中々実現しなかった大きな理由が、経営を安定化させ継続するために一番重要な安価な土地確保が困難であったからである。羽田の近接地で東京湾岸となるとなおさらである。しかし、今年の3月に神奈川口(川崎市殿町)に我々の希望に合った土地の紹介が川崎市及び川崎商工会議所等からあり、誘致を受けた。正に「機」を得たのである。そして、その「機」を得たおかげで、賛同者の多くの出資を得て、具体化のための事業企画会社である(株)東京ベイ・メディカルフロンティアが発足し、企画のための人材が集結した。これにより「器」が形になり始めたのである。建設にはまだまだ巨額の資金が必要であるが、器は注ぎ口を大きく取って、更なる賛同者を得る努力をスタートした。

2003年に筆者が主宰した「東京ベイ・メディカルフロンティア研究会」は4年間の活動を続けているが、その後研究会を母体としたNPO法人東京地域チーム医療推進協議会が発足し、今回の次行企画会社設立に至った。メンバーは発足時以来の面々である。気概を持って、気持ちを一つにして大きな夢に立ち向かった同志である。我々の計画には始めから「気」は備えていたのである。これからは、更に気を引きしめて、地域や多くの病院との共存共栄を図るための努力を重ねていきたい。

そして、この施設が建設され、営業がスタートした暁には、がん患者やそのご家族のために、そしてわが国有数の施設として成長するために、「貴」と「喜」の志と気持ちを忘れずに、この計画に関わる全ての人々が崇高な熱い気持を持ち続けて活動してゆく事を願っているし、私自身はそのための努力を惜しまない覚悟である。

川崎の自宅にて


我々の活動の一端は下記HPを参照されたい。

http://www.teamnet.or.jp/realtop.asp
http://www.fri.fujitsu.com/jp/modules/popnupblog/index.php?param=3-20060606090729
を参照されたい。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 夢実現の為の5つの「キ」を考える!
東京ベイ・メディカルフロンティア構想実現に向けて!
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