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ビジネス・ブログの本格的な普及

主任研究員 浜屋 敏

2006年1月

要旨

大企業のマーケティングにも使われはじめたブログ

インターネット上で手軽に時系列形式で情報発信することのできるブログは、当初は個人の日記作成ツールとして使われることが多かった。ビジネスで利用されはじめたときも、最初は社長の日記やプレスリリースといった比較的単純な情報発信が主な用途であった。しかし、最近では多くの企業がマーケティングのツールとしてブログを利用している。

日本の大企業が本格的にブログを商品のプロモーションに活用した最初の事例は、日産自動車の「TIIDA BLOG」であった。TIIDAは「コンパクトと上質の融合」をコンセプトとした車で、サニーの後継車とも言われるほど日産にとっては重要な車である。2004年9月の発表と同時に、専門のブログサイトも開設された。公式ホームページと同じように自由に画像などを使うことができ、しかも公式ホームページやカタログでは伝えにくいシートの座りごごちや室内の体感的な広さといったスペック化しにくい要素を、顧客の視点に近いところから伝える手段としてブログが活用されている。

その後、日産はエクストレイル(SUV)やサファリ(オフロード車)でもブログを開設・運営しており、富士写真フイルムの「NATURA BLOG」(銀塩カメラ)やリコーの「GR BLOG」(デジカメ)など、顧客関与度の強い商品のプロモーション手段としてブログが使われる事例が多くなってきた。

ビジネス・ツールとしてのブログの特長

ビジネス・ブログが増えてきたのは、静的なホームページやメルマガといった従来のコミュニケーションツールと比較して、ブログには以下のような4つの大きなメリットがあるからだと考えられる。

(1)更新の容易さ : ブログは個人でも容易に使えるツールであり、簡単にホームページを作ることができる。つまり、ブログはCMS(Contents Management System)として使うことができる。情報を変更するためにわざわざ外部の制作会社に依頼する必要がないため、特に専門の技術者をおく余裕のない中小企業には大きなメリットである。

(2)高い集客効果 : ブログはトラックバック(一種の逆リンク)や更新自動通知の機能を備えており、被リンク数が多くなるためにSEO(Search Engine Optimization)効果が高く、検索エンジンの上位に表示され、多くの人の目に付きやすい。また、RSS(Rich Site Summary)による更新情報の通知機能によって、利用者の訪問を待つだけではないプッシュ型に近い情報発信も可能である。

(3)読み手と同じ視線からの情報発信 : ブログはもともと個人で使われていたということもあり、企業の一般的な公式サイトとは違い、書き手のイメージが見えやすい。読み手にとっては、企業の中の担当者の「顔」が見えることによって、情報の中身に親しみを持つことができる。書き手にとっても、数値では伝わりくい自動車やカメラの性能などを自由な形式で表現することができる。

(4)双方向コミュニケーション : ブログは、コメントやトラックバックの機能によって、従来の静的ウェブサイトよりも双方向コミュニケーションに適している。「NATURA BLOG」ではトラックバックの機能を利用して、NATURAで撮影した写真のコンテストを行っている。また、トラックバックはコメントや匿名掲示板とは違って情報発信元を容易に特定できるため、情報の信頼性も高い。そのため、トラックバック機能を利用して消費者の声を集め、それを商品開発に活かすこともできる。

全社的なサポート体制やリスク管理等が重要

もちろん、ブログをビジネスに活用するには限界や留意点もある。まず、技術的に更新が容易だからといって更新する情報の中身が増えるわけではない。商品によっては読み手に伝える情報が不足しているために、ブログを更新できなくなる場合も少なくない。ブログは情報の鮮度が一目でわかるため、古い情報が更新されずに掲載されていると読み手にマイナスのイメージを与えてしまう。更新するための情報を集めるためには、例えば広報室など特定の部署だけでブログを運営するのではなく、開発者や販売現場など全社的なサポートが欠かせない。

他のメディアによるプロモーションと同じように、ブログの直接的な売上への貢献を定量的に測定することは難しい。しかし、日産自動車や富士写真フイルムの事例では、販売現場などから得られる情報によって、担当者はブログの売上への貢献について確かな感触を持っているようである。ブログの評価にあたっては、売上への貢献だけではなく、ページビューやクリック率、トラックバック数といった定量的な指標に加えて、開発者の士気や企業・商品のイメージに与える効果などを定性的に把握することも重要になるだろう。

ブログを使えば公式サイトやメルマガが不要になるわけではない。公式サイトは更新の少ない正確な情報の提供、メルマガは顧客の属性に合わせてカスタマイズされた情報発信、といった使い分けが効果的だろう。また、例えば、見込み客に対する販売前のプロモーションにはブログを活用し、既存顧客の囲い込みにはSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用するといった役割分担も考えられる。

最後に、ブログによる双方向のコミュニケーションは、場合によっては企業や商品の悪いイメージを広げてしまうことにもなりかねない。多くの企業は、匿名のコメント機能は利用せずに、発信元を特定できるトラックバック機能を使うことでコミュニケーションをコントロールしようとしているが、完全なコントロールは不可能である。その意味で、双方向性をもったビジネス・ブログにはリスクもある。しかし、事前的なデザインとともに情報発信後の事後的な対応を重視することによって、リスクを管理しながら双方向コミュニケーションのメリットを得ることもできるはずである。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF ビジネス・ブログの本格的な普及 [225 KB]