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日本経済 内外課題の解決策 - 第18回 富士通総研経済研究フォーラム -

富士通総研経済研究所では、2006年1月25日(水曜日)経団連会館において第18回フォーラム「日本経済 内外課題の解決策」を開催した。今回のフォーラムは二部形式にて実施し、第一部では「住宅産業リストラクチャリングの鍵」のテーマのもとに2人の研究員による研究報告が行われた。また第二部では「日本企業の中国市場戦略再考」のテーマで、3人の研究員による研究報告が行われた。研究発表に対する会場からの質問等も多く、極めて盛況のうちに幕を閉じた。

第一部 : 住宅産業リストラクチャリングの鍵

第一部では、まず米山が「マンションの終末期問題と新たな供給方式」というテーマで発表した。全国のマンションストックは500万戸近くに達するが、今後はこれらの老朽化が急速に進展していく。老朽マンションの処理については、これまでは建て替えを円滑に進める方向で、政策措置がとられてきた。しかし、容積率を割り増した上、保留床を分譲することによって費用を賄う方法で建て替え可能なマンションは限られている。

今後、建て替えができずスラム化する可能性があるマンションは潜在的に多数あるとみられる。このようなマンションについては、区分所有権を解消し、建物を解体して土地を売却する処理方法が現実的となる。解体費用さえ賄えないマンションも続出する可能性があるが、区分所有権解消の枠組み作りに加え、解体費用の公的支援が必要になる。

このような問題が発生するに至ったのは、そもそも共同住宅を区分所有という形態で保有させるという仕組みに原因があったと考えられる。マンションを区分所有権の分譲で持たせる仕組みは、不動産価格上昇が持続する中、一戸建ての取得がかなわない層にも、持ち家保有のメリットを享受させる仕組みとして機能してきた。

しかし現在では、もはやマンションを区分所有するメリットは失われており、それどころか、区分所有権がマンション終末期の処理の足かせとなっている。今後は、所有より利用を重視した共同住宅の供給システムの普及が必要である。定借マンションや証券化を活用した賃貸マンション供給があり、今後はこれらを政策支援していくべきである。

続いて、梶山は「木材関連産業の付加価値創造の道筋」と題し、木材関連産業の再生策について発表した。木材は日本にもっとも豊富に存在する資源であり、地域資源をいかに有効に利用するかが地域再生の出発点であるとすれば、木材関連産業こそがその中核的役割を果たしうる。ところが、日本の木材産業の生産性は林業先進国の3分の1以下であり、価格・品質などで問題だらけである。また、その材のメインユーザーである住宅の木材使用量は少なく、30年で建て替えるなど品質の面でも劣る。

木材は、「重くかさばるわりに単価が安い」特性から、サプライチェーンマネジメントこそが、競争力を左右する最大の要因となる。ところがわが国の木材産業の流通は木材の特性に反した多段階流通であるのみならず、小規模製材工場が量産の規格品を製材するなど、昭和30年代の構造から抜け出せないできた。この結果、日本の製材品価格は欧州の3倍に達するほど割高で、品質的にも問題が多い。

その根底にあるのが、原材料である丸太の供給が安定的になされないことである。このため、製材工場は国産材を前提としては投資ができず、零細構造から抜け出せないできた。したがって、木材関連産業の再生のためには、まずは、林業に近代的な経営手法を取り入れ、安定供給体制を構築していくことが前提となる。

そこで、そのパイロットプロジェクトとして始めたのが「富士森林再生プロジェクト」である。実験の結果、生産性は向上し、林業の可能性が大きいことが明らかになった。

日本の森林資源は戦後植林されたものがほとんどで、これから本格的な利用期を迎える。木材は、直径が20cmを超えると生産性が飛躍的に増加することから、林業・木材産業再生をはかり、これを地域再生の突破口とする絶好の機会が訪れている。

これをうまく利用することができれば、国土の3分の2を占める森林の維持管理が自立的に進展するようになり、財政再建、景観向上にも貢献しよう。

第二部 : 日本企業の中国市場戦略再考

まず、朱が「中国経済の対外依存構造の現状と課題」について発表した。中国の経済発展により、対外依存が拡大している。対外依存から生じた貿易摩擦と資源の輸入依存は、中国経済にさまざまな問題をもたらし、経済成長を制約する要因にもなっている。

国際環境変化は、中国経済自身の変化から生じている側面が大きい。外需依存、大量生産・大量輸出の成長パターン、輸出の低付加価値化、資源の大量消費と大量輸入などの問題は、貿易摩擦と資源の輸入依存を深刻化させている。

