富士通総研

  1. ホーム >
  2. 調査・研究成果 >
  3. Economic Review >
  4. Vol.9 No.2 2005年4月 >
  5. 米国におけるブロードバンドとインターネット課税のモラトリアム

米国におけるブロードバンドとインターネット課税のモラトリアム

研究員 吉田 倫子

2005年4月

要旨

米国では2004年12月3日に「インターネット非課税法(Internet Tax Freedom Act、以下ITFA)」が修正され、インターネット接続に対して課税を禁止する「モラトリアム」期間が2007年11月まで延長されることになった。今回の修正では、「インターネットアクセス」の定義が拡大され、ダイヤルアップ接続に加え、DSL、ケーブルモデム、サテライト、ワイヤレス等ブロードバンド接続に対する課税も禁止された。インターネットショッピングの際の売上税・地方税や、インターネット電話は適用外である。

ITFAのモラトリアム期間延長の背景には、米国が2億人のインターネット利用者を抱え、ブロードバンドを普及させるために、課税によってアクセス料金が高くなることに反対する意見が多かったことがもっとも大きな理由として挙げられる。

ITFAの基本となる柱

この法律は、1998年にクリントン政権下で成立し、

1.インターネットアクセス料の新たな課税を禁止すること
2.電子商取引に対する複合的で差別的な課税を禁止すること

を目的として制定された。以来、2回の修正が重ねられ、今回の修正ではモラトリアム期間を延長するとともに、何が「インターネットアクセス」に該当するのかについて定義を明確にし、その範囲を拡大している。

今回のITFAの柱は4本ある。

1.州・地方両政府によるインターネットアクセスへの課税モラトリアムを恒久的に延期
2.州・地方両政府による電子商取引に係る複合的で差別的な課税を禁止
3.「インターネットアクセス」と「インターネットアクセスサービス」の定義の修正
4.既存のITFAにおける祖父条項の適用延長

である。

何がインターネットアクセスに該当するのか

上述4本の柱のうち、特に3.においては、従来から対象となっていたダイヤルアップ接続に加え、DSL、ケーブルモデム、ワイヤレスインターネット接続が対象に加わった。ただし、インターネット上で買い物をした場合は対象とはならず、通常の州売上税・地方税が課せられる。この場合、提供者がネクサス(課税拠点)を持たない場合は徴税の必要がない。

また、インターネット電話は、サービスの根本的な内容が電話による通話であるため、ITFAの対象には含まれてはいない。そのため、インターネットアクセスプロバイダーは、インターネットアクセスの料金徴収とそれ以外の料金を、会計上区分して処理する必要がある。

祖父条項とは、制度や法が修正された場合に、その修正前に既に認められていた権利(既得権)を、修正後も認めるということである。テキサス、サウスカロライナ、テネシー等11州は、1998年10月1日以前よりインターネットアクセスをテレコミュニケーションサービスとみなして課税しており、これらの州に対しては、今後もその措置を継続することが認められている。ITFA以後の各州の対応をみると、コネチカット州は1998年の時点では課税を行っていたが、2001年7月にルールを作り、インターネットアクセスに対する課税を凍結している。1998年の法律においては、対象となる範囲が狭く、テレコミュニケーションサービスは含まれていなかったため、課税しているプロバイダーも少なくなかった。

技術に対して中立な課税制度の構築

1998年から現在に至るまで、ITFAに関する議論の過程を見てみると、この法律を実質恒久的な措置とする意見や、オンラインのデジタル財にかかる売上税をすべて廃止するという案もあった。また、SSUTA(州売上税簡素化協定 : Streamlined Sales and Use Tax Agreement。協定に加盟した州において売上税制を統一化し、協定加盟州間の納税手続きを簡素化することにより、州政府側の負担が大幅に軽減され、また税収増が見込めると言われている。)の進展により、もし将来的に州売上税のコンプライアンス(法令遵守のための手続き)が簡素になるのであれば、州の課税当局が、遠隔地事業者に対して課税する権利を与えたいという議論もあった。また、DSLサービスには課税するが、他の形式のサービスには課税しない州等もあった。しかし、形態は異なるが利用するサービス内容はほぼ等しいため、公平ではない。電子商取引やインターネットに関する課税議論において、常に進展する技術に対して中立的な課税制度の構築が求められる。

今回の改正により、2007年までのモラトリアムが決定されたが、1998年から2007年までの9年間、米国が非課税を貫くことで税収減に悩む州・地方政府もあり、この措置が果たして好ましいものかどうか疑問を唱えるものもある。

ITFAのモラトリアム期間延長の背景には、米国が2億人のインターネット利用者を抱え、ブロードバンド普及の視点から、課税によってアクセス料金が高くなることに反対する意見が多かったことが、もっとも大きな理由として挙げられる。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 米国におけるブロードバンドとインターネット課税のモラトリアム [191 KB]