OECDにおける電子商取引課税の議論の進展 - 徴税ソフトに立脚した電子商取引の国際課税システム
研究員 吉田 倫子
2005年10月
要旨
OECDはこれまでに、クロスボーダー電子商取引におけるB2Cにおいて、徴税ソフトウェアに立脚した消費税徴税方法を検討してきた。
1998年、2001年、2003年のレポートを経て、今回の2005年2月レポート(Electronic Commerce: Facilitating Collection of Consumption Taxes on Business-To-Consumer Cross-Border E-Commerce Transactions)では、徴税仲介業者の利用や徴税ソフトウェアが具体的に検討され、既存のシステムにおいてはそのような仲介業者に要求される事柄の負担が重いことや、取引において税務管轄がまたがってしまうことを念頭におき、徴税に用いる税務会計ソフトウェアの国際的ガイダンスが必要であることが指摘されている。
また、5月に出された2つのガイダンス(Guidance on Tax Compliance for business and Accounting Software、並びにGuidance for the Standard Audit File)は、ソフトウェアの基準作りとソフトウェア開発者を意識したものとなっている。今後、加盟国がどのようなソフトウェアを認定し徴税システムに用いるかという点について注目していかなければならない。
OECDにおける議論の経緯
1998年に発表されたレポート(Electronic Commerce: Taxation Framework Condition)では、電子商取引によって、国境をまたがって売買が行われたときの消費税は、消費地国で徴税されるべきであるとされていた。例えば、日本に住む消費者が米国から5万円の書籍をデジタルデータとしてダウンロードして購入する場合、その消費者は日本の消費税5%分の2,500円を購入時に支払わなければならない。しかし、米国のデジタル書籍販売業者は、日本の税務当局、つまり消費者が所在する国の税務当局とは相互に納税管轄関係にない。よって、消費税が消費地で課税されるようなルール下では、双方で適正額が徴税また納税されたのかを確認することが困難であり、また、販売業者にとっても消費地の課税ルールについて遵守するのは困難であると指摘されていた。
2001年レポート(Taxation and Electronic Commerce - Implementing the Ottawa Taxation Framework Conditions)では、(1)消費者から直接徴税する、(2)非居住の販売業者から直接徴税する、(3)販売業者を代行する仲介業者から徴税する、などの案から、非居住の販売業者から直接徴税する方法がベストであると考えられ、2003年レポート(Report on Automating Consumption Tax Collection Mechanisms)では、ソフトウェア等の技術を利用した徴税方法について議論されるようになった。その結果、ほとんどのOECD加盟国においてはオンライン徴税・納税が可能だが、コストと手続きの煩雑さが依然として問題であるとされていた。
2005年レポートとソフトウェアの課題
今回の2005年レポートでは、クロスボーダーB2Cの消費税徴税において、(1)非居住サプライヤーが、複数の課税管轄で登録、申告、納税ができる技術を利用すること、(2)互換性のある技術標準を採用し税務執行要件を定めること、(3)徴税仲介業者の税務上の障壁を除去すること、(4)税率等消費税に関する情報が電子的に入手可能であること、(5)非居住販売業者が税務登録、還付等において、すべて電子的に手続きを行うことができること、が重要な課題として取り上げられている。
OECD加盟各国や事業者側によると、販売業者にかわって徴税を行う仲介業者は、消費地に課税拠点等の事務所を持っている必要があり、徴収した税を納税できる銀行口座の保証やそれらを税務当局と契約するよう求める意見もある。しかし、電子商取引の場合にも一般的な取引と同様にPE(Permanent Establishment : 課税拠点)を設けることが果たして必要なのかどうか疑問が残る。
ソフトウェアに関しては、クロスボーダー電子商取引の視点に立ち、どのような条件を満たすソフトウェアを政府がどのように認証するのかが問題となる。認証のためにかかるコストや、認証基準を満たすことのできない業者、認証システムそのものに反対するソフトウェア販売業者の問題もある。
5月に出されたガイダンスは、ソフトウェアを導入してコンプライアンスを簡素化するという目的のため、企業に対してガイドラインの自主的遵守(voluntary compliance)を期待しており、また米国におけるサーベンス・オクスリー(Sarbanes Oxley)やEUにおけるIFRS(International Financial Reporting Standard)等の基準を満たすように意識するように求められている。ガイダンス自体はコーポレートガバナンスを厳密に対処するためのものではないが、キーとなるコンセプトとされている。
ソフトウェアの規格と認証
2005年レポートで取り上げられている認証方法は、(1)税務当局が規格をつくり、その規格に準拠したソフトウェアを定期的に登録の更新や運用テスト等を行い、ソフトの評価付けをする、(2)税務当局が規格をつくるが認証や登録は行わず、規格を満たしているかどうかはソフト開発業者が独自に判断する、(3)国際的にソフトウェアの開発・導入を行うことのできる認定機関との連携によりすすめてゆく、ことが考えられている。特に、(1)に関しては、現在米国で進行中のSSTP(Streamlined Sales Tax Project)がベースとなっており、こちらは10月1日までにSSTPにおける最終的なソフトウェア認証についての詳細が出されることになっている。米国のSSTAの動向にも着目しながら、OECD今後の動きを見てゆく必要がある。
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PDF OECDにおける電子商取引課税の議論の進展 - 徴税ソフトに立脚した電子商取引の国際課税システム [210 KB]
