富士通総研

特別企画コンファレンス『競争優位のアウトソーシング』

概要

富士通総研経済研究所と早稲田大学IT戦略研究所では、10月20日(水曜日)経団連会館で、特別企画コンファレンス『競争優位のアウトソーシング』を開催した。今回のコンファレンスは、二部構成をとり、第一部では三井化学株式会社の専務取締役である片岡義彦氏が情報システムについて、富士通株式会社のものづくり推進本部物流企画部統括部長である渡辺寛氏が物流・ロジスティクスについて、アウトソーシングの活用企業での実態について講演した。第二部では、研究顧問、研究員により、情報システム及び物流・ロジスティクスのアウトソーシングについて、持続的差別化の条件を研究成果に基づき発表を行った。

まずコンファレンスの問題意識について、根来は次のように述べた。近年進展する企業での様々なアウトソーシングは、(1)コア業務への経営資源の集中、(2)コスト削減、(3)専門性の確保、(4)「弱さ」の補完、(5)参入までの時間短縮 - といったメリットを持つ。しかしアウトソーシングによる業務の選択と集中は、取引のオープン化と業務のモジュール化(標準化)の流れのなかで、事業の競争基盤を弱める可能性もある。すなわち優れた外部資源の利用は、他社との競争同位を達成するだけで、直接的に競争優位につながる差別化を実現するとは限らず、また差別化に利用できる経営資源の減少から環境変化への対応を難しくする可能性がある。こうしたアウトソーシングのジレンマは、委託先と自社内の業務プロセスを活動システムとして結びつけるシナジスティック・アウトソーシング(SO)によって解決可能である。SOを形成することで、模倣困難性が高い差別化が形成され、持続的に競争優位を維持することが可能になる。

第一部において片岡氏は、「三井化学(株)におけるITアウトソーシングの現状と展望」と題して、アウトソーシングの背景と現状、アウトソーシングと経営革新、アウトソーシングのポイント、今後の展望などについて述べた(詳細は後述)。

続いて渡辺氏は、「富士通(株)におけるロジスティクス・アウトソーシングの現状と展望」について講演した。そのなかで、アウトソーシングに至った背景、アウトソーシングから期待できるメリットや今後の方向性・課題について述べた(詳細は後述)。

第二部において根来は、研究の概要について次のように報告した。競争優位を実現するアウトソーシングとはどのようなものか、情報システム(IS)とロジスティクス(L)についてアンケートに基づく研究を行ったが、この二つの業務に着目したのはアウトソーシング率が高く、サービス内容に標準化・オープン化の傾向があるためである。研究対象は、部分的アウトソーシングと業務プロセス全体のアウトソーシング(BPO)の双方である。この研究では、競争優位への差別化は活動を通じて形成され、活動には資源(経営者の能力・意思を含む)が影響を与える、という三層構造モデルが想定されている。競争優位への貢献は、調査上は経営課題への貢献として扱った。ISとLの研究結果による競争優位のアウトソーシングの条件として、資源レベルでは経営陣の関心の高さの重要性が共通している。また活動レベルでは委託と連動した社内の業務改革の重要性が共通要因となっている。この調査結果は、シナジスティック・アウトソーシング概念の妥当性を示している。

続いて浜屋は、情報システム(IS)のアウトソーシングについて次のように発表した。アンケート調査結果をもとに実証的に分析した結果、ISのアウトソーシングが企業全体の経営課題の解決につながる条件として、(1)経営戦略とIT活用方針との整合性、(2)自社の事業構造と業務の見直し、(3)委託先の十分な選別、という3つの要因が抽出される。つまり、経営戦略に沿ったITの活用が行われており、アウトソーシングと同時に自社の強み・弱みの分析やBPRなどを行い、自社で作成した要件定義に基づいて十分に委託先を選別している企業ほど、ISのアウトソーシングが経営課題に貢献している程度が高いことがわかる。このような条件を満たすためには、(1)経営陣のITに対する関心、(2)自社のIS企画に関するスキル、といった企業の資源・能力が重要である。また、SLA(サービス品質保証契約)を採用している企業ほど、ISアウトソーシングの効果も大きい。

木村は、ロジスティクスのアウトソーシング(LO)について次のように報告を行った。研究対象は製造業と小売業のLOであり、経営課題への貢献が大きいLOにおける貢献要因は、製造業と小売業では異なっている。しかし両業種の要因に共通する重要な特性として、「委託先との情報連携」、「ロジスティクス関連等能力」、「経営陣、経営トップの関心、関与」が抽出される。また製造業において経営課題への貢献が大きいLOの貢献経路を分析すると、委託先のノウハウが生かされる直接的な経路において貢献が大きいことが確認される。しかし同時にLOの実施に伴い自社の企業内業務構造が変化(スルーップトタイムが短縮)することを経由した間接的な経路での貢献も有効であると判る。すなわち製造業の経営課題への貢献が大きいLOは、自社の業務プロセスの変化を伴っており、長期の差別化につながるシナジスティク・ロジスティクス・アウトソーシングといえる。

プログラム

13時~13時10分 開会挨拶
会長 高島 章
13時10分~13時30分 問題意識:競争優位のアウトソーシング - 外部委託と持続的競争優位の両立
富士通総研経済研究所 研究顧問 / 早稲田大学IT戦略研究所長 根来 龍之
 
第一部 : アウトソーシングの現状(講演)
 
13時30分~14時20分 三井化学(株)におけるISアウトソーシングの現状と展望
三井化学株式会社 専務取締役 片岡 義彦
14時20分~15時10分 富士通(株)におけるロジスティクス・アウトソーシングの現状と展望
富士通株式会社 ものづくり推進本部物流企画部統括部長 渡辺 寛
15時10分~15時25分 休 憩
 
第二部 : 競争優位のアウトソーシングのメカニズム(研究報告)
 
15時25分~17時5分 競争優位のアウトソーシング - 研究の概要 -
富士通総研経済研究所 研究顧問 / 早稲田大学IT戦略研究所長 根来 龍之
競争優位のアウトソーシング - 情報システム -
主任研究員 浜屋 敏
競争優位のアウトソーシング - ロジスティクス -
主任研究員 木村 達也
17時5分~17時10分 閉会挨拶
社長 長谷川 展久

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 特別企画コンファレンス『競争優位のアウトソーシング』概要 [146 KB]