富士通総研

第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』

概要

富士通総研経済研究所では、7月8日(木曜日)経団連会館において第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』を開催した。今回のフォーラムは、中国の急速な経済発展のもと、日中の相互依存関係をいかに深めていくかをテーマにした3つの研究報告と、当社経済研究所理事長 島田晴雄による特別講演『日本経済の復活と需要創出型構造改革』を実施した。

研究報告において、まず朱は、中国経済成長が及ぼす日本経済への効果について次のように報告した。中国経済の高成長に伴い、日本経済に対する影響も大きくなり、中国経済に対する日本のイメージも「中国脅威論」から「中国特需論」に変化した。日本の対中輸出は著しく拡大し、日本経済の回復と成長にも貢献している。「中国特需」は一部の産業の復活に貢献し、更に他の産業にも波及し、日本の景気回復に寄与している。日本が中国経済の高成長の恩恵を享受できる背景には、日中経済関係の変化、日本製品に対する需要の拡大や、日本企業の対中ビジネス戦略の転換などがある。中国の高成長の利益をより多く享受するための対策として、企業は徹底的な現地化戦略、中国企業との競争における差別化を図ることが不可欠である。また企業は「中国特需」のリスクを認識し、対応する必要もある。政策的対応としては、中国とのFTAの推進、政治関係を悪化させない工夫などが必要であろう。

続いて柯は、中国国有企業の民営化と外資企業の対中戦略について、次のように発表した。「改革・開放」政策以降、中国経済は年平均9%の高い成長を続けている。しかし、中国経済は1990年代に入ってから急速に市場経済化しており、市場競争は激化している。国有企業は政府部門の指令に基づいて経営を行うため、激しい市場競争に適応できず、その多くは深刻な経営難に陥っている。従来、中国政府は国有企業の経営を改善するために、所有と経営の分離を図ったり、独自採算制を導入したりしてきた。しかし、抜本的な経営改善はみられない。このような状況の中で、中国政府は中小国有企業を民営化し、大型国有企業の一部も株式会社に転換し、その株式の一部を公開することにしている。この改革によって国有企業に対するコーポレート・ガバナンスが強化され、経営改善に寄与するものと期待されている。国有企業改革が本格化する中で、中国に進出している外資企業の投資戦略のあり方が改めて問われている。すなわち、かつての対中投資の多くは国有企業とのジョイントベンチャーだったが、国有企業の民営化が進められている状況のもとで、外資にとって100%出資の独資、または地場の民営企業との提携が戦略として重要になってくる。

金は、中国における日系企業の経営管理の現地化と経営活動に対するガバナンスについて、次のように報告を行った。拡大する中国市場開拓に当たって投資や意思決定の「現地化」は事業成功の必須条件である。しかし、日本の本社は、現地拠点に投資決定権や人事権を与えないまま財務目標達成のみを厳しく求める企業が多い。権限委譲がなければ機動的な経営ができず、経営目標達成は難しい。日本企業は、「現地化」の必要性を認識しつつも、現地化後の対応に不安があり、実行に踏み切れていない。多くの欧米企業は、経営責任の明確化や現地化後の経営に対する監査やモニタリングの制度で、不安の解消を図っている。日系企業も現地拠点に対して、目標・権限の明確化、測定可能な経営目標の設定と実施段階での支援、本社監査部の定期検査やITネットワーク利用による常時モニタリング、現地スタッフだけでなく派遣される日本人経営者も対象とした事後評価制度の確立等によって、経営の効率化が実現できる。

最後に、特別講演において、島田晴雄は、日本経済を活性化するための需要創出型構造改革について次のように論じた。現在の日本は、多くの企業が90年代に取り組んだ成果であるイノベーションにより、景気が回復している。しかし一方で、貯蓄率の低下・貯蓄構造の変化、企業のR&D投資の増強、公的債務の増大、少子高齢化の進展といった日本経済のトレンドの大転換が生じてきている。したがって中長期的な経済の活性化には供給サイド、需要サイド双方のパワーアップが必要であり、このためには、[1]企業の自己革新を促進するための環境整備、[2]対日投資の増進、[3]家族支援政策関連支出の増加などによる高齢・少子化制約の克服、[4]サービス需要を顕在化させる需要創出型構造改革が必要である。この需要創出型構造改革は、雇用面からみると530万人雇用創出計画である。この計画の実施により、サービス産業が創出され、雇用・所得が生まれ、その結果貯蓄もできるという好循環、すなわち明るい構造改革が実現する(詳細は後述)。

プログラム

13時 受付開始
13時30分~13時40分 開会挨拶
会長 高島 章
13時40分~14時20分 「中国経済成長が及ぼす日本経済への効果」
上席主任研究員 朱 炎
14時20分~15時 「中国国有企業の民営化と外資企業の対中戦略」
主任研究員 柯 隆
15時~15時40分 「対中ビジネスの現地化とガバナンスのあり方」
主任研究員 金 堅敏
15時40分~15時55分 休 憩
15時55分~16時55分 特別講演「日本経済の復活と需要創出型構造改革」
経済研究所 理事長 島田 晴雄
16時55分~17時 閉会挨拶
社長 長谷川 展久

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』概要 [201 KB]