ライブドア報道から考えるインターネット企業
上級研究員 湯川 抗
2005年7月
要旨
先日まで毎日のように報道された、ライブドア関連のニュースはインターネット企業全般への注目を喚起する。こうした報道では必ずしも明確に語られないが、現在のインターネット企業を考える際には、より広く明確に認識すべき点が2つあると思われる。
ひとつは、インターネット企業の業績は現在非常に好調であり、今後の継続的成長も期待できるということである。そしてもうひとつは、かつて語られたインターネットの普及による産業構造の再編がこうした企業中心に現在実現しつつあるということである。
インターネット企業の大半は、設立間もないベンチャー企業であるものの、今後の我が国IT産業を牽引していく可能性が高い。ベンチャー企業による産業振興が望まれて久しいが、実はこうしたことは今ようやく実現しつつある。これは、我が国経済にとって喜ぶべき現象と考えられる。
絶好調なインターネット企業
連日の報道で、ライブドアばかりが注目されているが、現在インターネット企業の業績は非常に好調である。上場する企業が相次ぐとともに、今後の上場が噂される企業も数多い。かつては、市場でトップシェアを握れないインターネット企業は生き残れない、とまでいわれたが、昨年後半以降、相次いで上場を果たした、Excite、DeNA、カブドットコム証券等はいずれも、ポータル、オークション、オンライントレードの分野のトップ企業ではない。こうしたことは、インターネットビジネスの成熟とともに、市場シェアが2番手、3番手の企業であっても十分に生き残っていけることを示している。
また、電通が2月に公表した「2004年日本の広告費」によれば、インターネット広告費は前年比153%増の1,814億円であり、ここ数年低迷を続けるラジオ広告の1,795億円を上回った。当然ながらインターネット広告を扱うインターネット企業各社の業績はいずれも非常に好調で、大幅増収を遂げている。これは、メディアとしてのインターネットがもはや十分に浸透していることを示唆している。これらのことは、インターネットビジネス自体が十分に収益をあげることのできるものであることを意味している。
更に、上場を果たした企業の市場における存在感も非常に高まっている。例えば、JASDAQの時価総額ランキングのトップ10のうち4社はインターネット上での情報仲介のみによって収益をあげているピュアなインターネット企業が占める(楽天、イー・トレード証券、インデックス、フォーサイド・ドット・コム : 2005年4月末現在)。
インターネット企業の発展の背景には、ブロードバンドの普及により、インターネットという情報流通チャネルが本格的に活用されるようになったことや、電子商取引関連の法制度等関連する制度が整備されつつあることが挙げられる。こうした動きは、今後後戻りするとは考えられないため、インターネット企業の発展は今後とも期待できよう。
インターネット企業が促す産業構造の再編
また、上場インターネット企業による企業買収も活発であり、インターネット企業による企業買収は件数、金額ともに増大している。M&A専門情報を提供しているレコフの調査によれば、2003年に800億円であった「インターインターネット企業」を当事者とするM&Aは、2004年には5,000億円超に急増している。
これまで、楽天、ライブドア、GMO、サイバーエージェント等の我が国を代表するインターネット企業は、周辺分野のインターネット企業を吸収することで成長してきたことから、インターネット企業によるM&Aは驚くにあたらない。しかし、昨年来これら企業のM&Aの金額が急増している背景には、これまでとは異なり、インターネット企業が異業種の企業を買収するケースが増加しつつあることがある。
球団やメディアの買収ばかりが話題になっているが、ヤフーによるあおぞら信託銀行の買収や、ライブドアによるロイヤル信販の買収等、金融関連の既存企業がインターネット企業に買収されるケースが昨年来多く見られる。1990年代から語られてきたインターネットの普及による産業構造の再編が、こうしたインターネット企業を軸に現在まさに実現しつつあるといえよう。
一方、米国では昨年来、日本と逆の動きが多く見受けられる。例えば、ニューヨークタイムズによる情報検索サイト「アバウト・ドット・コム」の買収、ワシントンポストによるオンライン雑誌「スレート」の買収、バイアコムによるスポーツ情報サイト「スポーツライン・ドット・コム」の買収など、既存の大手メディアによる、インターネット企業の買収が相次いでおり、他にも大手メディアの買収の標的になっていると噂されるインターネット企業は多い。このことは、米国では大手企業がインターネットビジネスを、十分収益があがるものであると認識していることを示している。
本格化するベンチャー企業主導の産業振興
我が国インターネット企業の多くは1990年代後半に設立された、いわばベンチャー企業である。そして、これらの企業は創業者がCEOとなっているケースが多いため、彼らには今後エンジェル投資家としての役割も少なからず期待できよう。
インターネットという新たなメディアの出現という、類まれなビジネスチャンスに恵まれたとはいえ、設立後10年程度の企業群がここまでの成長を遂げていることは大いに注目に値する。そして、これまでのインターネット企業の発展の速度や、今後の我が国経済社会が知識社会への転換していくことを考慮すると、こうしたベンチャー企業は我が国IT産業を牽引する可能性が高いと思われる。これはベンチャーが育たないといわれ続けた我が国産業界にとって喜ぶべきことではないのだろうか。
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