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インターネット企業の淘汰と再生

主任研究員 峰滝 和典

2004年10月

要旨

米国のインタ - ネット企業の淘汰と再生

世界を襲ったITバブル崩壊から3年以上が経ち、その間多くのネット企業が淘汰された。ネット・ベンチャー企業にとってまさに冬の時代であった。ネット・ベンチャーに対する世間の見方も厳しく、資金調達に苦労している企業も多かった。

米国においてもこの間、インターネット企業の淘汰の嵐であった。調査会社のWebmergers.comによると、2000年第1四半期以降の3年間で、少なくとも4,854社のインターネット企業が廃業するか買収されてなくなったという。ビジネスモデルや収益モデルが確立していないネット企業は淘汰されたが、生き残った企業は更なる創意工夫を積み重ねることで力をつけていることがうかがえる。

例えば、インターネット上の検索エンジンではもっとも利用されているGoogleがその好例であり、最近新規株式公開(IPO)を行って注目を集めている。ネット・オークションで有名なイーベイは、独自のビジネス・モデルで生き残った良い例である。急速に成長する電子商取引市場に支えられて、イーベイはITバブル崩壊後の2001年、2002年も増収増益を続けている。Yahoo!はオンライン広告の再大手であるが、2001年にオンライン広告市場全体が崩壊した時、Yahoo!の業績も深刻な状況になったが、その後、有料検索広告など新たな分野も取り込んで成功している。他にも、e-Educationで有名な、eCollege.comは成長企業の代表例である。

日本のインタ - ネット企業に関する分析:収益性と成長性

今回、財務データ等が入手できた企業30社を対象にして、2001年・2002年の主だった日本のインターネット企業の収益性と生産性を計測してみた。インターネットでは収益をあげることができないといった悲観論に対する検証である。

2001年・2002年の売上高営業利益率を見る限り、インターネット企業は本業の収益がそれほど悪化していないことがわかる。なかには売上高営業利益率がマイナスである企業もあるが、多くはプラスでありしかも高い利益率となっている企業も見受けられる。

次に生産性指標に眼を向けよう。今回、各社の全要素生産性上昇率を計測した。全要素生産性上昇率とは、付加価値成長率から、労働や資本の寄与率を差し引いたものであり、技術進歩や経営効率の改善などが生じたとき高まる。ただし景気変動的な要因も影響することが考えられる点には留意すべきであるが、この期間は日本のマクロ経済も不況期であり、とりわけインターネット企業にとって逆風が吹いていた時期なので、景気変動要因は全要素生産性上昇率を押し下げていると推察される。

全要素生産性上昇率の計測結果を見ると、インターネット企業間で大きな差が観測されている。この点は収益性の分析結果と異なった傾向である。2ヵ年の平均であるので変動性はかなり高いが、符号がプラスのものとマイナスのものに大きく分かれる。売上高営業利益率がプラスであっても、全要素生産性上昇率がマイナスである企業は、現状収益をあげているものの、経営効率が低かったり、新しいイノベーションが生まれたりしていない可能性が示唆される。望ましいのは収益性もあり、かつ生産性も高い企業である。ここでの分析でいうと、売上高営業利益率が高くかつ全要素生産性上昇率が高い企業である。インターネットを利用した高度の情報提供を行っている企業である、エン・ジャパン、モーニングスター、楽天、カカクコム、イートレードは売上高営業利益率、全要素生産性上昇率ともにプラスである。

ブロードバンドの普及は、文字情報以外にも音声情報や画像情報のスムーズなやり取りを可能にした。インターネットをビジネスに活かす方法はブロードバンドの普及によってますます広がった。インターネット企業は第2ステージが始まったと言ってよい。

図表  インターネット企業の収益性と生産性分析(2001年・2002年)
労働生産性上昇率 全要素生産性上昇率 売上高営業利益率 売上高上昇率 主な事業分野
インターネット総合研究所 -37% -54% -16% 52% IPネットワーク
ドリーム・トレイン・インターネット -15% -26% -12% -17% インターネット接続事業
アクセス 34% 30% 3% 59% モバイル端末・情報家電向けインターネット閲覧ソフトウェア
アズジェント -24% -44% 10% 27% インターネットセキュリティ・ソフトウェア
ソフトバンク・テクノロジー 45% 16% 6% 91% イー・コマース
デジタルガレージ -30% -47% -3% 5% インターネット関連システム
ビーマップ -24% -33% 1% 12% ネットワーク・インフラ、コンテンツ・インフラ
イーストアー -20% -23% 14% 2% ASP
ジェイストリーム 89% 41% 0% 44% インターネット上での動画音声サービスの配信サービス
ジグノシステムジャパン 59% 47% 22% 98% モバイル向けサイト
モーニングスター 10% 2% 36% 4% インターネットを通じた格付け評価情報の提供
イー・トレード 37% 21% 10% 3% ネット証券
エン・ジャパン 36% 18% 46% 134% インターネットを通じた就職情報の提供
サイバー・コミュニケーションズ -22% -26% 2% 15% インターネット広告のメディア・レップ
バリュークリックジャパン株式会社 16% -20% -3% -13% ウェブ広告配信
まぐクリック -46% -75% 1% 68% 電子メール広告配信
楽天株式会社 30% 13% 33% 55% インターネットショッピングモール、個人向けオークションサイト
ベクター 2% -2% 11% 59% インターネットを利用したPC向け・携帯電話向けソフトウェア
イー・シー・ワン 7% -6% 10% 40% ウェブシステムインテグレーション
インターネット・セキュリティ・システム -7% -20% 13% 52% ネットワークセキュリティ
インデックス 20% -6% 18% 117% 携帯電話向けコンテンツ関連
ザイオン -9% -21% 11% 14% インターネット・移動体通信関連システム
ゼンティック -16% -25% -18% 57% デジタル情報家電事業、モバイル関連事業
トーメン・サイバー・ビジネス -6% -7% 13% 8% ネット関連インフラ、ネット関連ソフトウェア
ドワンゴ 39% 31% 9% 136% 携帯電話向けコンテンツ
ネット・マークス 11% 8% 2% 14% ネットワークソリューション
フォーサイド・ドット・コム 27% 54% 22% 454% 携帯電話向けコンテンツ
ティーエムエー 11% 9% 10% 1% 情報家電
ギガプライズ 10% 9% 4% 119% ソフトウェア開発
カカクコム 35% 25% 26% 112% ウェブ上での情報提供

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF インターネット企業の淘汰と再生 [278 KB]