外航海運業にみる製造業の収益改善継続への示唆
主任研究員 木村 達也
2005年1月
目次
はじめに
I.製造業に先行した外航海運業の経験
1.90年代における製造業の収益低迷
2.参考になる外航海運業の経験
3.外航海運業の事業分野と分析範囲
II.わが国外航海運業の収益動向と80年代の収益悪化
1.外航海運業の収益動向
2.80年代における収益悪化の背景
III.外航海運業の収益改善策
1.売上原価の固定費部分削減による収益改善
2.売上高の増加による収益改善
3.一般管理費の削減による収益改善
IV.製造業の収益改善継続へのインプリケーション
1.外国人労働者の活用の検討
2.現地化の推進
3.継続的なコスト削減への全社的な取り組み
要旨
1.わが国製造業における02年度以降の収益回復の継続策を検討するにあたり、外航海運業の経験が参考になる。外航海運業の収益は、94年度以降顕著な収益回復をみせており、これは80年代に経験した著しい収益悪化以降の収益改善策により実現した。
2.本稿の分析対象の中心は、外航海運業に現存する中核船社の3社及びこの3社に集約されてきた中核船社の単体である。中核船社の収益は81年度をピークに大きく落ち込んだ。外航海運業の収益回復は、売上原価のうち固定費部分の削減が80年代から大きく貢献し、94年度以降は売上高増加の影響も大きい。更に一般管理費の削減も収益を下支えしている。実際に行われた収益回復策には、フラッギングアウトや日本籍船での混乗による外国人船員の活用により労務費を削減したこと、現地化の推進などによる発地・揚地とも外国である三国間輸送の増加への取り組み、経営計画や全社的なプロジェクトとしてのコスト削減への継続的な取り組みなどがある。
3.外航海運業の経験から、製造業の収益改善継続に重要と示唆される方策には、(1)外国人労働者の活用の検討、(2)現地化の推進、(3)継続的なコスト削減への全社的な取り組み - がある。外国人労働者の活用の検討は、外国人労働者の導入にあたって問題とされる、(1)社会的費用の発生、(2)文化、習慣、宗教の相違による摩擦、(3)職場内の意思疎通 - などについて、外航海運業での外国人船員の活用から示唆される点が多い。現地化の推進は、欧米先進国での製品開発による競争力の強化、BRICs諸国のような高成長の見込まれる大市場での需要の獲得のために不可欠であり、そのためには外航海運業にみられる海外法人の徹底した現地化が必要である。また継続的なコスト削減への全社的な取り組みは、外航海運業で開始後10年以上が経過しても継続されている緩むことのない着実な取り組みが、製造業でも求められる。
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