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金融NPOの活発化が意味するもの

主任研究員 米山 秀隆

2005年7月

要旨

各地で金融NPOが発足

市民から集めた資金を地域内の事業に融資する金融版のNPO(金融NPO、市民銀行などと呼ばれる)の活動が各地で活発化している。金融NPOは、金融庁認可の銀行ではなく、預金を集めることはできないが、市民から小口の出資を求め、貸金業として貸し付けるという方式をとっている。融資先は、地域に密着した事業や社会的に意義のある事業を行おうとする事業者、起業家などである。金融NPOに出資する市民は、こうした金融NPOの融資方針に賛同して出資を行っている。

金融NPOの草分けとしては、市民バンク(東京都目黒区、89年設立)、未来バンク事業組合(東京都江戸川区、94年設立)、女性・市民信用組合(WCC)設立準備会(横浜市、98年設立)などが知られている。最近では、北海道NPOバンク(札幌市、02年設立)、NPO夢バンク(長野市、03年設立)、東京コミュニティパワーバンク(東京都新宿区、03年設立)など各地で続々と誕生し、04年夏には全国の金融NPOを集めた「第1回NPOバンクフォーラム」が開かれた。

これらのうちでも既に実績のある未来バンクの累積貸出額は5億5,000万円、WCCは3億円に達している。未来バンクは、自分たちの預貯金を有益に活用したいという動機で設立され、現在の出資金は1億円を超える。環境分野のNPOや障害者が働く商店などに融資を行っている。融資を受けるためには1万円以上の出資が必要で、原則、年3%で無担保融資される(最大限度融資額は出資金の10倍)。これまでの融資の焦げ付きはゼロである。

一方WCCも、出資金は1億円を超え、福祉施設やリサイクルショップの立ち上げなどに融資を行っている。出資金は10万円以上で、融資限度額は1,000万円(または出資金の20倍以上)となっている。出資者のほとんどは女性で、女性の事業の支援に主眼を置いている。WCCもこれまでの焦げ付きはゼロである。WCCは将来の信用組合転換を目指している。正式な信用組合になれば預金を集め、事業を拡大することができるようになるからである。

やや毛色の変わったところでは、ミュージシャンの坂本龍一氏、歌手の桜井和寿氏、音楽プロデューサーの小林武史氏が出資して作ったapバンク(アーティスト・パワー、オルタナティブ・パワー)がある(03年設立)。三氏が1億円を拠出し、太陽光や風力発電施設の設置など環境分野への融資を行っている(融資限度額は500万円)。apバンクは、資産運用を銀行まかせにせず、自分たちが望む事業に役立てたいという動機によって設立された。個人の出資を受け付けていないという点で他の金融NPOとは異なるが、将来は個人からの出資の受け入れも検討している。

現代版の頼母子講

金融NPOは、現代版の頼母子講、無尽とみなすことができる。また、いずれも、既存の金融機関への不信感を持ち、自分たちのお金を地域の有効な事業に回し、地域経済に貢献したいという使命感を抱いている点で共通点を持っている。

実はこうした使命を果たすことを本来の役割にしているのが、地域に最も密着した金融機関である地銀や第二地銀、信用組合などである。これら地域金融機関のルーツをたどると江戸時代の頼母子講にさかのぼるものも少なくない。頼母子講などの形態から出発し、徐々に現在の形に発展していった地域密着型の金融機関が、本来の役割を果たしていないことが、現代版の頼母子講ともいえる金融NPOを生む要因になっている点は興味深い。しかもそうした金融NPOの中には、将来的に信用組合への転換を目標とするものも現われている。

地域金融機関の中には、いまだ多額の不良債権を抱え、経営難に喘いでいるものも少なくないが、そうした金融機関の機能不全を補うべく、新たな地域密着の金融機関である金融NPOが自然発生的に各地で現われているのが、現在の状況と捉えることができる。

金融NPOの今後の課題

最近発足した金融NPOの中には、自治体が地域活性化の手段として目を付け、自治体自身が出資しているものもある。例えば、北海道NPOバンクでは、出資金約4,300万円のうち、半分近くを道と札幌市が出資している。しかし自治体への依存が増えれば、市民が自分たちのお金を地域に回すという理念が薄れてしまうことになる。

市民からの出資を増やすためには、金融NPO自身が、集めた資金がこんなに有効に使われて地域の役に立っていると市民にアピールすることが必要であるが、アピールするためにはまずは実績を作ることが必要で、発足当初の金融NPOはそうした点で困難に直面することになる。自治体からの出資はスタートアップ時には役に立つとはいえ、その後に市民の参加の輪をいかに広げていくかが問われている。

また、金融NPOの融資を拡大させていくためには、融資しようとする事業に対する目利きの能力も必要とされる。金融NPOの中には、元金融マン、会計士などの支援者による審査委員会を作り、貸し倒れを防ごうとしているところもある。金融NPOの仕組みでは、融資先が仲間内の範囲で顔が見える限りにおいては、貸し倒れリスクを仲間内のチェックで低下させることができる。しかし、融資を拡大していく過程では、通常の金融機関と同様に、リスク管理能力を高めていくことが必要になる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 金融NPOの活発化が意味するもの [210 KB]