富士通(株)におけるロジスティクス・アウトソーシングの現状と展望
富士通株式会社 ものづくり推進本部 物流企画部 統括部長 渡辺 寛
2005年1月
要旨
富士通は80年代後半における分社化の流れのなか、社内の物流管理部門を分離独立させて、88年5月に物流子会社、富士通ロジスティクス(FJL)を設立し、グループ全体の物流効率化とサービス向上を推進してきた。しかし、富士通は2000年度以降のIT市場の急激な変化と、将来的な競争優位性の確保に向け、本業に専念する事を目的として、04年6月に物流体制を変更した。すなわち、英国のノンアセット型3PL企業Exel plc.と提携し、FJLはエクセルグループの傘下企業(エクセルロジスティクス(株))として新たなスタートを切り、物流機能をグループ外にアウトソーシングした。
富士通における物流戦略の転換の背景には、(1)富士通を取り巻くIT業界は効率化追求が不可欠で、IBMやシスコなど海外の大手ITメーカーは、本業回帰の中で既に物流を3PLに委託していたこと、(2)物流は、生産、マーケティング等に比較して、アウトソーシングの検討課題の第一であったこと等がある。更には、(3)物流業界は顧客ニーズに対応した高付加価値サービスが益々、重要になるなか、市場競争の激化が想定される。ロジスティクス業界は、3PL事業の確立による収益基盤の拡大は望めるが、参入障壁が低くコンサル、SIer等からも参入が相次ぎ、特に3PLの高付加価値分野は、各社の殺到により競争が激化し、非常に厳しい事業環境になりつつある。こうした環境のもとで、FJLが競争優位性を確保し、富士通グループがより付加価値の高いサービスを享受するためには他社との提携による規模の拡大が不可欠であり、世界有数の3PL企業Exel plc.を提携先として選択した。
この提携によって富士通が期待できるメリットは、(1)高付加価値でグローバル共通なサービスの享受、(2)取扱規模の拡大による物流コストの削減及び固定費の変動費化、(3)物流関連IT投資の抑制、(4)高付加価値な物流サービスの提供によるCS向上、(5)グループ内物流戦略への集中等がある。一方、子会社であった旧FJL、エクセルロジスティクスのメリットは、(1)Exel plc.からの人的リソースの拡充、(2)インフラの相互利用による投資効率化、(3)物流本位の積極投資の拡大等があり、富士通としても早期に相互のメリットを創出すべく、推進体制を強化していく方針である。更にExel plc.にとっては日本・アジア地域の事業基盤の確立・強化というメリットを持ち、この提携は富士通、エクセルロジスティクス、Exel plc.3社におけるWin - Win - Winの関係を基本にしている。
今後のロジスティクス・アウトソーシングにおいては、IT企業における物流の役割、使命ともいえる、調達、生産、販売に至る主要な連続活動のスループットをいかに最速化し、SCM全体の効率化に寄与できるかにかかってきている。すなわち従来のバケツリレー型、個別機能最適型の物流から、コンカレント型の全体最適化を志向するアウトソーシングへの移行が必須となる。現在、ハードウェアを中心とするプラットフォームビジネスの分野では、受注段階から、調達、生産、販売(物流)を考慮し、お客様のご要望に柔軟に対応すべく、物流全体の仕組みの見直しを進めている。アウトソーシングにおける今後の重点取り組み課題は、(1)Exel plc.の物流IT技術・ネットワークを最大限に活用した最適輸送の実現、(2)生産革新活動に連動した物流革新への取り組み、(3)トラックからコンテナへの輸送シフトを目指すグリーンロジスティクスへの取り組み、(4)グローバルな物流合理化体制の構築等である。これらの課題は、企業内の物流業務の構造変革かも知れないが、アウトソーシング先とのシナジーが極大化されるなかで、達成が促進されると確信している。
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