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電力自由化の効果と今後の競争激化の予測

主席研究員 武石 礼司

2005年4月

要旨

2000年から始まった電力自由化の効果は大きく、自由化された特別高圧需要家向けの電力価格が産業用及び業務用ともに大きく低下した。

ただし、2004年4月からの500kW以上の高圧需要家向けの小売自由化の効果は限定的であった。これは、現行の規定では託送料金が高圧需要家向けでは割高とならざるを得なかったからである。

2005年4月からの自由化拡大は、電力需要家側においても大きな期待が持てる。50kW以上受電の高圧需要家向けの自由化が導入されるとともに、電力取引所が開設されるからである。この電力取引所開設の効果は、今後着実に出てくると予測できる。

今後、新規電力事業者(PPS)との競争ばかりでなく、既存電力会社間の競争を促す効果があると予測でき、電力価格の引下げは更に進むと考えられる

自由化と電力価格の推移

2000年から始まった電力産業の自由化により、電力価格の低下という効果が得られている。自由化された特別高圧需要家向けの電力価格を見ると、2000年から2004年初めの間に、全国平均で見て、産業用需要で6.5%、業務用需要で18%の価格低下となっている。

需要量から見ると、特別高圧向けの需要量のうち、産業用需要が88%を占めており、業務用需要は12%に止まる。ただし、自由化開始の2000年時点において、電力価格は産業用が8円~11円台 / kWh、業務用が16~18円台 / kWhであり、業務用の方が5~10円 / kWh程度高かった。この差異が存在したために、小売自由化が実施され電力市場に特定規模電気事業者(PPS)が参入すると、電力顧客の取り合いになり、特別高圧の業務用において激化することになった。動力用あるいは工場のプロセス用に発電機、ボイラー等を保有する場合が多い産業用と比べると、百貨店、大規模スーパー、総合病院、中央官庁、都道府県市庁舎、大学・研究機関等が対象となる特別高圧の業務用需要においては、光熱費は大きな比重を占めており、一部コージェネシステムが導入されているところも多くあるものの、自家発電に依存する電力量は1割から2割程度に止まるところが多い。これは熱需要に依存してコージェネ設備の規模を設定するからで、重油焚きのボイラーをコージェネ施設で代替し、熱需要に見合った範囲でコージェネの発電設備を稼動させる場合が多いためである。したがって、業務用需要家の施設では、電力需要量のうち、8割から9割を電力会社からの買電に依存するところが多いために、電力代金のうち1%あるいは2%でも電力価格が引き下げられるのであれば、これまでも電力会社(一般電気事業者)からPPSへの切り替えを行うところが多く存在した。

2004年及び2005年の自由化実施

2004年4月から500kWを超える高圧需要家向けの電力小売が自由化された。ただし、この第2弾の自由化の効果はあまり大きくない。これは、託送料金の規定のされ方によって生じている現象である。各電力会社が、送配電費用のうちの送電部分のみを割り振るのが、送電線から直接受電する特別高圧需要家向けの託送料金である。高圧需要家向けとなると、配電費用が一部上乗せされるために、託送料金が急に高くなる。このため2004年4月から実施された500kW高圧需要家向けの自由化においては、PPSが高額の託送料金を負担して顧客を奪い取る例は極めて少ないまま推移している。

自由化の第2期と呼べる大きな変化は、2005年4月から生じると考えられている。2005年4月からは50kW以上の高圧需要家向けの小売が自由化され、高圧受電及び特別高圧受電の需要家は全て自由に電気を購入する選択肢を持つことになる。しかも注目されるのは、一般電気事業者の供給エリアを越えるたびに必要とされてきた振替供給制度に基づく送電線利用に対する料金支払いが必要なくなる。いわゆるパンケーキ問題の排除として知られる制度の変更が行われる。例えば、九州の電力需要家が北海道の発電事業者(北海道電力あるいは北海道のPPS)から電力を購入する場合、送電線を経由することになる東北電力、東京電力、中部電力、関西電力、中国電力の各社に対して、通過するごとに支払う振替料金が2005年4月からはなくなる。このように振替料金制度が廃止されることで、電力会社間の競争も促されると予想できる。

更に、2005年4月からは電力取引所が開設される。電力取引所では、1日前スポット市場と先渡し市場の2種類の取引が行われることになっている。当日の需給の調整を行うリアルタイムの市場の開設は、今回は見送られている。

自由化 : 今後の方向性

電力会社は、電力価格の引き下げを既に2回実施している。2000年10月に平均で4.67%引き下げ、次いで、2002年4月から10月に、5~7%引き下げている。更に、2004年10月から東京電力が3回目の値下げの口火を切り(5.21%)、その後、他の電力会社も2005年1月には、東北電力、中部電力、九州電力が値下げを行い、続いて4月には、北海道電力、北陸電力、関西電力、中国電力が値下げを行う予定となっている。いずれも4~5%程度の値下げとなる見込みである。このようにPPSが参入して、特別高圧の業務用で顕著であったように、競争が激化し実際に顧客を奪われるという事態を前にして、電力会社は顧客の奪還に動き始めている。今後も、大手ガス会社、製鉄会社、石油会社をキープレイヤーとして、PPS向けの発電所の建設は着実に進むことが予想される。PPSの手持ちの販売電力は今後5%程度に増大する。現在も電力会社にとり優良顧客である特別高圧の業務用向けの供給は、PPSとの間で取ったり取られたりの状況が続く見込みである。しかも、電力取引所の開設により、PPSの供給電力の選択肢は必ず増大する。こうして、電力の需要家側にとってはたいへんに好ましい状況、即ちPPS及び電力会社の間及び既存電力会社間における競争が、更に激化することになろう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 電力自由化の効果と今後の競争激化の予測 [211 KB]