中国における国有企業民営化に関する考察
主任研究員 柯 隆
2004年10月
目次
はじめに
I.国有企業改革の現状
II.地域別の国有企業改革に関する考察
III.国有企業改革に関わる制度作りの進展
IV.国有企業改革と財政改革
終わりに
要旨
・長年、国有企業は中国経済の大黒柱として重要な役割を果たしてきた。80年代の半ばまで鉱工業総生産に占める国有企業の割合は7割以上に上り、技術集約型産業と資本集約型産業のほとんどは国有企業であった。労働集約型産業の一部は地方自治体の集団所有だったが、計画経済の下では実質的に国有企業と何ら変わりはなかった。第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』・80年代半ばから国有企業改革が始動した。経済の自由化に伴い、国有企業の中で市場競争に適応できない企業が現れ、バランスシートが悪化する企業が目立つようになった。国有企業の経営を改善するために、独立採算制と納税制の導入など種々の改革が行われた。しかし、国有企業の経営難を食い止めることはできなかった。90年代末になって、鉱工業総生産に占める国有企業の割合は2割程度と大きく後退した。 第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』・98年から中国政府は思い切った国有企業改革を敢行した。それは国有企業の破産と余剰労働力のリストラによるドラスチックな外科手術型の改革である。余剰人員のリストラは国有企業にとってコスト削減であり、経営を立て直すきっかけとなったに違いない。問題は、技術レベルの上昇、競争力の向上と収益性の強化といった国有企業が抱える基本的な問題を解決するには、余剰人員のリストラだけでは不十分である。第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』・同じ時期に、中国政府は中小国有企業の自由化、すなわち民営化を認める改革を始めた。「近代的企業制度」の確立といわれる改革の狙いは、結局のところ国有企業を株式会社に転換させることで、その資本の所有と経営権の所在を明らかにし、企業経営に対するガバナンスを強化することにある。この改革の方向性は正しいことであるが、問題は大量の失業者が現れることで、中国社会の安定を脅かすリスク要因になっている。 第15回フォーラム『日本と中国:新たな経済関係の構築へ向けて』・他方、国有企業民営化の流れの中で、中国に投資している外資企業にとっても経営環境の変化を意味し、リスクであり、チャンスでもある。これまで、日系企業を含む外資企業は国有企業との提携によって中国でビジネスを展開してきた。そのビジネス相手の資本関係が民営化の中で大きく変わろうとしている。外資系企業にとって合弁事業を完全に買収するチャンスが到来した。また、新たに中国に投資しようとする外資にとって、その協力相手として民営企業が重要視されるべきである。ただし、民営企業とはいっても、玉石混合の状態にあり、それを見極める能力が求められている。
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