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持続的競争優位のロジスティクスアウトソーシング

主任研究員 木村 達也

2004年7月

要旨

一時的にとどまる恐れのあるアウトソーシングによる競争優位

現在、企業の行う様々な業務のアウトソーシングが進んでいる。アウトソーシングは、自社資源のコア・コンピタンスへの集中や、アウトソーシング業務について委託先事業者のノウハウ活用による業務効率の改善やコストの削減を可能にする。しかし、一方で事業をアウトソーシングする企業にとって、当該業務での差別化を難しくするだけでなく、業務プロセスがアンバンドリングされ、個々の業務のモジュール化、標準化が進んだ事業の場合、業務プロセスが模倣され易くなりかねない。すなわちアウトソーシングを行うことは、同業他社に対する競争優位性を高めることを可能にするが、その優位性は持続されず一時的なものにとどまる危険性がある。

こうしたアウトソーシングの競争優位性に対する効果を、一時的なものではなく持続的なものとする条件は何かを明らかにするため、私たちはロジスティクス及び情報システムのアウトソーシングについて早稲田大学IT戦略研究所(所長 : 根来龍之商学部教授)と共同で調査・研究を行った。ここでは、東証1,2部、ジャスダック市場に上場する製造業及び小売業の企業を対象として行った、ロジスティクスのアウトソーシング(LO)の調査・研究の結果について示す。

委託先との情報連携、経営陣の関心・関与、自社能力が重要

われわれの調査・研究では、競争優位性への貢献を全社的な経営課題への貢献により測定した。全社的な経営課題とは、[1]商品・サービスの品質向上、[2]コスト削減、[3]業務の効率・生産性の向上、[4]経営のスピードアップ、[5]顧客との関係強化 - に製造業では、[6]技術力・商品開発力・市場創造力の向上、[7]サプライヤーとの関係強化 - を加えた7課題、小売業では、[6]商品開発力、販売促進・広告宣伝能力の向上、[7]メーカー・卸との関係強化、[8]店舗立地の改善(出店・閉店) - を加えた8課題とし、これらに対するアウトソースされたロジスティクス業務の貢献を測定した。またこれらの貢献に寄与する要因も分析したが、その結果は[1]ロジスティクス関連業務の重視、[2]委託先情報による業務改善の優位性、[3]定例的情報交換の頻度、[4]委託先への情報提供のレベル - が大きな要因であることが明らかになった。これらの要因のうち[1]以外の3つは、アウトソーシングによる持続的な競争優位性の獲得に「委託先との情報連携」の活動が重要であることを示している。

更に上述の4要因に影響を与える要因としては、[1]経営トップの外部委託への関与、[2]経営陣の物流・ロジスティクス業務コストへの関心の高さ、[3]経営陣の物流・ロジスティクス業務コストへの関心の変化の大きさ、[4]経営陣の物流・ロジスティクス関連投資の総額への関心の高さ - といった「経営陣、経営トップの関心・関与」が重要であった(これらのうち、[4]の要因は経営課題への貢献に寄与する要因に影響するだけでなく、直接的な経営課題への貢献も認められた)。更に、委託を行う企業の[1]物流・ロジスティクス関連の個別作業能力、[2]物流管理能力、[3]物流・ロジスティクス業務のプランニング能力と、[4]委託先との資本関係の有無 - という4つの要因も重要であった。最後にあげた委託先との資本関係の有無を、委託先に対するコントローラビリティの有無と考えると、後半の4要因は「自社の能力」のなかで重要なものと理解することができる。

競争優位の持続には企業内構造の変化が必要

次にこうした要因が大きく貢献するLOによる競争優位性の獲得は、どのような経路によるのかを製造業での分析結果にみる。競争優位性への貢献は前述のように経営課題への貢献により測定したが、ここでの経営課題はアンケート調査に基づく上位3課題、顧客サービス水準、コスト競争力、在庫回転率(これらは前節に示した経営課題の[1]~[3]についての分析に用いたモデル上の操作のための変数とみることができる)を分析に用い、これら課題へのLOの貢献の経路として、直接効果(LOを行うことによる委託先事業者のノウハウの活用などによる直接的な貢献の経路)と、間接効果(LOを行う企業の企業内構造が変化することを通して間接的に達成される貢献の経路)を想定した。企業内構造を示す変数として取上げたものは、[1]デカップリング・ポイント(DP)の位置(サプライチェーンに注文を反映させる位置)、[2]最小計画期間(物流計画、販売計画、生産計画など諸計画の最も短い期間)、[3]スループットタイム(原材料の調達から製品を顧客に納入するまでの期間)である。

分析の結果、LOの貢献が最も大きかったのはコスト競争力における直接効果であった。ただ直接効果による経営課題への貢献、すなわち競争優位性の獲得は、委託先のノウハウ活用によるとみられ、同じノウハウを用いれば同業他社も業務プロセスの模倣が容易で競争優位性は持続しにくいと考えられる。しかし他の経路として、間接効果のなかで、スループットタイムの変化を通じた在庫回転率への貢献が有意であることも示された。この経路での貢献はアウトソーシングにあわせて自社の企業内構造の変化を伴っているため、同業他社は同じ委託先のノウハウを利用するだけでは容易に模倣できず、持続的な競争優位性につながると考えられる。このような間接効果が企業の経営課題達成に有意であるとの結果は、われわれと同様なモデルによるサプライチェーンマネジメントの分析では、すべての間接効果の有意性が棄却されていることと対比すると、LOに特徴的なものと考えられる。

以上から、LOを行った企業が持続的な競争優位性を持つためには、物流管理能力などの「自社の能力」が高く、十分な「経営陣、経営トップの関心・関与」のもと「ロジスティクス関連業務を重視」し、「委託先との情報連携」を活発にするなかで、企業内構造を変化させることが重要と理解されよう。

全文はPDFファイルをご参照ください。

PDF 持続的競争優位のロジスティクスアウトソーシング [238 KB]