DB活用による中小企業金融の進化
主席研究員 田邉 敏憲
2004年7月
目次
I.クレジット・プライシング機能の向上とインフラの整備
クレジット・プライシング機能の向上
クレジット・プライシング面からみた資本市場の特徴
クレジット・プライシング機能向上に必要なインフラ
具体的なわが国融資技術の進化とは?
信用保証保険機能を果たせるCDS市場の活用を
中小企業債権の証券化進展のための公的信用補完機能
肝心なのはプレーヤーとしての金融機関・企業双方のチャレンジ
II.全国網羅的な「信用リスク・データベース」構築の可能性?
CRDの強みはわが国最大のデータベース保有
統計数理専門家等はどの程度CRDデータを評価しているのか?
CRDデータベースはどのような利用が可能か?
企業信用調査会社の提供する企業情報データベース
III.XBRLは日本金融の武器となる?
XBRLとは何か? その効用は?
産業・金融・公共部門サービスに対しても親和性の高い技術
2003年はXBRL導入元年
IV.CRDデータ活用の政策提言
分散型小組織企業時代にマッチした金融システムの再構築
クレジット・プライシング機能向上に向けたインフラ整備
要旨
わが国金融の問題は、貸出債権などの時価評価機能の不在、特に中小企業向け融資などにクレジット・プライシング機能が働いていなかった点にある。その定着には、小口かつ大量情報を安価に処理できるインフラが整って初めて可能となる。極力オールジャパンベースでの膨大な中小企業信用情報データベース、クレジットプライシング・モデル、インターネット利用の金融取引に不可欠な財務諸表の標準化などである。
幸いに、民間の各種企業信用情報データベースの充実に加え、大量のデータ量を有する「中小企業信用リスク情報データベース(CRD)」が出現した。CRDは、既に全国の中小企業法人100万社以上のデータを蓄積し、数多くのデフォルト事例も備える。これにより、精度の高いデフォルト確率の予測・推計及び中小企業向け融資などの理論的信用リスクプレミアムの算出が可能となっている。
加えて、財務諸表の標準化、すなわちXBRL(「ビジネスレポート用国際標準電子言語」の略称)の導入も進みつつある。東京証券取引所が「決算短信」のハイライト情報への適用を始め、国税庁も2004年からの電子納税に際しての添付書面(財務諸表)へのXBRL導入を決定、日銀は金融機関からの徴求報告書へのXBRL導入の検討を開始している。
これら「CRDデータベース」、「XBRL導入」、「クレジット・プライシング機能向上」が三位一体となることで、日本の金融は一気に世界最先端に踊り出ることができる。
三位一体型の新しい電子ファイナンス市場の実現に向けて、「融資オークション市場(Loan Auction Board<LAB>)」構想を提案する。経済産業省では、その実現に向けた法律やルール面などでの課題を整理・検討中である。
こうした市場インフラの整備、市場プレーヤー育成のためのインセンティブ付与等により、わが国の中小企業金融の大いなる進化が期待される。
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