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デンマークの自治体改革と地域ブランドへの取り組み

主任研究員 生田 孝史

要旨

急速・着実に進むデンマークの自治体改革

2007年1月1日からデンマークの国内地図が大きく塗り換わる。同日から実施される地方自治体改革によって、現在の14郡(日本の県に相当)が5地域(リージョン)に再編され、271の地方自治体(日本の市町村に相当)の数は98にまで減少する。2005年11月の統一地方選挙によって選出された新たな自治体の議員が、2006年末まで旧自治体の議員と共存しながら、移行作業を進めているところである。

自治体改革の目的は、市の規模拡大と郡(リージョン)の権限縮小による地方自治の効率化とサービス向上である。郡からリージョンへの再編によって、従来の郡の所管業務は、病院運営を除いて、市あるいは国に移管され、課税権も失う。新たな市が広範な住民サービスを担当することになる。

デンマークの自治体改革の特徴は、そのスピード感である。2004年1月に政府の特別委員会から報告書が提出され、同年6月には地方自治体再編の骨子案が国会を通過し、2005年夏には関連法案が可決された。

この自治体改革は、デンマーク全土で一斉に実施される。郡の再編は強制的であるが、地方自治体の再編(合併)は、自発的な自治体間の協議によるものとされた。しかし、約半数の地方自治体が人口1万人以下であるのに対して、新しい市の人口規模の下限が原則3万人と設定されたため、多くの自治体が合併相手を探すこととなった。自治体間の自発的な合併協議の期限は2005年1月までであったが、大半の自治体が近隣との合併を果たした。政府による仲介が行われた例は数件であり、救済措置として3万人以下の自治体に義務付けられた近隣自治体との行政協力の締結事例も、島嶼部と首都近郊の事例にとどまった。

地域ブランド事業への影響の議論

近年、欧州では、地域イメージのブランド化に対する関心が高まっている。その背景には、グローバル化に伴う地域間競争の激化がある。ブランド化によって他地域との差別化を図ることで、ヒト・モノ・カネを誘引し、地域の競争力を高めようというのである。デンマークも例外ではなく、デンマーク国内の自治体の多くが、地域イメージのブランド化に積極的に取り組んでいる。

デンマークの地域ブランド事業では、居住地としての魅力が重視されることが多い。都市部の人口増に伴って地価が高騰し、郊外に住宅を求める傾向が強まっているためである。面積が小さいデンマークでは、多くの地域が「通勤圏」であり、都市居住者を奪い合う構図となっている。日本より高い出生率(1.7~1.8で推移)も住宅市場牽引の一因だという。

自治体改革によって再編されるデンマークの各自治体は、これまでの地域ブランド事業を再構築する必要に迫られる。市域の拡大、地域資源の多様化、想定するターゲット(市場)に応じて、地域の価値のポート・フォリオを行わなければならない。デンマークの自治体合併は、核となる都市が周辺の地域を吸収するパターンが多い。このため、新たな地域イメージは中核都市を主体としたものとなるという見方が一般的である。一方、吸収される周辺地域のアイデンティティをどのように保つかについては、議論が始まったところである。地域ブランドの再構築は、新自治体にとって重要な検討事項の一つとなっている。

日本の市町村合併でも地域ブランドを重視すべき

デンマーク同様、日本でも市町村合併が進行中である。市町村数は1999年3月末の3,232から、合併支援の最終期限の2006年3月末には1,821になる見込みであり、7年間で市町村数が40%以上も減少する計算である。

ガイドラインのみを提示して急速な合併を促したデンマークとは異なり、2000年の地方分権一括法施行から5年越しとなる日本の合併支援施策は、合併特例債などによる手厚い財政措置が特徴である。人口規模の基準なしに、自主的な合併を促したため、小規模でも合併しない自治体がある一方で、財政支援目当ての合併も少なくない。しかし、合併に伴う財政支援は一時的なものである。国から地方への十分な財源移譲が期待しにくい状況を鑑みると、合併したからといっても、従来の大規模開発型の地域活性化施策に依存すれば、将来の財政不安を招き、合併効果を損ねることが懸念される。

すなわち、合併自治体こそ、真剣に地域ブランド事業を検討する必要がある。他地域との差別化による地域経済の活性化、及び新たな自治体のアイデンティティの確立による住民満足度の向上という面からも、地域ブランド事業の取り組みは極めて有益である。

日本でも、最近では地域ブランドに対する関心が急速に高まり、従来の地産品ブランド支援から包括的に地域イメージをブランド化する事例も増えている。しかし、残念ながら、合併自治体の取り組みはまだそれほど活発ではない。合併自治体による地域ブランド事業の取り組みは、中長期的な地域競争力の向上によって我が国の構造改革を後押しすることに寄与する。まずは、地域の価値を再確認するために、合併地域内における自治体、企業、住民による協働体制の構築が求められよう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF デンマークの自治体改革と地域ブランドへの取り組み [190 KB]