最適プロパテント政策 - 特許の権利範囲と累積的技術革新に関する実証研究 -
主任研究員 絹川 真哉
2006年1月
目次
1.序
1.1. 望ましい特許制度とは
1.2. 本研究の特徴と構成
2.特許権範囲の広さと技術革新の経済分析
2.1. 最適特許制度の経済理論
2.2. 特許権範囲の法と経済学
2.3. 特許権範囲の広さと技術革新についての実証研究
3. 1986 - 87年の自然実験
3.1. テキサスインスツルメンツDRAM特許訴訟
3.2. 経済理論モデルとの対応関係
4.実証分析
4.1. 枠組み
4.2. データ
4.3. 分析結果
5.インタビュー調査
6.結語 : 望ましい特許制度へ向けた政策提言
要旨
日本政府は現在、「知的財産立国」実現に向け、特許制度について多くの施策を打ち出している。しかし、特許制度の基礎である権利範囲の広さは行政だけでなく司法からも大きな影響を受ける。特許制度は、技術知識の独占利用を一定期間認める代わりに企業の研究開発を促して経済厚生を高める経済システムであるから、法的視点だけではなく、経済学的視点から特許権範囲の広さについて分析することは有益である。
経済学には、企業の研究開発意欲を刺激し、経済厚生を最大化する特許権範囲の広さに関する理論研究の蓄積がある。本論文は、特許権の効力の及ぶ範囲が実質的に広げられた、米国における1986-87年のテキサスインスツルメンツによる特許訴訟を取り上げ、訴訟に巻き込まれた日本企業の技術革新の変化について分析し、理論研究の実証分析を行った。
日本企業の技術革新を特許の量及び質によって計測した結果、質の高い特許が訴訟後に増加した一方、質の低い特許が質の高い特許を大幅に上回って増加したことを確認した。プロパテント政策によって技術革新を促し、経済厚生の上昇を実現するには、特許権の効力が及ぶ範囲を広げると同時に、特許の更新料値上げによる陳腐化技術の特許権消滅促進、及びパテントプールとの組合せによって、低価値特許が経済にもたらす非効率性をできるだけ小さくすることが重要である。
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