消費に関する所得効果の非対称性
主任研究員 長島 直樹
2005年4月
目次
1.はじめに
2.所得効果の非対称性
2.1.調査方法について
2.2.観察される非対称性
2.3.属性別の違いとマクロの弾性値
3.所得効果を規定する要因
3.1.CHAID分析の考え方
3.2.分析結果
4.所得効果の計量分析
5.結論とインプリケーション
要旨
「消費に関する所得効果には非対称性がある」との仮説から、アンケート調査を用いた実証分析を試みた。この結果、消費の所得弾性値は、所得減少時で約1であるのに対して、所得増加時は0.5未満であると推定された。弾性値を規定する要因を分析した結果、所得変化に対する「反応の有無(消費を増減させるか否か)」と、反応する消費者のうち「反応の程度(どの程度消費を増減させるか)」ではそれぞれ規定要因が異なっていることが確認された。また、所得増加に対する反応と所得減少に対する反応ではやはり規定要因が異なり、現在観察される反応の非対称の原因になっていると推察される。特徴的なのは、(1)所得減少のケースでは、所得のダウンサイドリスクが重要な役割を演じ、所得減少に対する消費減少率を増幅していること、(2)所得増加のケースでは、供給要因(過去1年で欲しいと思うような商品・サービスが現れた)が重要で、この供給要因があると所得増加に対する消費の反応を活発化することである。このように、現在所得弾性に非対称性が観察される背景には、ダウンサイドリスクが依然として大きい反面、供給要因が不十分であることが示唆される。
*本稿の作成に当たり、岩村充(早稲田大)、渡辺努(一橋大)の両教授よりいただいた有益なコメントに感謝したい。なお、残された誤りはもちろん筆者の責任である。
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