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生産性の国際比較 : 追いつけるかそれともとり残されるか

グローニンゲン大学経済学部教授
米国コンファレンスボードコンサル事業部長
バート・ファン アーク

要旨

米国がこの10年間でサービス部門における生産性をかなり向上させたのとは対照的に、ヨーロッパと日本はサービス部門における生産性の向上において立ち遅れていることが、全要素生産性(TFP)の寄与分解による分析から明らかになった。また、このような格差が現れた根本原因はICT(情報通信技術)の利用が効率的であったか否かであり、ICT財そのものの生産性格差はさほど影響していないこともわかった。したがって、ヨーロッパと日本では、製造業を中心としたR&Dの補助枠拡大といったような、従来型の狭い意味でのイノベーション政策はもはや有効たりえない。むしろ、技術的・物理的な社会インフラを改善し、労働力の質を高め、継続的な構造変化へのインセンティブを与えるような、広い範囲でのサービス部門再編が必要となろう。

ますますグローバル化が進む経済環境においては、成長がどのように投資及びイノベーションと関連しているかについて、各国が相互の経験に学ぶことが重要である。特に、日本とヨーロッパにとって、成功している米国との比較は重要である。米国と比較して、ヨーロッパと日本の1995年以来の成長に関する問題は、新しい産業構造への遅い(遅すぎるといってもよい)適応過程のあらわれであると筆者は考えている。

生産性の水準を比較すると、単位時間当たりGDPに関して、ヨーロッパは米国よりも速い伸びを維持している(ただし1995年までであるが)。1995年に米国との生産性の格差がなくなった後、生産性は著しく低下し、格差は更に拡大した。同時に、1人当たりの平均所得(これは生活水準を測る最終的な尺度であるが)は、ヨーロッパにおいては1970年代半ば以降、米国の水準のおよそ75 - 80%に止まってしまっている。欧州におけるこのような米国との所得と生産性の格差は、1970年代半ば以降の労働力参加率の深刻な低下によるものである。日本では、時間当たりGDPのキャッチアップは1990年代後半まで続いたが、生産性は米国水準の(約)75%を決して超えることはなかった。そして、2000年以降は若干低下さえしてきている。また、相対的に高かった日本の労働力参加率が低下し始めたので、日本と米国との所得格差(1人当たりGDP)の縮小は、1990年辺りでは既に鈍化してきていた。最終的な結論は次のとおりである。ヨーロッパの実質労働生産性成長率は負の外れ値であり、米国と日本はそうではない。しかし、日本とヨーロッパはいずれも持続可能な経済回復のために、より生産性の高い雇用を創出する必要がある。

ヨーロッパと日本の生産性の低下原因をより理解するためには、労働生産性を、まず資本ストックと全要素生産性(TFP)の寄与に分解し、次に各産業部門の寄与に分ける必要がある。TFPに関する最も重要な事実は、情報通信技術(ICT)生産における資本深化や資本改善の結果とは考えにくい「その他のTFP」の急速な伸びである。米国における「その他のTFP」の伸びは、これまでのところヨーロッパや日本が太刀打ちできないでいる、米国の新技術のより生産効率の良い利用もしくは応用の結果であるように思われる。労働生産性の伸びに対する各産業部門の寄与については、下のグラフが示すように、1995年以降の労働生産性の成長に最も大きな影響を与えてきたのは、米国の市場サービス部門における生産性の急速な伸びであった。これに対し、製造業部門の労働生産性に対する寄与はより限定的な影響しか与えていない。

米国とは対照的に、ヨーロッパでは市場サービス部門の生産性はほとんど成長しなくなってしまったが、日本では1995年から2000年という非常に悪い時期の後半になって、幸運にも何とか改善が見られた。しかしながら、生産性の伸びは米国を大幅に下回っている。生産性の伸びに対する市場サービス部門の寄与を更に分解してみると、ヨーロッパと米国の格差が最も大きいのは、貿易と金融を中心とする6つの産業部門である。これに対し、日本が生産性で大きく劣るのは小売貿易と卸貿易部門のみである。他の産業分野では米国との格差はかなり小さく、いくつかの産業(通信、専門的サービス、保険)では、日本の生産性の伸びは優位でさえある(以下のグラフを参照)。

以上から、次のことがいえる。すなわち、ヨーロッパと日本の貿易部門における米国との生産性の格差は、両者ともに、情報通信技術産業の最大の投資家となりうるサービス産業で遅れをとっていることに起因している。このことは、イノベーション政策に対して重要な示唆を与える。例えば、製造業をR&Dの集約的投資のターゲットにしても、サービス産業にとってはあまり意味がないということである。どうやら、サービス分野におけるイノベーションを促進するためには、ターゲットを絞り込むタイプの一般的なイノベーション政策は有効ではなさそうである。そのかわり、労働力の質を向上させるための投資、物理的・技術的なインフラへの投資、及びサービス・供給者・クライアント間の更なる競争と革新的な相互作用を通じたバリュー・チェーン改善のインセンティブ付与といった幅広い政策によって、情報通信技術の利用の生産性をより高める必要がある。

全文はPDFファイルをご参照ください。

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