低迷する教育の情報化
主任研究員 前川 徹
2006年1月
要旨
教育の情報化の実態等に関する調査結果
文部科学省が2005年8月2日に発表した平成16年度の「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によれば、2005年3月末時点における公立の小中高校のインターネット接続率は99.9%、高速インターネットへの接続も81.7%に達している。この数字だけをみると、教育の情報化は順調に進んでいるように見える。しかし、他の数字を見てみると実態はそうではない。例えば、教育用コンピュータの設置台数は1校当たり平均43.2台、教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は8.1人 / 台であり、普通教室のLAN整備率は44.3%でしかない。
つまり、この数字から想像される実態は、パソコンはコンピュータ教室にあって、ITを学ぶものになっている学校が大半だということである。これではITを教育することはできても、教育にITを活用していることにならない。
e-Japan戦略では、2005年度末までに教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数を5.4人にし、すべての教室をLANで接続することを目標にしているのだが、残された月日を考えると、どう考えても目標達成は不可能である。
米国における教育の情報化の現状
一方、米国の状況を米教育省発表の統計でみると、1995年時点で8%程度であった教室のインターネット接続率は、1990年代後半に全米各地に広がった「ネットデイ」と呼ばれる地域ボランティアによる学校のインターネット環境の整備活動によって急上昇し、2003年に93%に達している。
また、インターネットに接続されたパソコン1台当たりの児童生徒数は1998年の12.1人 / 台から2003年には4.4人 / 台へと大幅に改善されている。前述のe-Japan戦略が目標とする5.4人 / 台は、2001年に達成しており、現在は更に進んだ環境にあることがわかる。
こうして整備されたIT環境を教育や学習で活用する取組みも進んでおり、2005年8月にPewInternet&AmericanLifeProjectが発表したレポートによれば、インターネットを利用している米国の生徒(調査対象は12~17歳)の88%とその保護者の83%は、インターネットが学校での学習に役立っていると評価している。
教育の情報化に金を惜しむべきではない
教育の情報化には大きく3つの効用がある。第1の効用は、児童生徒がITの活用方法に慣れ親しみ習熟することである。情報化の進展によって、パソコンなどの情報機器を文房具のように使いこなすスキルを身に付けることが求められる社会になっている。こうしたスキルはできるだけ早い段階で修得することが望ましい。
第2の効用は、ITの仕組みに興味をもつ児童生徒が出てくることである。日本のIT産業は、そうした子供たちが担うことになる。もしかするとその中から天才的なIT技術者が生まれるかもしれない。
第3の効用は、ITを活用することによって児童生徒が理解しやすい授業を実現できることである。ITのもつ画像や音声による表現力、双方向性を活用すれば、分かりやすく魅力のある授業ができることはいくつもの先進事例が証明している。
第1と第2の効用は「ITを教えること」によって得られるが、第3の効用は「ITを授業で活用」しなければ得られない。
日本における教育分野の情報化の遅れを見ると、教育にITは不必要だと考えている教育関係者が多いのかもしれない。しかし、教育の重要性と教育の情報化がもたらす効果を考えれば、早急にPCの増設、普通教室のLAN整備を進める必要がある。国と地方は巨額の債務を抱えており財政が厳しい状況にあるからといって、教育の情報化に必要な金は惜しむべきではない。
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