地域通貨は地域の活性化をもたらすか
主任研究員 米山 秀隆
2004年7月
要旨
地域通貨の二つの機能
地域経済の再生は、いうまでもなく地域に対する補助金や税の交付で達成できるわけではない。地域に既に存在するヒト、モノ、カネなどの資源を有機的に結びつけることによって、地域の特色を生かした産業を立ち上げ、それを地域内の資源で着実に成長させていくことが、地域経済の自立につながる。
地域の資源を有機的に結びつける媒介になるものとして、近年、注目を浴びているのが、地域通貨である。地域通貨は、法定通貨である円がいつどこでも無制限に通用するのに対して、特定地域でしか通用しないという特徴を持つ。政府が2月に決定した地域再生策の中にも、「地域通貨モデルシステムの導入支援」(総務省)が掲げられている。
地域通貨は、市場的な取引にはなじみにくい、家事援助や助け合い、あるいは自家製品やリサイクル品などをやりとりするための通貨として、近年、導入する動きが各地で広がっている。その具体的な仕組みは、活動できる人が活動内容を登録し、活動をして欲しい人はそれをみて依頼し、その対価として地域通貨を支払うというものである。このタイプの地域通貨としては、北海道栗山町の「クリン」、兵庫県宝塚市の「ZUKA」などが知られている。これらの通貨は、地域内の市民同士の結びつきを強める効果を発揮している。
地域通貨といえば、このように、ボランティアやコミュニティ活動など、非市場的な財・サービスをやりとするための通貨というイメージが強いが、市場的な財・サービスをやりとりするタイプもある。その一例をあげると、長野県駒ヶ根市の商店街が導入している、商店街独自のICカード「つれてってカード」がある(約200店舗が参加)。ICカードを使って購入すれば、ポイントなどのメリットが得られるというものである。
「つれてってカード」は、ICカードが、商店街でのみ通用する通貨としての機能を果たしていると考えることができる。現在ではこのカードは、市役所や公共施設、病院での支払いにも利用できるようになっており、地域において様々な用途で使える通貨としての機能を高めている。駒ヶ根市の例は、市場的な財・サービスの取引に使える地域通貨を導入して、地域における購買力の囲い込みと消費促進に成功しているケースといえる。
このように、現在の地域通貨には、大きく分けて、非市場的な財・サービスを取引対象とするものと、市場的な財・サービスを取引対象とするものの二つがある。それぞれの地域通貨は、それぞれの機能を果たすことで、地域内の結びつきを深めたり、経済活性化に寄与している。
大和市の事例
地域再生策の中に掲げられた、地域通貨モデルは、ICカードを使った地域通貨を導入することで、地域通貨の二つの機能(非市場的な財・サービスの取引及び市場的な財・サービスの取引の促進)を、同時に実現することを狙いとしている。ただし、各自治体がこのタイプの地域通貨を導入するに際しては、これが本当にうまく機能するかについて、十分検討する必要がある。
この点については、神奈川県大和市の例が参考になる。大和市の地域通貨である、LOVES(地域価値交換システム)は、地域通貨や商店街のポイントなどの機能を総合的に併せ持つ通貨として設計され、02年から運用が開始された(貨幣単位はラブ)。
ラブは、相互扶助活動やリサイクル品の取引で使ったり、賛同商店で使うことができる。また、ボランティア活動をしてもラブが得られる。つまり、ラブを媒介にして、市民間の交流、地域の商店街の活性化、ボランティア活動の活発化を図るのが目的である。また、ラブ使用を促すため、年末に残高をリセットする(ゼロにする)こととした。
しかし、現在のところ、それほど効果をあげるまでには至っていない。その理由の一つには、商店にとって、ラブを受け取るメリットが乏しかったという点がある。代金としてラブを大量に受け取っても、使い道がなかったからである。また、年末にリセットするという仕組みも、使用を促す以前に蓄積する意欲を失わせた。このため、商店にとってもメリットがあるよう仕組みを見直し、リセットする仕組みも中止された。
大和市の事例は、二つの機能を融合させる野心的なものであったが、見直しを余儀なくされた。これは、地域通貨は、本来、それぞれの目的によって適した運用の仕組みがあり、そのすべてを統一しようとしても困難が生じることを示している。したがって、地域通貨に多くの機能を持たせようとした場合には、すべての参加主体が、利用のメリットが得られるよう、運用面で様々な工夫をこらす必要がある。今後、地域通貨を導入しようとする自治体は、この点について十分検討する必要がある。
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