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中国でのCDM実施における課題

主席研究員 武石 礼司

2006年7月

要旨

2005年10月から、中国では、クリーン開発メカニズム事業(CDM)の実施を促進するための「クリーン開発メカニズム事業運行管理弁法」が施行された。2005年のモントリオールにおけるCOP11で、CDM実施の詳細規定が決定されており、2008年の第一約束期入りを前にして、いよいよCDM実施に向けた本格的な取り組みが中国でも行われる必要が生じている。ただし、これまで中国でのCDM実施には、世界各国とも手間取ってきた。しかし、今回の新運行管理弁法によりHFC及びPFC類のフロン系のCDMが認められたことで、メソドロジーが承認済みで、かつ、効率良く温室効果ガスが削減できるCDM案件の実施の目処が立ったことになる。中国では、中央と地方との情報格差も大きいため、CDMの促進に向けて、日本の政府が果たすべき役割は極めて大きい。多様なレベルでの対話を通じ、CDMプロジェクト実施という成果を出すことが求められている。

中国でのCDM実施に向けた制度改革

中国政府は、京都議定書に定められた温室効果ガス排出量の削減のための制度であるクリーン開発メカニズム事業の実施を促進するために、2005年10月12日より改正「クリーン開発メカニズム事業運行管理弁法」を施行した。これに伴い、前年の2004年6月に制定していた「クリーン開発メカニズム事業運行管理暫定弁法」(暫定ルール)は廃止された。

新運行管理弁法により、CDMで得られたクレジット売却益を国と企業間で分配する際の分配率が具体的に規定された。

また、CCSが地球温暖化ガス濃度の安定化に向けて導入されると、地球温暖化防止シナリオも変ってくる。2100年の地球温暖化ガス濃度の安定化水準(550ppm想定)に関しても、より低濃度の想定が可能となる。今次IPCC総会でも、米国及びEUの代表的立場のオランダが、CCSを用いたCO2濃度のより安定化シナリオ(450ppm)を示した。

その配分は、次のとおりである。

  1. HFC及びPFC類プロジェクト : 国家は排出削減量の譲渡収益の65%を得る。
  2. N2O類プロジェクト : 国家は排出削減量の譲渡収益の30%を得る。
  3. 本弁法第4条で規定する重点領域及び植林等のCDMプロジェクト : 国家は排出削減量の譲渡収益の2%を得る。

これらCDMプロジェクト実施により中国政府に分配される収益は、気候変動に関する活動を支援するために用いられるとされ、具体的な徴収及びその使用方法は、財政部、国家発展改革委員会(NDRC)等の関係部門が別途制定するとの方針が表明された。

また、得られる課金の使用方法について、NDRCの担当者は、「基金を作り、温室効果ガス排出量の削減を進めるための、キャパシティビルディングの目的に使用する計画である」と表明している。このように方針が定まったことで、中国でのCDM実施に向けた機運も高まることが期待されている。

日本企業の中国でのCDM実施の可能性

2005年末開催のモントリオールのCOP11で、CDMに関する詳細規定が決まった。世界的にも、CDM案件の発掘に、国としては京都議定書の批准が行われていない米国、オーストラリアといった国の企業及び地域が、積極的に動き始めている。

中国においても、CDMへの取り組みは、2001年に「マラケッシュアコード」が発効して以降続いてきており、早くから中国でのCDM実施に向けた諸外国による検討はなされてきた。今回、2005年の中国の新弁法施行により、HFC及びPFC類のフロン系のCDMが認められたことは、一歩前進であり、多量のクレジット(CER)を入手できる可能性が出現したことになる。

しかし、2005年末でみて、CDM理事会の承認済みとなった世界全体のプロジェクト63件中、中国は3件に止まっている。中国は、CDM実施のポテンシャリティが極めて高いだけに、中国での実施に対するホスト国としてのサポートが少ない点が阻害要因となってきたと言わざるを得ない。同じアジアでも、インドは既に63件中17件を占めており、中国との取り組みの差は歴然としている。

CDM理事会の承認済みとなった中国の3件のうち、1件はオランダが実施した風力発電案件(Huitenqxile市)である。もう1件は、英国が実施した埋立処分場ガス回収・発電(Nanjing Tianjingwa市)であり、他の1件は、同じく英国が実施した小型水力発電(Yuzaikou市)である。

日本が承認を得たCDM案件は63件中11件であるが、取り組んだ国としては、インド、韓国、ブータン、チリ、アルメニア、ブラジル、アルゼンチンの7ヵ国であり、中国では、まだ1件もCDMが進捗していない。

ただし、CDM理事会の承認はまだ得られていないが、日本政府の承認済みとなったCDM案件は、中国に関しては2件存在している。2件とも、HFC23破壊のプロジェクトであり、中国政府もホスト国としての承認を既に行っている。これらプロジェクトを進めているのは、1件は、JMD温暖化ガス削減(株)であり、他の1件は、三菱商事と新日本製鉄となっている。

そのほか、基金を集めてCDM / JIを実施する機関である日本カーボンファイナンス(株)(JCF)が、中国との間でCMM(炭鉱メタン)回収案件を進めている。既に、購入契約(ERPA : Emission Reduction Purchase Agreement)が、Shanxi Jincheng Anthracite mining GroupとJCFとの間で締結されており、CO2換算で200万トンの炭鉱メタンの回収が行われる予定となっている。炭鉱メタンの排出量は多く、排出場所も多いだけに、今後の取り組みが極めて注目される。

ただし、中国は現在でも、CDM事業は基本的に政府間のプロジェクトであって、企業間のものではないという立場をとっており、例えば、CDMプロジェクトの決裁時に国外の買取り先が決まっていない場合には、排出削減量は中国政府の口座に計上されるとしている(新運行管理弁法第15条2)。中国当局にCDM実施を促進するよう仕向けるためには、日本側においても、政府の後押しが是非とも必要であることがわかる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 中国でのCDM実施における課題 [220 KB]