スマイルカーブ化が進む電子計算機・同付属装置
- スマイルカーブ化の再検証 -
主任研究員 木村 達也
2006年7月
要旨
スマイルカーブ化の再検証
スマイルカーブ化現象論は90年代半ばに提唱され、2000年代に入って議論が大きく拡がった。これは、加工組立型製造業を中心とする製品のバリューチェーンの付加価値(率)あるいは利益(率)が、グローバル競争進展のもと、従来は高かった加工組立で低下し、上下流の素材・部品やサービス等で上昇したとするもの(以下では、通常いわれているスマイルカーブ化と呼ぶ)である。
スマイルカーブ化の議論は概念的なものが中心で、実証を伴ったものはほとんどない。筆者は03年に99年までのデータを用い、国内における加工組立型製造業全体と個別6業種1)のバリューチェーンについて、利益率を指標に実証研究(計測年次85、90、95、97、99年)2)を行ったが、その後、加工組立型製造業の中核部品におけるモジュラー化の一層の進展、中国等アジア諸国の台頭、賃金制度の変化などが生じた。これらの変化は、わが国の加工組立型製造業を中心としたバリューチェーンに大きな影響を与えているとみられる。この影響を反映するため、今般03、04年のデータを用い再実証を行った。ここでは特徴的であった電子計算機・同付属装置を中心に実証結果を述べる。
04年の電子計算機・同付属装置の利益は労働分配率圧縮により実現
99年までのデータを用いた実証結果では、スマイルカーブ化は、バリューチェーンの川上から川下へとならべた利益率のカーブ(利益率カーブ)において、加工組立型製造業全体では顕著でなく、個別業種では電子計算機・同付属装置を含む3業種に観察された。しかし90年代後半以降の労働分配率上昇による利益低下の影響を除いた利益率カーブでは、スマイルカーブ化は電子計算機・同付属装置にのみにみられた。したがって通常言われているスマイルカーブ化は、電子計算機・同付属装置のみに生じていたと言える。
04年までのデータによる再実証の結果では、04年の利益率カーブにスマイルカーブ化が観察されたのは、加工組立型製造業全体と、個別業種では電子計算機・同付属装置のみであった。また労働分配率変動の影響を除去した利益率カーブでは、加工組立型製造業全体にはスマイルカーブ化は観察されなかった。しかし電子計算機・同付属装置では、03年と04年の間にスマイルカーブ化の大きな進展が観察され、電子計算機・同付属装置自身の利益率は04年に0.0%となった。これは電子計算機・同付属装置では04年に、労働分配率の圧縮によって、かろうじて国内生産の利益を上げていたことを示している。(「電子計算機・同付属装置の利益率カーブの計測結果」グラフは下記PDF参照)
懸念される国内生産の持続
電子計算機・同付属装置の03年から04年への利益率の変動状況をより明確にするため、利益率変動の要因分解を行った。その結果は、03年比で04年に電子計算機・同付属装置での利益率を押上げている要因は、労働分配率の低下であることが確認された。その一方で、設備投資の増加を背景としているとみられる減価償却費の増加と、いわゆる企業消費である家計外消費支出(出張に伴う宿泊・日当、交際費、保健衛生医療費等の福利厚生費からなる)の増大が、利益率の主な引き下げ要因であることがわかった。これらの引き下げ要因は、労働分配率の低下による利益率の押し上げ(03年比で04年に3.8%)のほとんどを打ち消している。
現在の景気の拡張期が戦後最長の継続を視野に入れ、また団塊の世代の退職を控えた採用意欲の高まりから、労働市場がタイトとなっている状況を考えると、電子計算機・同付属装置でも今後労働分配率が上昇する可能性が高い。こうしたなかで、電子計算機・同付属装置の国内生産が利益を上げるためには、労働分配率上昇による影響を打ち消すだけの減価償却費や家計外消費支出の削減等が必要となる。
- 民生用電子機器、民生用電気機器、電子計算機・同付属装置、通信機械、乗用車、トラック・バス・その他の自動車
- 木村達也2003「わが国の加工組立型製造業におけるスマイルカーブ化現象 - 検証と対応」富士通総研経済研究所『研究レポート』No.167参照
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