温暖化対策としての環境税のあり方
- エネルギー税制のグリーン化と新税導入の比較分析
研究員 齊藤 有希子
2004年7月
目次
はじめに
I.我が国のエネルギー税制について
1.インプリシットな炭素税について
2.我が国のエネルギー税制と環境税の動き
II.モデル分析
1.モデルの解説
2.分析結果
III.まとめと今後の課題
要旨
京都議定書の国際的枠組みの中で、我が国は、非常に厳しい温室効果ガスの削減義務が生じることとなり、実効性のある温暖化対策が求められている。温暖化対策としての環境税は、10年来議論されてきたが、具体的な導入の動きが見られるようになったのは、最近のことである。2003年4月より、経済産業省では、エネルギー特別会計を見直すにあたり、今まで非課税であった石炭へも課税する石油石炭税を導入し、歳出面でも、温暖化対策に割り当てることとした。一方、環境省では、2003年11月現在、新規の炭素税の具体的な制度設計を提案し、国民の意見を求めている。
温暖化対策としての環境税は、エネルギー税制のグリーン(環境配慮)化や新規の炭素税導入などに分類され、経済産業省による環境税は、エネルギー税制のグリーン化であり、環境省による環境税の案は、新規の炭素税である。本研究では、一般均衡モデルを用いたシミュレーション分析により、エネルギー税制のグリーン化と新規の炭素税の導入の効果を比較分析することにより、環境税の制度設計のあり方について議論する。
分析の結果、[1]グリーン化と新規の炭素税導入ともにエネルギー多消費産業への影響が大きく、特に鉄鋼部門の生産量の減少が顕著であること、[2]グリーン化の方が、鉄鋼部門を除く多くの部門の生産量の減少を抑えること、[3]グリーン化の方が、産業部門の総使用エネルギーの減少を抑え、エネルギーの代替が効率良く行われていることが確認された。[2][3]より、新規の炭素税を導入するのではなく、グリーン化により、経済への影響を低減し、効率的に温暖化対策が進むことが確認された。したがって、今後の制度設計として、更なるグリーン化が有力であると考えられる。
グリーン化において、残されている課題がある。[1]家庭部門の削減効果が望めないこと、[2](新規の課税と共通の課題であるが)エネルギー多消費産業の生産量が大きく減少し、国際競争力を失ってしまうこと、[3]海外の温室効果ガス排出量が増加し、国内で削減された温室効果ガス排出量のほとんどが打ち消されてしまうことの3点である。[1]の解決策としては、家庭部門のみの新規の課税をグリーン化と合わせて行うことにより十分な削減効果が望めることが確認された。[2]と[3]は、密接に関わっており、エネルギー多消費産業の海外流出により、海外の温室効果ガス排出量が増加すると考えられるが、[2]の解決策として議論されている鉄鋼部門の免税措置により、海外の温室効果ガス排出量の増加は回避できないことが確認された。また、鉄鋼部門の免税措置により、温室効果ガスの削減効果がほぼ半減することも確認された。今後の課題として、以上のような課題を解決すべく、税の効果的な還流方法など、より良い制度設計を勘案することが重要である。
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