消費の長期変動と構造変化 - 所得・価格弾性値の推定を中心に -
上席主任研究員 長島 直樹
2006年1月
目次
1.問題意識
2.消費重視の考え方
2.1.消費低迷がバブル崩壊後の需給ギャップ拡大・デフレの主犯とする見方
2.2.中長期的な成長力(潜在成長力)も消費が影響するという考え方
3.消費と所得・物価 : 最近30年の動き
4.貨幣錯覚に関する考察
5.所得効果と価格効果の推定
5.1.消費全体に関する所得効果と物価効果 : 上昇期と下降期の弾性値
5.2.消費分野別にみた所得効果・物価効果・相対価格効果の特徴
6.結論とインプリケーション
6.1.税制変更に対する消費の反応
6.2.「独立消費」という考え方
補足説明
財政状況の悪化から、増税論議が活発化する一方、今後の日本経済の成長力が消費動向に依存する状況がある。増税がマクロの消費をどの程度抑制するかは、所得効果、価格効果如何にかかっており、本稿の分析結果からは以下の結論が導かれる。
1998年秋を境に、所得と一般物価のトレンドが上昇から下降に変化しており、それに伴って、所得・価格弾性値も大幅に変化するという構造変化が起こっている。所得効果、価格効果(一般物価効果)とも、下降期は上昇期と比べて大きくなっている。この意味で、消費は所得や物価の上昇よりも下落に対して大きく反応する傾向がある。
実質購買力の低下率が同じでも、名目所得減少の影響は物価上昇の影響よりも大きい。この意味で貨幣錯覚が観察される。消費者が、所得税増税(減税の廃止)を名目可処分所得の低下、消費税増税を一般物価の上昇と考えるとすれば、増税の消費に対する影響は所得税の方が消費税よりも大きくなる。
消費分野別にみると、衣食住関連は1998年以降に所得効果が急上昇し、教養娯楽などの所得効果を上回っている。90年代後半の所得減少に対して、家計はこうした日常的、基礎的な消費分野の消費を切り詰めることによって対処したと推測される。
所得や物価の変動に反応しにくいという意味で、独立性の強い消費分野が存在する。耐久消費財や教養・娯楽といった従来は選択的と見られていた分野が、近年は「独立消費分野」になっている。こうした分野の消費は、供給の質的制約や新商品・新サービスの登場に影響を受けやすく、またこれらの分野の消費拡大が消費全体の増加につながりやすい。
全文はPDFファイルをご参照ください。
PDF 消費の長期変動と構造変化 - 所得・価格弾性値の推定を中心に - [492 KB]