持続的経済成長を維持し、外需依存、資源の輸入依存などの問題を克服するため、国内経済構造、産業構造を調整する必要がある。まず、経済成長のパターンの転換として、内需の拡大が必要となる。また、産業構造の調整として、輸出製品の高度化、エネルギー・資源消費の節約が重要である。更に、金融政策、産業政策、価格調整など各分野の政策協調が不可欠である。ほかにも、貿易摩擦の回避と資源獲得のための対外的なアプローチも積極的に進めなければならない。

貿易摩擦と資源の輸入依存により、中国政府は既に構造転換の重要性を認識し、政策面では内需重視などの成長パターンの転換、産業構造の調整などを第11次5ヵ年計画で反映させている。

中国経済の対外依存、経済摩擦、構造調整などにより、中国に進出する日系企業は、現地生産と輸出、対中投資の業種選択などの影響を受けると同時に、現地市場での販売、省エネと資源節約型の技術移転などのチャンスにも恵まれる。日系企業は中国の経済・産業構造の調整、政策変更に早急な対応が必要となる。

次に柯は、「日本企業の対中投資 新たな選択」というテーマで発表した。中国経済の高成長を背景に、外国企業の対外直接投資は中国に急速に集中している。かつて毎年300~400億ドルの対中投資は今600億ドルにのぼる。その中身を考察すると、かつて中国を輸出拠点とする生産工場のような投資に加え、中国の市場開放に伴い、中国国内市場を狙う投資が増えている。

日本企業は自らの国際競争力を高めるために、中国の廉価な労働力を利用すべく、中国への直接投資を行ってきた。2001年12月、中国は世界貿易機関(WTO)に加盟し、より一層の市場開放を約束した。それをきっかけに、日本企業の対外直接投資は中国へと更に集中している。その中で、中国経済は9%以上の高成長を続けているが、貧富格差の拡大、エネルギー不足、環境問題の深刻化など中国事業リスクは高まっている。このような背景の中で、日本企業は直接投資を中国に集中させるか他の国に分散するか、選択を迫られている。

日本企業としては、その経営資源を整理し、中国とその他の国や地域との投資環境の比較を踏まえた新たな投資戦略の構築が求められている。結論的にいえば、投資を分散することは資源配分の効率化の観点から必要なことであるが、それでも投資にはリスクが付き物であるため、中国への投資を含めて海外での投資はこれまで以上にリスク管理が重要になる。

また金は、「中国市場戦略の新展開」と題し発表した。「生産拠点」として利用してきた中国は、市場として活用される段階に入った。したがって、日系企業のマネジメントも「工場管理」から「市場マネジメント」へとシフトしている。中でも地場消費者やユーザーに対するブランド戦略・イメージ戦略が新しく求められている。

中国市場における日系企業のイメージは製品イメージに遥かに及ばない。これは、製品広告や技術PRに専念した日系企業が、企業PR(Corporate Communication)を効果的に行ってこなかったことによる。特に、(1)消費主義の台頭、(2)多様化するメディア、(3)ヒートアップするCSR運動といった「生態環境」が激変している中国ではなおさらである。

日米欧・地場企業に対するケーススタディから、日系企業には、(1)企業PRに控え目で防衛的であること、(2)経営資源投入が少なく、外部PR会社の活用も少ないこと、(3)PRプロの活用やPR活動に対する評価も着実に展開されていないこと、(4)B2B企業は企業PRに対する認識が薄いこと、などの課題が確認される。もっとも、昨年の「反日デモ」を契機に日系企業の一部には、中国でのPR活動を強化する取組みが見られる。

以上の分析やケーススタディから、日系企業への示唆として、(1)立体的なPR戦略、(2)統合された組織戦略、(3)現地中心のPR活動、(4)最小限の投入で最大限の効果を図ること、(5)社内でPRの役割を自覚すること、などが求められる。

研究報告

13時10分~13時20分 開会挨拶
経済研究所理事長 島田 晴雄
 
第一部 : 住宅産業リストラクチャリングの鍵
 
13時20分~14時 「マンションの終末期問題と新たな供給方式」
主任研究員 米山 秀隆
14時~14時40分 「木材関連産業の付加価値創造への道筋」
主任研究員 梶山 恵司
14時40分~14時55分 休  憩
 
第二部 : 日本企業の中国市場戦略再考
 
14時55分~15時35分 「中国経済の対外依存構造の現状と課題」
主席研究員 朱 炎
15時35分~16時15分 「日本企業の対中投資 新たな選択」
上席主任研究員 柯 隆
16時15分~16時55分 「中国市場戦略の新展開」
上席主任研究員 金 堅敏
16時55分~17時 閉会挨拶
富士通総研社長 長谷川展久

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 日本経済 内外課題の解決策 - 第18回 富士通総研経済研究フォーラム - [190 KB]