アジアにおける環境産業発展と制度的課題
上席主任研究員 武石 礼司
2004年4月
目次
はじめに
I.アジアの環境問題
II.環境産業の位置付け、規模、競争力、課題
1.日本国内の環境産業の規模(1)
2.日本国内の環境産業の規模(2)
3.日本の環境産業の競争力
4.克服すべき課題
5.日本の廃棄物処理とリサイクル : モラルハザード発生
6.アジア全体での循環型社会の形成
III.市場に任せたアジア環境産業の発展
1.日本からアジアの環境市場への資金供給
2.アジアの環境産業規模
3.機械産業・エンジニアリング産業の育成
4.アジア主要国の環境関連法規・整備状況
5.アジアにおける環境産業育成の課題
6.アジアの経済連携強化と環境産業の育成
IV.援助を通じたアジア環境産業の育成
1.アジア途上国の産業発展と援助理念
2.アジア金融危機後の援助方針に関する議論
3.「開発ミクロ・援助論」から見た環境協力
4.援助理念の改革
5.米国及び欧州のアジア環境支援
6.アジア諸国の制度作りへの協力
V.政策提言
1.提言(1) 民間企業のアジア環境市場への参入策
2.提言(2) 国の支援策 : 「アジア市場獲得戦略」
3.提言(3) 国のアジア環境市場育成策
要旨
循環型社会基本法を制定しリサイクルを推進する日本は、アジア全体としての循環型社会の形成に取り組む必要が生じている。日本政府は「環境立国宣言」を行い、「循環型社会」作りで日本は世界のトップランナーとなる、との目標を掲げることが必要である。
日本の環境関連制度の実施状況については問題が多く、モラルハザードが発生している例が少なからず存在している。こうした状態から脱するためには、「国内を正す」必要があり、制度を実体に適合させるとともに、規制を徹底すべき所は徹底する必要がある。規制制度の運用を実効あるものとするためには、規制緩和をできるだけ早く、徹底して進めることにより競争を促進し、市場競争により効率の悪い企業の退出、高コスト体質の是正を目指す必要がある。
アジアでの環境産業育成のためには、国の支援策として、アジア諸国へ向けて「モノを出さずに人を出す」必要がある。この政策を導入することで「人材流動化」、及び海外での経験を積んだ人材の層を厚くする効果も得られる。
途上国向け援助は、国益を目的とする自国利益の追求のみでは説得力を欠く。環境を前面に出し、環境をキーワードにしてすべてのシステムを組み替えていくべきである。しかも「人」への支援を中心に置く事で、プロジェクト実施可能性調査(FS : Feasibility Study)から、環境+技術協力+都市作り・交通体系整備等の多面的な内容を含んだ各国ごとの計画作りへ参画していく必要がある。計画の作成のためには、日本の人材を派遣し、その人材が加わった「発展戦略チーム」が提案型プロジェクトを共同で作成するべきである。アジアの環境ビジネスで、広範な人材の支援を受けつつ民間企業が競争する体制が、このようにして各国において整備されることが大切である。日本人の人材養成への資金の重点的配分が、環境産業育成を通じて最も重視されるべきである点を強調したい。
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