三井化学(株)におけるITアウトソーシングの現状と展望
三井化学株式会社 専務取締役 片岡 義彦
2005年1月
要旨
当社のITアウトソーシングの背景は、(1)グローバリゼーション、(2)IT革命、(3)大競争時代という3つのポイントにまとめることができる。グローバリゼーションによって、サプライチェーンが世界規模に拡大し、業務や情報システム(IS)を標準化する必要性が高まるとともに、国際会計基準への対応が必要になり、「『持つ時代』から『使う時代』へ」と資本効率の向上が大きな課題になった。また、IT革命によって技術移転のスピードが急速に速くなり、技術進歩に付いていくことが困難になった。その一方でITを活用したビジネスプロセスの改革がそのまま競争力の格差に結びつくようになってきた。化学業界は他の多くの業界と同様に大競争の時代にあり、生き残っていくためには、コア業務に資源を集中して差異性のある技術や製品を継続的に創出すると同時に、競争に負けないレベルのインフラを維持していくことが求められるようになった。
このようなことから、当社ではITのアウトソーシングを積極的に進めている。ISに関する業務を、(1)IS戦略立案・評価・業務改革、(2)業務改善・IS開発、(3)IT企画・基盤構築、(4)IS運用という4つに分類すれば、当初はISの運用をアウトソースすることが中心だった。現在では、IT企画・基盤構築の業務と業務改善・IS開発の業務の一部もアウトソーシングの対象となっている。将来的には、自社のIS関連業務は(1)のIS戦略立案・評価・業務改革に集中し、それ以外の業務をすべてアウトソーサに委託する方向で具体的な計画を進めている。
こうした広範囲のアウトソーシングを効果的に実施するためにはアウトソーサと良好な関係を築く必要があり、そのためにはSLA(サービス品質保証契約)が重要なツールになる。現状では目標値設定型の契約が中心だが、これからはアウトソーサと計画を共有し、SLAも達成度によってペナルティやインセンティブを付与する保証値設定型が中心になると考えられる。また、計画では第三者のコンサルタントにアウトソーシングを評価してもらうことになっており、この評価機能がどれだけ効果的に働くかということがひとつのポイントになるだろう。
アウトソーシングの直接的な効果としてはIT機能の増力化やアウトソーサの技術力・専門性の活用といったものがあるが、これを企業全体の経営革新につなげるためには、ITの経営的な位置付けを高め、アウトソーシングと同時に業務改革を行うことが重要であると考えている。ITの経営的な位置付けを高めるためには、システム部門自身が進化しなければならない。従来のシステム部門はISの開発・運用・保守を担う部門という位置付けであったが、今後は企業の経営戦略を支援する情報戦略部門になることが求められている。また、業務改革については、当社では全社的な業務革新プロジェクトとして「スピード・効率・効果経営の実現」という目標を掲げ、業績管理やサプライチェーンの改革に取り組んでおり、アウトソーシングの戦略的な活用が業務改革課題の解決策のひとつとして位置付けられている。
最後に、アウトソーサへの期待について述べたい。アウトソーシングは今後業務委託型から付加価値提供型へと進化していくと考えられるが、そのような状況の中で個々のアウトソーサの強みを明確にしていくことが必要だろう。また、アウトソーシングの範囲の拡大、グローバリゼーションへの対応、保守・運用費用の透明性の向上、情報セキュリティの徹底確保といったことも期待したい。
当社のITアウトソーシングは、これから本格的に範囲と水準を拡大していこうとしているところであり、本当の意味での効果が出てくるのはこれからである。今日お話ししたような点にポイントを置きながら、競争優位に結びつくアウトソーシングのあり方を追求していきたい。
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