環境保全型農産物の流通からみた地域のサステナビリティ
主任研究員 生田 孝史
2005年1月
目次
はじめに
I.青果物流通と環境保全型農産物
1.国内市場への青果物供給と流通
2.環境保全型農産物の流通
II.量販店の環境保全型農産物販売戦略
1.量販店とサステナブル経営
2.農産物ブランド戦略
3.品質管理
4.量販店の戦略の課題
5.欧州の有機食品市場形成
III.国内環境保全型農業の拡大による地域のサステナビリティ向上
1.量販店の戦略と地域のサステナビリティ
2.地域戦略と企業戦略の調和
要旨
1.安全・安心で環境負荷が少ない高付加価値農産物の国内供給体制の構築が、農山村地域の活性化と国土の保全につながる。地域の持続可能性(サステナビリティ)向上の担い手として、需要家と地域資源を結びつける企業の役割が注目されている。
2.我が国の青果物供給は、国内生産が減少する一方で、輸入が増加傾向にあり、流通面では、量販店の影響力が強くなっている。環境保全型の青果物の供給量は国内生産の2割強であるが、基準が厳格な有機青果物の供給量は国内生産の1%に満たず、卸売市場を経由しない市場外流通が主流となっており、通常栽培品との価格プレミアムも有機栽培品は主要野菜平均で50%強と最も高くなっている。
3.大手量販店の約半数が、環境保全型農産物のプライベートブランド(PB)戦略を採用し、高付加価値商品としてのアピールを図り、商品構成上のシェアを拡大する方針をとっている。PBを維持するために、契約生産者との間に独自の品質管理基準を設けるほか、消費者への生産情報開示の努力を行う量販店も多い。しかし、多様なブランドの混在は、消費者の混乱を招くばかりか量販店のPB戦略の有効性が損なわれる恐れがある。また、販売量を増やすための国内での供給先の確保も容易ではない。
4.量販店の環境保全型農産物の流通販売戦略は、消費者への対応やサステナブルな事業戦略の遂行、食育活動の推進という点では評価できるものの、国内供給力不足に起因した国内優良生産者の囲い込みや海外調達などの活動は、地域のサステナビリティを損ないかねない。環境保全型農産物の供給力不足問題を解消し、地域のサステナビリティの向上を図るためには、森林生態系単位での環境保全型農業の転換が必要であり、政策的な支援が欠かせない。量販店にはマーケットリーダーとして、地域主体の環境保全型農産物を普及させる枠組みづくりに積極的に関与することが期待される。
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