韓国の電子政府・電子自治体の現状
主任研究員 前川 徹
2005年1月
要旨
ソウル特別市江南区の行政KIOSK端末
ソウル市特別市江南区は、世界的に電子自治体のモデルケースとして取り上げられることが多い自治体である。この江南区における電子自治体システムの中で、最も有名かつ目立つ存在は行政KIOSK端末である。
江南区の行政KIOSK端末は1997年に最初の3台が設置されてから、徐々に数が増え、現在(2004年7月時点で)、区役所はもちろん、地下鉄の駅構内、デパート、銀行など人が集まる場所63ヵ所に103台が設置されている。行政KIOSK端末は高速xDSL回線によってインターネットの基幹回線に接続されており、その場で住民登録謄抄本や土地台帳など27種類の照明書類の発行が可能である。本人確認には住民登録カードと指紋認証システムが利用されている。利用料金は、住民登録抄本で450ウォン(約45円)と極めて安価である。
韓国で利用されている行政KIOSK端末は、金融端末や情報端末の機能も備えた統合型のもので500万円程度、機能を限定した行政向けのものであれば数十万円だと言われている。韓国の行政KIOSK端末が極めて低価格なのは、Windowsパソコンや市販のカード読取装置など既成の部品や製品を使って組み立てられているからである。
ちなみに、2002年2月以降、自宅のパソコンからインターネット経由で11種類の照明書類の発行が可能なシステムも稼動している(利用するためには事前の登録が必要)。
特許庁のKIPOnet
KIPOnetは、特許庁が担当する特許、実用新案、商標、意匠などの審査登録事務の効率化のために1994年に計画が策定され、95年から98年までの3年2ヵ月に延べ95,000人日をかけて構築されたインターネットを利用した電子出願システムである。
KIPOnetの特徴は、出願、審査、承認、情報公開、審判のすべての業務がオンラインで処理されている点にある。2003年における電子出願の割合は86.5%(特許だけをみれば94.6%)に達している。
この電子化による経済効果は大きく、特許庁内部の事務処理効率化だけをみても年間2,500万米ドル、出願者側の経済的利益(オンライン出願による手数料軽減、情報検索時間の短縮、電子出願による交通費や時間の節約などによるコスト削減効果)は年間2億2,500万米ドルになると試算されている。
調達庁のGePS
政府調達の効率化と適正化を目的に1949年に設置された調達庁は、5,000万ウォン(約500万円)以上の財・サービスの政府調達、30億ウォン(約3億円)以上の公共土木建築工事の事務を担当している。
この調達庁が開発したGePS(Government e-Procurement System)は、調達庁が実施する調達だけでなく、各省庁や地方自治体が実施する調達にも利用できるように設計されており、システムは電子入札システムと電子カタログシステムからなっている。
電子入札システムは、業者登録、入札公示、入札、開札、契約、検収、支払いという入札事務全体をカバーするシステムであり(随意契約もこのシステムを通じて情報公開されている)、電子カタログシステムは、小額な調達事務用のシステムで、事前に登録された電子カタログから自由に物品やサービスを選ぶだけで発注が完了するというeマーケットプレイスである。
GePSは、53の民間金融機関と連携しており、支払いはインターネットバンキングによって処理されているため、支払い手続きからわずか4時間程度で入金が行われる。
調達庁における事務処理効率もGePSによって向上しており、職員1人当たりの調達案件の処理件数は280件から489件へと75%も上昇している。また、民間企業からみても、GePSに登録すれば、地方政府を含むすべての政府調達情報が得られ、窓口に出向かなくても入札などに参加できるため、非常に利便性の高いシステムになっている。調達庁は、GePSによって28億米ドル分のコスト削減効果があったと試算している。
こうした調達側(政府機関)にとっても、供給側(民間企業)にとっても利便性が高いことから、地方自治体を含む政府全体の調達の92%がGePSを通じて行われており、GePSによって処理される政府調達総額は36兆ウォン(約3.6兆円)に達している。
韓国から学ぶべきもの
言うまでもなく、電子政府・電子自治体構築の目的は、行政事務を単純に電子化することにあるのではなく、利用者である住民や企業の便益を高めることにある。情報化の決定はトップダウンで行っても、システムの構築は利用者の立場に立ち、現場をよく知っている人の手によってボトムアップで進めることが必要である。
江南区の行政KIOSK端末は民間企業が提案して実現したシステムである。また、調達庁のGePSは民間のシステムとの連携によって効率的なシステムを構築している。このように民間の活力を利用することによってコストパフォーマンスのよい情報化を進めることができる。政府は民間の知恵や活力を生かす方法を考えなければいけないし、民間企業は受身にならず、積極的に電子政府・電子自治体構築の提案を行っていくべきである。
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PDF 韓国の電子政府・電子自治体の現状 [162 KB]
