物流施設の整備に進出が目立つ不動産ファンド
主任研究員 木村 達也
2005年10月
要旨
目立つ外資系など不動産ファンドによる物流施設の整備
近年物流施設の整備に、外資系など不動産ファンドの進出が目立っている。物流不動産ファンドにおける世界のリーディングカンパニーのプロロジスにより、2002年9月に東京の新木場にDHLジャパンの専用物流センターが竣工した。その後AMBブラックパイン、ラサールインベストメントマネジメントなどの外資系の有力ファンドによる物流施設の整備が新設、買収によって相次いでいる。
プロロジスによる施設だけをみても、建設中、建設予定のものも含めて18施設の新設があるほか、既存の7施設が買収されている。これらの施設のユーザー企業は、日本通運、日立物流、センコーなどの物流会社、西友、アスクル、良品計画といった小売企業、松下電器グループ(施設のテナントは松下ロジスティクス)、アパレルメーカーのナイガイなど多岐にわたっている。また地域をみても、関東地域のほか、2004年には関西地域、中部地域に広がりをみせている。
更に、こうした物流施設の整備には、外資系ファンドだけでなく、わが国の商社やリース会社なども進出している。
背景には制度や環境の変化
このような施設の整備進展の背景には、(1)不動産証券化制度の整備の進展、(2)ITバブル崩壊後に一層進んだ世界的な低金利、(3)適用が義務付けられた減損会計、(4)物流施設に対するニーズの変化 - といった制度や環境の変化がある。
不動産証券化制度は、95年に投資家保護の観点から不動産特定共同事業法が施行され、98年にSPC法(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律)が施行されるなど90年代後半に整備が進んだ。また2000年には投信法(投資信託および投資法人に関する法律)が改正・施行され、主に有価証券に限定されていたファンドの運用対象資産が、不動産などの資産にまで拡大された。また01年に東京証券取引所においてJREIT(不動産投資信託、日本版REIT)専用の取引市場における制度が整備されたことにより、小口の証券投資の形態で個人も不動産投資への参加が可能となった。
不動産ファンドによる物流施設の建設・取得は、私募型の不動産ファンド(私募ファンド)などにより資金調達が行われているが、05年5月には初の物流資産特化型のJREITである三井物産系列の日本ロジスティクスファンド投資法人が、東京証券取引所に上場した。
わが国では91年以降金利が低下し、99年から2000年までのゼロ金利政策やその後の量的緩和策のもと歴史的な低金利が続いている。また欧米諸国でもITバブル崩壊後01年には金利が下落し、その後低金利が続いている。こうしたなかわが国の不動産投資は、地価の下落もあり他の運用方法との比較で、高い投資利回りが期待できるようになった。また物流施設の賃貸期間は、テナントの需要に合わせて施設を建設する開発型の施設では10年以上であるなど長期契約が基本であり、長期の定期借家契約を用いれば賃料の減額を排除でき、利回りの安定性も高い。
上場企業など1)において、固定資産についての減損処理(収益性の低下により投資額の回収見込みがなくなった場合の減損損失の計上)は、04年3月期から早期適用が始まり、05年4月1日に始まる決算期以降に適用が義務付けられている。この制度変更による収益変動リスクを小さくするため、物流資産においてもオフバランス化を図る動きがある。
物流施設へのニーズは、在庫スペースとしての保管型倉庫から、一時的な仕分・荷揃えスペース(物流センター)としての性格を強めてきている。また定温、定湿、耐震性などの高機能に対する需要も大きくなってきている。
従来の保管型の倉庫は、物流センター型の倉庫とは構造が全く異なるため、このような物流施設のニーズ変化への対応が難しい。三井倉庫では、05年3月期に62億円であった設備投資を06年3月期には100億円とするなど、倉庫事業者にもこのようなニーズにあわせて自社の倉庫を建て替える動きがある。しかし既存倉庫の建て替えによりニーズとのミスマッチを解消することは容易ではない。
資本効率の悪化回避等がユーザーのメリット
物流施設を賃借すれば、自社所有の場合に比べて賃貸借のマージン相当が割高となる。しかし既に述べた減損会計に関するリスクを回避できるほか、長期にわたって資金が固定化することによる資本効率の悪化を回避することができる。また資金調達方法の多様化から担保となる不動産を持つ必要性は低下している。
外資系など不動産ファンドは、グローバルな資金調達で非常に低利な資金を調達できるため、コストの優位性があり、その結果ユーザー企業の要望も聞き入れられ易い。
こうした状況から、物流関連業務の効率化を図り、物流拠点の統合や見直しも行う荷主企業だけでなく、荷主企業の物流効率化に伴う外部委託を3PLなどで請け負う物流事業者にも、不動産ファンドによる施設を賃借する選択が多くなっているとみられる。
1)証券取引法適用会社(有価証券報告書提出会社)及び商法特例法上の大会社。
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